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ほのぼの回に漂う緊張感… 原作を読んでいてもアニメ『鬼滅の刃』を楽しめるワケ

  • 2024.6.26
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(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

現在放送中のTVアニメ『鬼滅の刃「柱稽古編」』は、短いパートながらもアニオリ演出をたっぷり含みつつ個性あふれる柱との稽古を描いている。メインは柱と竈門炭治郎(かまどたんじろう)の厳しい特訓だが、合間に垣間見える炭治郎と隊士の交流がほっと一息つくような和やかさを演出。原作ではほとんど描かれていない隊士の姿によって、より立体的に鬼殺隊の雰囲気を感じ取ることができる。

ほのぼのした炭治郎と隊士の交流

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(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

第4話では、時透無一郎(ときとうむいちろう)と炭治郎の紙飛行機飛ばし対決が勃発する。勝ったら隊士への態度をやわらかくするという条件で、炭治郎が時透に挑んだのだ。連敗する炭治郎を見て、隊士たちが続々と勝負に参戦。時透が隊士に「ちょっと見せてもらってもいいかな」とやさしく声をかけるなど、ほのぼのした時間が流れる。隊士との交流を描きつつ、小さな子どもになじみが深い紙飛行機をアニメに盛り込むことで、『鬼滅の刃』を毎週楽しみにしている子どもたちの心を掴むアニオリ演出となった。

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(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

第5話にて描かれた伊黒小芭内(いぐろおばない)との稽古の最中では、炭治郎と隊士が一緒にお風呂に入るシーンが。「これ、傷にしみるよな……」と湯船に入るのをためらうが、「せーの!」というかけ声と共にみんなで思い切って浸かる。傷にお湯がしみてもだえる炭次郎たちを見ていると、鬼を倒すための厳しい稽古の最中でありながらどこか部活の合宿をしているような気分になる。常人にはついていくことすら困難な柱との特訓を描く一方で、一息つけるような隊士との交流はエピソードに緩急をつける役割をしているのだ。

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(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

また、第6話では隊士とのやり取りの中で、炭治郎の料理の腕前が垣間見える。悲鳴嶼行冥(ひめじまぎょうめい)との滝修行の後、焼き魚を食べながら休憩する炭次郎たち。悲鳴嶼が鬼殺隊最強だと察知する炭治郎と嘴平伊之助(はしびらいのすけ)の会話を聞いて少し引いてしまう隊士だが、「炭治郎が焼いた魚うま……」と心の中で感心している。伊之助が10匹も骨まで食らい尽くす様子を見ると、相当おいしい焼き魚なのだろう。加えて、炭治郎はおにぎりを握るのも上手い。隊士に振る舞った綺麗な三角の形をしたおにぎりは、「うめぇよ!」「体にしみるわ~」と隊士たちから大絶賛。さらにつくった焼きおにぎりは、隊士たちが思わず自分の母親を思い出すほど。炭治郎は炭焼き小屋の息子ということもあり、料理が得意なのだ。

禰豆子たちを探す鬼舞辻の姿に空気がピリッ!

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(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

平穏な炭治郎と隊士の交流に癒される「柱稽古編」だが、日常に潜む鬼の存在を感じる不穏なカットも。人間が生活する家や路地で、鬼舞辻無惨(きぶつじむざん)の側近である鳴女(なきめ)が竈門禰豆子(かまどねずこ)と産屋敷耀哉(うぶやしきかがや)の居所を探し回る姿が映し出される。炭次郎たちが稽古に励む一方で、鬼の脅威は確実に忍び寄っているのだ。鬼舞辻と鳴女は着実に鬼殺隊が活動する場所を掴んでおり、禰豆子たちが見つかるのは時間の問題かもしれない。

「柱稽古編」は炭治郎や柱、隊士の過酷ながら時に笑顔になれるような稽古が見どころだ。しかし、ほんの少しながら存在感のある鬼の描写によって、迫る戦いの緊張感をじんわりと漂わせている。アニオリ演出をまじえながら、柱稽古の平穏と不穏を絶妙なバランスで描いているのだ。すでに原作を読んでいる視聴者も楽しくアニメを観られているのは、こういった“構成力”のおかげだろう。

「鬼滅の刃」柱稽古編
ABEMAにて毎週月曜夜0時より最新話を無料放送。
放送後1週間、最新話を無料で視聴できる。
[番組URL]https://abema.tv/video/title/26-75
【(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable】


ライター:まわる まがり
主にアニメについての記事を書くライター。コラムや映画の作品評、マンガのレビューを手がける。X:@kaku_magari