1. トップ
  2. 「辛くなる」「深掘り泣ける」原作で描かれなかった“エピソード”にさまざまな声『鬼滅の刃 柱稽古編』“アニオリ展開”の意図

「辛くなる」「深掘り泣ける」原作で描かれなかった“エピソード”にさまざまな声『鬼滅の刃 柱稽古編』“アニオリ展開”の意図

  • 2024.6.12

現在放送中のアニメ『鬼滅の刃 柱稽古編』。実は原作コミックでは、1巻分ほどしかないエピソードで、鬼殺隊隊士たちの稽古の様子を見せながら、柱それぞれが抱えている事情やキャラクター同士の関係性をコンパクトに描いた内容となっている。正直、1期分としてアニメ化するには短すぎるエピソードだ。
特にアニメ第3話と第4話は、原作では数コマしかないシーンを、自然に膨らませた内容になっていた。アニメという媒体の弱点を強みに変え、柱や鬼殺隊にもっと愛着が湧くようなアニメオリジナルシーンが追加されているのだ。

過去エピソードを振り返りながら、自然に人物を描く

undefined
(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

アニメという媒体の弱点は、どうしてもそれぞれのエピソードが区切られてしまうことだ。鬼滅の刃で言えば、最初にアニメ化されたのは2019年の4月、その後映画と2度のアニメシリーズを経て、現在に至る。柱稽古編の前の刀鍛冶の里編が放送されたのは2023年4月で、まるまる1年ほど間が空いてしまっている。

漫画であればそれぞれのペースで読み進めることができるが、アニメの場合は放送枠や制作スケジュールの都合上一気に放送することは難しい。だからこそ、各エピソードでのキャラクターそれぞれの事情について再度触れながら、ストーリーを構築していく必要がある。

undefined
(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

鬼滅の刃では、そういった過去エピソードの振り返りも自然に行われたアニメオリジナルが差し込まれていた。たとえば、第3話では遊郭編で活躍した宇髄天元が柱を引退することになった経緯や、天元の嫁たちから遊郭編での戦いでの炭治郎への感謝がしっかりと描かれていた。また、第4話では時透無一郎の刀を担当している刀鍛冶の鉄穴森鋼蔵を登場させて刀鍛冶の里編に触れながら、他者と友好な関係を築く無一郎を描くことで、無一郎の内面の変化も表現していた。

柱をもっと好きになるエピソードの追加

もちろん、アニメオリジナルの意図は過去エピソードの振り返りだけではない。細かい人物の感情を描いて、視聴者を感情移入させ、キャラクターをもっと好きになってもらえるシーンが追加されている。

undefined
(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

第3話では、宇随天元がまだ戦いの場に対して未練があることや、その未練から鬼殺隊の隊士たちへ厳しく稽古をつけていたことが、ふとした表情で表現されていた。そしてその天元の想いを受け止めて、努力を重ねる隊士達が魅力的に描かれていた。

第4話では、無一郎による厳しい稽古と冷酷なコミュニケーション、それによって隊士たちが無一郎を怖がるというやりとりが繰り広げられた。炭治郎は無一郎の理解者として、紙飛行機大会をしようと提案し、「死なないで欲しいから厳しく稽古をする」という無一郎の優しさが見えるエピソードが追加されていた。

未練や後悔、優しさという人間味のある感情を見せることにより、キャラクターの人間性はより一層深くなる。そしてその人間性を感じるからこそ、視聴者はそのキャラクターを愛するようになるのだ。

undefined
(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

アニメオリジナルの展開は、どんなアニメであってもさまざまな意見が飛び交う。柱稽古編も例外ではなく、SNSでのコメントは賛否両論だ。とはいえ「無限城編が辛くなる」や「一般隊士の深掘り泣ける」などのコメントもあり、次のエピソードを見越してアニメオリジナルのシーンに意味を感じている人は多いようだ。

美麗で迫力のあるアニメーションや声優による熱のこもった芝居だけでなく、自然に埋められたコマとコマの間にあるエピソードを楽しむことができるのも、アニメ化の魅力と言えるだろう。

「鬼滅の刃」柱稽古編
ABEMAにて毎週月曜夜0時より最新話を無料放送。
放送後1週間、最新話を無料で視聴できる。
[番組URL]https://abema.tv/video/title/26-75
【(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable】



ライター:古澤椋子
ドラマや映画コラム、施設取材、イベントレポートなどを執筆するライター。ドラマ・映画・アニメ・漫画とともに育つ。X(旧Twitter):@k_ar0202