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キムタクの魅力は“人間臭さ”と“激しい感情表現”にあった?ドラマ『Believe -君にかける橋-』で放たれる光に目が離せない

  • 2024.5.16
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『Believe -君にかける橋-』で、「妻にもう一度会いたい」という思いのもと、脱獄を計画する狩山陸(木村拓哉)。狩山が行動すればするほど、作品の闇が濃くなっていく。泥臭くも輝く姿は木村拓哉の真骨頂と言えるだろう。

狩山の「妻に会いたい」という純粋な願い

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写真:PIXTA

『Believe -君にかける橋-』で木村拓哉が演じるのは、大手ゼネコン「帝和建設」の土木設計部長・狩山陸。東京都の一大プロジェクトである「龍神大橋」の完成を目指していたが、建設現場でも大規模な事故により、死者を出してしまう。

プロジェクトの責任者であった狩山は、社長・磯田典孝(小日向文世)からの頼みを受けて、事故の原因となった資材の発注書データを消し、全ての責任を負うことに。実刑判決により、1年6ヶ月の懲役が決まってしまう。

橋オタクと言っていいような熱い思いのもと、必死に仕事をしてきた狩山。気づかぬうちに、妻・狩山玲子(天海祐希)とのコミュニケーションを蔑ろにしていた。面会に来た彼女から、癌を患っていること、狩山の出所まで生きているかわからないことを告げられる。

無実を証明し、もう一度妻に会いたい。その想いが狩山に行動を起こさせる。狩山の弁護を担当した弁護士・秋澤良人(斎藤工)に再審の相談を持ちかけ、刑務所の仲間とともに脱獄を計画するのだった。

狩山は、会社による事故原因の隠蔽、妻とのコミュニケーションの薄さなど、その場で流されるようにしてしまった選択により、後に深い後悔をすることになってしまった。もう真実を隠蔽したくない、妻にもう一度会いたいという自分の強い感情に動かされて行動を起こそうとしている様子を見ていると、それがたとえ脱獄であっても応援したくなってしまう。

そして、葛藤を抱えながらも自分に正直に行動する狩山を木村拓哉が演じているからこそ、さらなる求心力が生まれているのだ。

狩山が行動するほど、会社の闇が浮き彫りに

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写真:PIXTA

「龍神大橋」の事故の原因は、帝和建設の下請けである「若進建材」株式会社が強度がない粗悪な資材を使用したことによるものだった。そしてその下請け会社の職員・若松博通(竹内涼真)は自らの罪を理解しており、事故現場で自殺といってもいいような死に方を選んだ。

事故の真実を隠蔽しようと画策する社長の磯田と常務取締役・桑原誠(岩谷健司)、事故の証拠となる若進建材の発注書を持っている狩山の部下・南雲大樹(一ノ瀬颯)は、真実を知りながら狩山に罪を被せ、再審への協力にも応じない。帝和建設が抱える闇といってもいいだろう。また、狩山の弁護を担当した秋澤も、第2話では狩山に再審を諦めるように進言している。狩山の味方であるとも言い切れない。

帝和建設職員以外にも、狩山の脱獄を阻む者がいる。国立刑務所の看守長・林一夫( 上川隆也)や、副看守長・宇崎誠吾(尾上寛之)、その二人に狩山の行動を報告している狩山の同房者・灰谷耕太(一ノ瀬ワタル)も、正義側にいるはずなのになぜか怪しく見えてしまう。第3話で、林は狩山を逃すような行動をとったが、その後何者かに電話で報告を行っていた。帝和建設の誰かと繋がっているとも考えられる。

そして、「龍神大橋」の事故を追う刑事・黒木正興は、若松博通を演じた竹内涼真が一人二役で演じている。第3話で黒木は、事故で亡くなった若松の弟であることが明らかになった。飄々とした態度ながら、しつこく事件の真相を追う黒木。狩山を追い詰めて、兄の敵をとりたいのか、真相を知りたいのか。彼の真意はまだ見えてこない。

まだまだ腹の底が読みきれない登場人物たちが多く、狩山の味方なのか、敵なのか、誰が誰と繋がり、誰が誰に指示を受けているのかわからない謎多き展開だ。狩山が「妻に会いたい」という純粋な想いを募らせれば募らせるほど、その他の登場人物たちの闇が深く、濃くなっていく。

第1話の林のセリフを借りれば、狩山は作中の太陽のような存在なのだ。太陽が周りを照らせば影が生まれるように、狩山が放つ光が作品全体の闇を浮き彫りにしている。

わたしたちはどこに木村拓哉らしさを感じるのか

これまで、ピアニストやアイスホッケー選手、検事などを演じてきた木村拓哉。どの役にも、葛藤や苦悩を抱えながら、仕事に誇りを持ち、前を向いて生きていく強さがあった。

その姿に憧れ、実際に木村の役の職業を志したという人もいるくらいだ。現実に向き合い、必死に苦難を乗り越えようとする姿に、私たちは木村拓哉らしさを感じるのかもしれない。

『Believe -君にかける橋-』の狩山は、そのほとんどを刑務服や地味なパーカーを着ており、必死に脱獄する姿からは、これまで木村が演じてきた役のようなスマートさは感じられない。

また、2023年に放送された『風間公親-教場0-』で、木村は厳しく新人の指導を行う捜査一課指導官・風間公親を演じ、最後には犯人や無能な警察への恨みを募らせる芝居を見せた。近年はかっこいいだけに留まらない役を演じることも多くなっている。

これまで数多くのかっこいい役を演じてきた木村が、かっこよくはいられない葛藤や後悔、憎しみなどの激しい感情を表現することで、より人間臭さが際立ち、魅力的に見えるのだ。

無実の罪を晴らすために行動する狩山の味方は、敵は誰なのか。狩山が放つ光によって、際立つ物語の闇はどこに着地するのか、目を離さずに見届けたい。



サムネイル出典:♂♂ゲイです、ほぼ夫婦です『木村拓哉:似顔絵フリー素材』
※PIXTAの画像はイメージです

ライター:古澤椋子
ドラマや映画コラム、施設取材、イベントレポートなどを執筆するライター。ドラマ・映画・アニメ・漫画とともに育つ。
X(旧Twitter):@k_ar0202