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災害時に、生理が来たら? 妊娠中や、小さな子どもがいるときに備えておきたいことは|元自衛隊員が描く“こころの防災”#番外編①

  • 2024.4.29
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「生理が始まってどうしよう、ってなったんです」

2011年、東日本大震災。入隊1年目の女性海上自衛隊員が、被災者からかけられた言葉です。

現場にいた女性隊員はわずか。「だからこそ“女性視点”での支援がとても大切だと感じた」といいます。

災害時に、生理が来たら?
妊娠中や、小さな子どもがいるときに備えておきたいことは?

元海上自衛隊のイラストレーターが描くマンガを通して、「“女性視点”での防災」を考えます。

(前編・後編のうち前編)

(この記事は、TBS NES DIG『DIG防災』の内容を一部編集して再配信しています)

災害時の命と「こころ」を守るために

北海道在住のイラストレーター・ヤマモトクミコさん。

Sitakke
Sitakke
Sitakke
「Sitakke」で防災マンガを連載中のヤマモトさん。

ヤマモトさんは海上自衛隊に10年ほど勤めてから、出産を経て、イラストレーターになりました。

入隊1年目に東日本大震災の支援に従事。
護衛艦に乗り、炊き出し、救助者の支援、燃料や真水の提供、救助者や遺体の捜索など様々な支援にあたりました。

災害時、命と「こころ」を守るために何ができるか。
マンガで防災の知恵を発信しているヤマモトさんに、自らの経験をもとに考えるポイントを聞きました。

1.災害時の生理、どうする?

Sitakke

東日本大震災の当時、護衛艦の乗組員で女性はほんの一握り。全体の1割を切るほど少数だったといいます。

Sitakke

女性の被災者の支援をすることが多くあったというヤマモトさん。主に担当したのは、「入浴」と「トイレ」の支援でした。

当時の艦内は、女性用の浴室やトイレは少なく、「充実している」とはお世辞にも言えない環境だったといいます。

Sitakke

艦内は、突起物や障害物がたくさんあり、迷路のようです。
けがをしないように、トイレや入浴所まで案内し、一緒に行動しました。

Sitakke

被災者から話を聞く機会もよくありました。被災地のこと、不安なこと、艦内で支給されたおにぎりがおいしかったこと……

中でもヤマモトさんの印象に残ったのは、「生理用品」 のことだったといいます。

Sitakke

「生理が始まって、どうしようってなっていたんです。でも、支援物資にナプキンがあって本当に助かりました!」と声をかけてくれた人がいたのです。

ヤマモトさんは、「きっと護衛艦の乗組員で、私が数少ない女性ということもあり、声をかけてくれたのだと思う」と振り返ります。

米軍からの支援物資で、歯ブラシなどの衛生用品や生理用品が届いていました。
「支給されないよりはマシ」かもしれません。でも、支給品のナプキンと、普段使用しているものとは使用感が異なるケースが多いのです。

Sitakke

後日、ヤマモトさんも支給品のナプキンを試してみたところ......日本製のものとは違い、ゴワゴワとしていて、サイズも大きく、ストレスを感じたといいます。

Sitakke

生理用品の使用感は、実際に使う人にしかわかりません。
「もし私が男性だったら、そこまで深刻に考えていなかったかもしれません」というヤマモトさん。

「災害時に、ただでさえ憂鬱になりがちな生理が重なってしまうこと、そして使い慣れない生理用品を使用することは、さらなるストレスの負荷へとつながってしまうと思います」と話します。

この経験から、ヤマモトさんは 「生理」についての備えを提案します。

・生理用品は、自分の体形に合った心地よいものを選んでおく
(自分にとって必要な量よりも「やや多め」に準備)

・サニタリーショーツも、洗い替えや汚れたとき用に3枚以上用意

・おりものシートなども入れておくと、下着が洗えないときも安心

・生理痛がつらい人は、常備薬も準備しておくといい

これ以外にも、使い切りビデ、ウェットティッシュ、使用済みの生理用品を入れるための袋など、個人で気になるものは用意しておくとさらに安心だといいます。

ヤマモトさんは、「生理は災害時でも、来るときは来ます。だからこそ普段から信頼して使っている生理用品を、災害時用にも準備しておいてほしいと思います」と話します。

2.妊娠中・子育て中の防災

ヤマモトさんが海上自衛隊で災害派遣を経験したのは結婚前でした。
当時は「妊娠・出産・育児」も未知の世界だったものの、2児の母になった今、改めて 「妊娠中・子育て中こそ、防災の備えが重要」 と感じているといいます。

Sitakke

「妊娠中や、小さな子どもがいる時期は、普段の生活だけでも大変で、防災グッズを用意をするのも一苦労だと思います。なので特に重要なことだけ伝えたいです」と、ポイントを3つにしぼって紹介してくれました。

Sitakke

①母子手帳は必ず持ち歩く

妊娠中はもちろん、小さな子どもがいる家庭でも、母子手帳を持ち歩くべきだといいます。

大きな災害が起きると、災害派遣の医療チーム(DMAT)が支援に駆けつけることがあります。ただ必ずしも、歯科医や助産師が来てくれるとは限りません。「母子手帳」には予防接種歴や成長の記録が書かれています。
必要な支援を受けるためにも、「母子手帳」を持っておくべきだといいます。

②ミルクと非常食は事前に試しておく

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防災用品でも、食品はかなり重要です。特に代替できないのが 「ミルク」 です。

ヤマモトさんは、災害時に普段と違うミルクや哺乳瓶を使うと、飲むことを嫌がる可能性があるため、防災用に備えるものも必ず事前に試してほしいと話します。
自宅にカセットコンロなどを備えておけば、電気が使えない状況でもお湯を沸かすことができます。

また、普段は完全母乳で育てているという人も、災害時にストレスなどで母乳が出なくなる可能性も考え、ミルクの備蓄を検討してほしいと話していました。

レトルトの離乳食や防災用の食事も、合うかどうか事前に確認しておくことが重要です。
避難所ではアレルギー対応食は少ないため、アレルギーを持つ子どもには、特に合う防災食の準備が必要になります。

③在宅避難という選択肢もある

Sitakke

「在宅避難」とは、災害時に避難所へ行かずに自宅で生活する方法です。
災害が起きても自宅が無事で安全に過ごせそうなら、水道や電気が止まってしまっていても、自宅で過ごす選択肢もあります。

避難所の生活はプライバシーがあまりなく、ストレスがかかりやすいため、自治体によっては妊娠中の人や乳幼児のいる世帯に在宅避難をすすめています。

ただ、在宅避難には「支援物資や救助活動の情報が入りづらい」「食料や飲みものの調達が困難になる可能性もある」といったデメリットもあります。

妊娠中の女性の心や身体の状態、子どもの様子は、各家庭によってそれぞれ異なります。
在宅避難も想定し、防災用品を多めに備えておくといいといいます。

ヤマモトさんは、「防災用品も、そのときどきの“我が家”仕様にアップデートしていくのがベストです。おむつやおしりふき、肌着、おやつやおもちゃ、絵本なども検討してもよいと思います」と話していました。

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