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予言めいたことを言う認知症の女性から、ケアマネジャーが告げられたこと

  • 2024.4.28
予言めいたことを言う認知症の女性から、ケアマネジャーが告げられたことの画像1
写真AC

“「ヨロヨロ」と生き、「ドタリ」と倒れ、誰かの世話になって生き続ける”
――『百まで生きる覚悟』春日キスヨ(光文社)

そんな「ヨロヨロ・ドタリ」期を迎えた老親と、家族はどう向き合っていくのか考えるシリーズ。

目次

・ケアマネジャーだから笑顔で受け止める
・予言めいたことを言う利用者の言葉

ケアマネジャーだから笑顔で受け止める

前回、北野寛さん(仮名・68)が体験した“七人殺しの神さま”の話、読者の皆さんはどう思われただろうか。

「『放っておくと身内が次々と不幸に陥る』2歳の息子が原因不明の微熱……お坊さんの驚きの言葉とは?」

「『私には迷信と思えない』幼い息子に起こった異変とは? 奇跡的だったお坊さんの指摘」

本当にあったことだと信じる人でも、自分に同じようなことが降りかかるとは思わないのではないだろうか。ケアマネジャーの清水明世さん(仮名・57)も、これまではそう思っていた。

「理系学部出身ということもあって、科学的根拠のないことに対しては懐疑的でした。『見える』という人も身近にいましたが、それは『部屋に知らない男の人がいる』などと言うレビー小体型認知症の高齢者と似たようなもので、その人にとっては確かに見えてはいても、それは脳がつくりだしたものだろうと思っていたんです」

ケアマネジャーだから、相手が何を言っても頭から否定はしない。幻覚だと思っても、その人の言葉や気持ちに寄り添うように努めてきた。

だから清水さんが、前任者から引き継いで担当することになった利用者Kさんが不思議なことを言い出したときも、笑顔で受け止めた。

予言めいたことを言う利用者の言葉

顔合わせのために、Kさんが利用しているデイサービスに前任のケアマネジャーと一緒にあいさつしに行ったときのことだ。Kさんは清水さんを見ると、ハッとしたような表情をした。そして、「今度Kさんの担当をすることになりました」と自己紹介した清水さんに向かって、こう言ったのだという。

「清水さんね。申し訳ないけれど、うちの家の神さまが怒っていらっしゃいます。あなたのことを拒んでいらっしゃるみたいよ」と。

Kさんには軽い認知症はあったが、コミュニケーションを取るのに特段問題はなかった。ただ時折予言めいたことを言うと、事業所の職員の間ではうわさになっていた。

「予言といっても大したことではありません。『あなた、お子さんのことで困ったことがあるんじゃない?』とか、『足のケガに気をつけてね』とか、誰にでも当てはまるといえば当てはまることだったようです。だからKさんの言葉が当たっても偶然だろうと思って、あまり真剣に受け止めていなかったのですが……」

それでも、「家の神さまが怒っている。あなたを拒んでいる」というのは、これまでの予言めいた、でも他愛ない言葉とは少し毛色が違う。前任者はもちろんそんなことを言われたことはないし、清水さんも長いケアマネ歴で初めてのことだ。

それに、清水さんは利用者やその家族からの評価も高い。評判を聞いて、わざわざ清水さんを指名してくる家族がいるくらいなのだ。だから、Kさんが初めて会う清水さんに嫌な印象を持ったとも考えられない。

それにしても、「家の神さま」とは……。清水さんが担当する地域は、若いファミリー層も多く、土着の神さまを信仰しているというような古くからの集落というわけではない。Kさんの家も、土地の旧家といったものではなかったはずだ。

半信半疑だった清水さんだったが、Kさんの言葉を信じざるを得ないできごとに遭遇する。

――後編は5月12日公開

坂口鈴香(ライター)
終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終末ライター”。訪問した施設は100か所以上。 20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、 人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。

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