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港区よりも有望…子育て世代流入で資産価値上昇が期待できる「千葉の二子玉」vs23区でも避けたほうがいいエリア

  • 2024.4.26

人口の増加は社会・経済の活性化をもたらし、ひいては不動産価格、マンション価格の上昇につながる。人口減少が続く日本でも自治体によっては増加するところもある。住宅ジャーナリストの山下和之さんは「そのトップは東京都中央区だが、2位以下には意外な都市も入っている。これからマイホームを買うならチェックしておいた方がいい」という――。

娘の手を引いて住宅街を歩く若い母親
※写真はイメージです
東京都は2040年まで人口増加が続く

国立社会保障・人口問題研究所の予測によると、わが国の人口は2020年には1億2615万人だったものが、2025年には1億2326万人に減少、その後も減り続けて、2050年には1億0469万人に減ってしまう。やがて1億人を割ることになり、2020年を100とした指数は、2035年が92.5、2050年は83.0という試算だ。

人口の増減は、社会・経済の活動に直結するから、日本全体としては効果的な対策を立てないと停滞感が強まって、不動産価格や住宅価格の低下につながる可能性が高まる。

ただ、これはあくまでも日本全体の予測であり、エリアによって大きく異なる。全般的な傾向としては、大都市圏ほど人口の減少が少なく、地方圏ほど人口減少が著しくなる。

都道府県単位で、2020年に比べて2050年の人口がどうなるのかを予測すると、唯一東京都だけ増えるとみられている。2030年は2020年に対する指数が102.9で、2050年が102.5と予測されている。東京都の人口は2040年まで増え続けて、その後若干の減少に転じるが、それでも2020年比では、2050年も人口が増加するとみられているのだ。

首都圏周辺三県の人口減少は最小限にとどまる

大都市圏では人口の減少率が小さくなる。首都圏では、東京都の2020年比での2050年の指数が100を超えて、人口が増える見込みだが、周辺三県は増えないまでも、2020年比で2035年、2050年ともに90%台を維持すると予測されている。2020年比での2050年の指数は埼玉県が90.3、千葉県が90.5、神奈川県が92.3となっている。首都圏の周辺三県の人口減少は1割以下と、最小限にとどまる見込みだ。

全国平均では2050年の指数は83.0だから、東京都をはじめとする首都圏への人口の集中が一段と進むことは間違いなく、地方圏では極端に指数が低下する県がある。最も指数が低下すると予測されているのは秋田県の58.4で、2020年の人口の6割以下まで減少してしまうとみられている。指数が60を切っているのは秋田県だけだが、そのほか東北地方、四国地方などで指数が60台の県が少なくない。

これは、自然減だけではなく、地方から首都圏への人口移動という社会減による部分も大きい。2020年からの新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって、密になりがちな大都市圏から、より安全に暮らせる地方への移住が増えたが、2023年には新型コロナウイルス感染症が2類から5類に移行、再び首都圏、なかでも東京都への人口移動が増えており、今後もその傾向が強まりこそすれ、弱まることはないだろうとみられている。

東京23区の都心各区では人口増加が続く

とはいえ、ひとくちに首都圏、東京といっても、一様に人口が増えるわけではない。市区町村によって増減率は大きく異なり、大幅に増加する市区町村があれば、そうではないところもある。それは、社会・経済の発展と密接に関係してくる。人口が増えれば、交通機関が充実し、公共施設、商業施設などの集積が進み、利便性が高まり、結果として不動産価格、住宅価格も上昇する可能性が高いのではないだろうか。

反対に、人口が減少すれば、過疎化、高齢化などが進み、地域の活力が損なわれ、各種の利便施設が減少、不動産価格や住宅価格が低下してしまうかもしれない。それだけに長い目でみた、マイホームの立地先選びがたいへん重要になってくる。

そこで、2020年比の2050年の指数を市区町村別にみると、指数が110を超える市区町村は図表1のようになっている。最も指数が高いのは東京都中央区の124.7で、上位には東京23区の港区、千代田区、台東区、文京区、江東区などが並んでいる。

しかし、東京23区でも、葛飾区は99.5、江戸川区は97.3と100を割っている区もある。長い目でみると、資産価値に差が出てくるかもしれない。東京23区ならOKということではないので、注意しておきたい。

【図表】2050年人口が2020年比で10%以上増える市区(2020年を100とした指数)
出典=国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(2023年推計)」
流山市の2050年人口は2020年に比べて2割増

そんななかで注目しておきたいのが、東京都23区以外にも大幅な人口増加が見込まれる自治体があることだ。

そのトップが2020年比の指数が120.9と、2割以上の増加が見込まれる千葉県流山市。周知のように、流山市は千葉県北西部にある都市で、2024年3月1日現在の人口は21万1648人で、千葉県では市原市に次いで7番目の人口であり、人口規模などではそう目立つ都市ではない。その中堅都市になぜ人口増が見込まれているのか。

第一には、2005年につくばエクスプレスが開業して、東京の都心へのアクセスが向上、流山おおたかの森駅を中心に、良好な住環境が形成され、駅周辺には大型商業施設が集積、利便性が飛躍的にアップしたことが挙げられる。

園庭を駆け回る園児たち
※写真はイメージです

流山おおたかの森駅から秋葉原駅までは8駅、乗車時間は最短25分で、途中の北千住駅では東京メトロ日比谷線・千代田線、JR常磐線、東武スカイツリーラインに乗り換えることが可能。都心の各方面だけではなく、郊外やリゾートエリアへのアクセスにも恵まれている。

「都心から一番近い森のまち」を目指す

第二には、そんなに利便性の高いエリアであるにもかかわらず、自然環境に恵まれ、住環境が整っている点が挙げられる。流山おおたかの森駅という名称にあるように、準絶滅危惧種に指定されている希少性の高いオオタカが生息する森が駅周辺に広がっている。流山市としても、このオオタカを守るため、2018年にオオタカを市の鳥に制定、市の自然環境を象徴する存在となっている。流山市のホームページでも、目指す街のイメージを「都心から一番近い森のまち」としている。

市内には約400の公園や森が存在し、江戸川や利根運河といった「水辺」、市野谷の森、大畔おおぐろの森などの「森のみどり」だけではなく、市街地の公園や街路樹による「まちのみどり」などのさまざまな緑が揃っている。子育て世帯やシニア世帯などにも最高の住環境といえるだろう。

そのため、商業施設が充実し、住環境も整っているという点から、東急田園都市線の二子玉川にも似ているとして、「千葉の二子玉」と呼ばれるほどだ。

キャッチフレーズは「母になるなら流山市」「父になるなら流山市」

そして、第三がそうした環境を支える市政のあり方ではないだろうか。「母になるなら、流山市。」「父になるなら、流山市。」をキャッチフレーズに、子育て環境の整備に取り組んでいる。たとえば、市内の認可保育園は2010年には17園だったのが、2023年には102園になり、全国でも数少ない「駅前送迎保育ステーション」を設置、働きながら子育てする父親、母親をサポートしている。

市内の教育施設の充実にも力を入れ、小中学校ではチームティーチングを導入した算数・数学、外国語指導助手による英語教育を実施、児童・生徒1人1台のタブレット端末を活用した学習などを実施している。また、東京理科大学や民間企業と連携したプログラミング教育を実践し、ICT(情報通信技術)を活用した先進的な取り組みを行っている。

こうした取り組みもあって、特に子育て世帯の流山市への流入が増えており、人口ピラミッドをみても、全国的には高齢者の比率が膨らんでいるのに対して、流山市では若年層も多く、バランスのとれた構成となっている。

印西市はニュータウンの中核で、子育て世帯が流入

首都圏では千葉県印西市も2050年人口が2020年比の指数で116.8となり、人口が増える市区町村の6位に挙がっている。

印西市は、千葉県北部の都市で、2024年3月の人口は10万8399人と、人口規模はさほど目立たないものの、業務核都市として千葉ニュータウンの中心都市となっている。人口に比べて124キロ平方メートルと広い市域を持ち、マンションや戸建住宅が多く、東京都心などに通勤する子育て世帯が多数住む都市となっている。印西市では、子育て世帯の転入増により、他の自治体に比べて、0歳から14歳の人口の伸び率が高くなっているとしている。若年層が多いということは、将来的な人口増加につながっていくはずで、それが高い人口増加率の予測につながっているのだろう。

と同時に、国内企業だけではなく世界中の企業のデータセンターが進出、「情報城下町」として注目される存在となっている点も見逃せない。印西市は関東平野のなかでも活断層が存在しない岩盤が強固なエリアに位置し、地震などの大規模災害へのリスクヘッジの場所として国内の大企業や世界的な企業のデータセンターが次々と建設されているのだ。それが人口増につながり、住宅、不動産へのニーズが強まる要因になる。

安全性とともに、東京と成田空港との中間に位置し、京成高砂駅、押上駅などを経由すれば東京駅も1時間弱で、京成成田スカイアクセス線のアクセス特急を利用すれば、成田空港も30分弱の時間距離になる。都心からはかなり遠いようなイメージがあるが、交通アクセスは必ずしも悪くないのだ。

大都市部隣接エリアでも人口大幅減の可能性

人口増が見込まれる市区町村がある一方、大幅に減少するとされるエリアもあり、そんな場所にマイホームを買っては、将来の資産価値の低下は免れない。

国立社会保障・人口問題研究所の予測で、2050年の人口が、2020年を100とした指数で30を下回る市町村は図表2ある通りだ。

基本的には大都市圏以外のエリアが中心だが、それでも群馬県、奈良県など首都圏や近畿圏周辺の市町村も含まれている。

大都市圏に隣接するだけに、東京都や大阪府などに人口が吸収される可能性が高いエリアということができる。そうしたエリアではよほど地元の魅力がないと、過疎化が急速に進行する可能性がある。住宅価格が中心部に比べると安いという魅力はあるだろうが、人口が減少すると、なおいっそう安くなってしまうリスクがあるので、十分に注意しておきたい点だ。

【図表】2050年人口が2020年比で30%以下の市町村(2020年を100とした指数)
出典=国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(2023年推計)」
住まいのエリア選びで注目したい今後の人口の増減

ここまでみてきたように、千葉県流山市、印西市はともに自然環境に恵まれ、子育て世帯の流入が増加しており、人口が増えつつあり、中長期的にみてもその傾向が続くものと期待されている。人口の増加は公共施設や商業施設などの充実をもたらし、住環境がいっそう充実し、マンションや戸建住宅などの住宅も増えることが期待され、そこに住みたいと考える人たちが増加すると期待される。

実際、国立社会保障・人口問題研究所の予測でも人口増加が続くとみられ、エリアの活性化にともなう住宅や不動産価格の上昇も期待される。

反対に大都市周辺部でも大幅な人口減が懸念される市町村が少なくない。これから住まい選びを、エリア選びから始めたいと思っている人にとっては、ぜひとも注目しておきたいデータといっていいいだろう。

山下 和之(やました・かずゆき)
住宅ジャーナリスト
1952年生まれ。住宅・不動産分野を中心に新聞・雑誌・単行本の取材、執筆、講演、セミナー講師など幅広く活動。著書に『2017-2018年度版 住宅ローン相談ハンドブック』『よくわかる不動産業界』など。

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