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現役Jリーガーが熱く語る『ブルーロック』の魅力とは? 横浜F・マリノス植中朝日選手に聞く、“プロ目線”の意外な楽しみ方

  • 2024.4.26
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写真:Wakaco
植中朝日
植中朝日Getty Images

―――今回は、第一線で活躍されている植中選手から見た『ブル-ロック』の魅力について伺えればと思います。植中選手は、元々、アニメや漫画をよく観られる方なのでしょうか?

「そうですね。僕、兄と姉がいるんですが、上2人が結構漫画が好きで、小さい頃から家に漫画がたくさんある環境だったんです。『ブルーロック』を読み始めたのも、兄貴に『面白いやつあるぞ。読んでみろ』って言われて、ちょうどその時、キャンプ中で時間もあったので一気に読みました」

―――お兄さんもサッカーをやられていたそうですが、やはりスポーツ系の漫画が多いのでしょうか?

「いや、そんなこともないです。『ワンピース』とかも大好きです。サッカー漫画に関しては、サッカーをやってない姉が集めてました。姉は、僕の試合は観に来ないんですけど、サッカー漫画は好きなんですよ。この間、地元である北九州でやったU-23の試合に、僕の人生で初めて観に来てくれました。ルール知ってるのかな?(笑)」

―――そうなんですね。今回、サッカーに詳しくない方に向けた企画ですので、植中選手のお姉さんが面白いと感じていただける記事になっていたら嬉しいです。本作は全員がフォワードという特殊な世界で、チームを組んで競い合っていきますが、実際に試合として成り立つものなのでしょうか?

「いや、正直最初は『こんなの無理だよな』と思いながら読んでましたね。伊右衛門という選手が、第一次セレクションでずっとキーパーやってくれるじゃないですか。彼もフォワードなんで、自分がゴール決めたいと思ってるはずなのに、チームのために全試合キーパーをやってくれるのを見て、ちょっと切ない気持ちにはなりました」

写真:Wakaco
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―――最初に『ブルーロック』を読み始めた頃は、少し違和感を感じることがあったんですね。ちなみにどの辺からハマったとかありますか?

「一応最初からです。まずどういう設定なのかを知らずに観始めて、フォワードしか出てこないということに興味を持ちました。今までのサッカー漫画とは全く違う感じで、新鮮だったので『なんだこれは!』というのが第一印象です」

―――チームメイトに『ブルーロック』を観られている方はいらっしゃるのでしょうか?

「長崎のチームに所属していた時は、キャンプで読んだのをきっかけにどハマりしていたので、『マジで読んだ方がいいっすよ!』って色んな人に勧めていました。でも、僕の語彙力がなくて実際に読んでくれた選手がいるか分からないです。特に、都倉(賢)選手にはずっと勧めてきたんですけど、結局読んでくれなかったです(笑)それはやっぱり僕の能力の低さです」

―――布教しきれなかったのですね(笑)植中選手がそこまで勧めた『ブルーロック』で1番テンションの上がったプレーはありますか?

「一番最初に、ボール鬼ごっこ(?)をするじゃないですか。タイムアップの時にボールを持っていた人が脱落する、『ブルーロック』の入寮テストです。そのラスト1秒で、主人公の潔世一が吉良涼介の顔面にぶち当てたプレーはテンション上がりました。

しかも、それまで潔と吉良は仲良くしていて、これからメインキャラになる予想までしていたのに…僕からしたら『めっちゃ裏切るやん』みたいな(笑)本当に衝撃的でした。でも、そのとき本人は無意識だったと言っていますけど、1番ライバルになりやすい人を落とすべきということを、一瞬で判断できる潔はすごいですね」

―――とても分かります。足を挫いたイガグリくんが隣にいたにも関わらず、その場の最上位ランクである吉良涼介を狙ったシーンですね。加えて、それが第1話というところも熱くなるポイントでした。

「多分あそこで潰しといて良かったですよね。あと、潔を信頼した上での行動かどうは分からないですけど、蜂楽が潔にパスを出す勇気にもグッときました。出したところで、潔がパスを受け取らなければ蜂楽本人が脱落していましたし、入寮テストの鬼ごっこは色々と衝撃でした」

―――植中選手から見て、読んでいて『さすがにこれは無理だろう』と思ったプレーや試合はありましたか?

「二次セクションの全員が集まった時に、糸師凛がボールを1回蹴って、それにまた自分が蹴ったボールを当てるみたいな描写があったんですよ。しかも、1本目は柔らかい高軌道だったのに対して、2本目は低軌道のスピンカーブがかかっていて、どんだけ能力高いんだ…って思いましたよ。でも、そんな能力の高い技を、早くバトルで見たいと楽しみになりましたね」

写真:Wakaco
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―――実際に『この技を試合で使ってみたい』と思ったプレーはありますか?

「糸師凛のキックオフシュートです。僕も小学校の頃に1回だけ決めたことはありますが小学生サイズで、しかもあんなに綺麗にギュイーンと曲がるイメージではなかったので、今、あのキックオフシュートを決められるなら毎試合打ちます。あれはやってみたいです」

―――小学生の頃に、キックオフシュートのご経験があるとのことでしたが、『ブルーロック』で言うと、『エゴ』に繋がるプレーだと思います。植中選手は試合中に『エゴ』を出すことは多いタイプですか?

「フォワードはみんなそんな感じだと思います。自分がシュートを打つか自分がパスを出して横の人に決めさせるかみたいな状況になったら、まずはやっぱり、自分がゴールを決めることを考えますし、というのも含めて、『ブルーロック』ではストライカーの心理的なところもしっかりと描かれているので、共感できる部分が多いです」

―――V・ファーレン長崎の時はフォワード(FW)でしたが、現在F・マリノスではミッドフィルダー(MF)として活躍されています。現在、MFでプレイする際にフォワードの経験が活かされる時はありますか?

「MFは、パスを出す側にもなるので、FWがどういうところにボールを出して欲しいだとか、そういった部分の気持ちが少し分かったりするときですかね。そういう、受け手の気持ちを考えながらプレーすることは普段から心がけていますし、少しは活きているんじゃないかなと思います」

―――作中では、“テリトリー”と呼ばれる『自分ならここが最強!』というエリアがありますが、実際の選手にもあるものなのでしょうか? また、植中選手の『ここが最強』というプレイエリアはどこでしょうか?

「武器みたいなのは、やっぱり選手1人1人にあると思います。僕は、フォワードなので、ゴール前のプレーが多いので、一瞬の動きで相手ディフェンダーを剥がして、背後に抜け飛び出すというプレーは誰にも負けないようにとは思っています」

植中朝日
植中朝日Getty Images

―――これは是非お聞きしたかった質問ですが、日本で本当に『ブルーロック』プロジェクトが開催されるとなったら、参加したいですか? 世間の声や倫理的なものを全て排除した場合…

「しません!(食い気味に)」

―――即答ですね(笑)!

「自分のランクに見合った食事しか取れないなんて絶対に嫌です。たくわんとか納豆だけとか耐えられませんし、それだと身体が作れないから悪循環な気がします。しかもあれだけ追い込まれる筋トレとか、フィジカル測定みたいなの無理ですよ」

―――玲央との出会い頭に、凪が落としそうになったスマホをトラップしたシーンが、個人的に印象に残っているのですが、このように日常生活でサッカーでの動作が出てしまうことなどありますか?

「日常生活ではないかもしれませんが、高校の時にクラスマッチでバレーボールをやった時には、手より先に足が出ちゃうみたいなことは結構ありました。速いスパイクのレシーブで咄嗟に(笑)」

―――競技が変わってますね(笑)今まで錚々たる方々とプレーをされていますが、『ブルーロック』のアニメのようなスーパープレーを間近で見た選手はいますか?

「これはプレーではないですが、僕が長崎にいた頃に、元コロンビア代表のビクトル・イバルボ選手とやったことがありますが、多分イバボル選手は、馬狼(照英)くらいフィジカルが強いです! それに加えて、足元もすごいです。馬狼と同じぐらいの推進力でした。『もう何も触れないです』っていうくらいのフィジカル強さだったので、馬狼と重なります」

写真:Wakaco
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―――馬狼といえば、「自分の意志を曲げて勝つぐらいなら死んだ方がマシ」、「生きたいように生きて、勝ちたいように勝つ。俺がその帝王だ」といったような、自分の『エゴ』を貫く、非常に魅力的なキャラクターです。植中選手が掲げている信念を教えてください。

「やっぱり、チームが勝つためには常に持っています。本当にこの作品と同じですが、自分が決めて勝つことが1番気持ちは良いですけど、チームが勝たないと意味がないというか、最後はチームのために、どっちの選択が正しいのかを考えていつもプレーしています」

―――先程、『ブルーロック』には参加したくないと仰いましたが、もしも強制的に入ることになったとして、一緒にプレーしたいキャラクターはいますか?

「一緒にプレーしたいのは蜂楽(廻)ですね。自分がどのプレイヤーになりたいか聞かれても、蜂楽が良いです。あれだけがドリブルできて、1番サッカー楽しそうだなっていう風に思わせてくれるので、蜂楽と一緒にプレーしたいですね」

――では、『ブルーロック』のキャラクターでご自身のプレースタイルを当てはめるとしたら誰が1番近いと思いますか?

「潔(世一)ですね。いや、観始めた当初は『ちょっと俺当てはまるんじゃない?』とも思ったりもしました(笑)身体能力がズバ抜けて高いというわけじゃないですけど、嗅覚でここにボールが来るんじゃないかっていうところに入って、ワンタッチでゴールを決める。というのが潔の特徴だと思うんですけど、僕が読み始めた時、長崎にいたリーグ戦では、ワンタッチで決めるゴールが8割ぐらいだったので、『ちょっと俺目指そうかな』って。いや、寄せにいっていた気がします(笑)」

ーー潔くんを意識されていた時期があったんですね。すごく貴重なお話を伺えて嬉しいです。

「意識していましたね。ライバルです」

ーーちなみに、チーム内に、『ブルーロック』に出てくるキャラクターに似ている選手はいますか?

「千切くんは怪我もしていたので、F・マリノスでは宮市(亮)選手とちょっと重なりますね。彼がモデルなんじゃないかなって思ったりもしました」

ーー最後に、プロの目線から見た作品の楽しみ方や、ここに注目してみるとより面白く読むことができるというポイントを教えてください。

「フォワード、点を取る人たちしかいない。で、負けたら日本代表に今後一切呼ばれないという、サッカー人生を賭けた戦いの中で、チームが勝つために犠牲になることもあるという心理描写が本当に上手く作られていると思います。もちろん華々しいプレーのかっこよさもありますが、『エゴ』は『信念』の言い換えだと思うので、個人の『エゴ』を追求した先にある、ライバルたちとの絆を意識して観てほしいです」

(取材・文:タナカシカ)

【作品情報】
キャスト:島﨑信長、内田雄馬、興津和幸、浦 和希、海渡 翼、小野友樹、斉藤壮馬、諏訪部順一、内山昂輝、木村 昴、神谷浩史
原作:金城宗幸、漫画:三宮宏太、キャラクターデザイン:ノ村優介(講談社「別冊少年マガジン」連載)
監督:石川俊介、構成・脚本:岸本 卓、ストーリー監修:金城宗幸、音楽:村山☆潤、アニメーション制作:エイトビット、配給:バンダイナムコフィルムワークス
©金城宗幸・三宮宏太・ノ村優介・講談社/「劇場版ブルーロック」製作委員会

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