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竜星涼の登場にかき乱される…『枕草子』の有名エピソードも登場。 NHK大河ドラマ『光る君へ』第16話考察&感想レビュー

  • 2024.4.26
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『光る君へ』第16話より ©NHK

吉高由里子が主演を務める大河ドラマ『光る君へ』(NHK総合)。平安時代中期を舞台に紫式部の生涯を描く。都では疫病が蔓延し、字を教えていた少女の看病にあたったまひろも病に倒れるがそこに現れたのは…。今回は、第16話の物語を振り返るレビューをお届けする。(文・苫とり子)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価】
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【著者プロフィール:苫とり子】
1995年、岡山県生まれ。東京在住。演劇経験を活かし、エンタメライターとしてReal Sound、WEBザテレビジョン、シネマズプラス等にコラムやインタビュー記事を寄稿している。

『光る君へ』第16話より ©NHK
光る君へ第16話より ©NHK

まひろ(吉高由里子)と間違え、さわ(野村麻純)に夜這いをかけた道綱(上地雄輔)。そのことで大きなショックを受けたさわは、石山寺からの帰路、まひろを「これ以上、惨めにさせないでください…ほっといて!」と突き放した。

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年が明け、994年。定子(高畑充希)のいる登華殿は華やかさを増し、積極的に若者たちを招いていた。伊周(三浦翔平)の弟・隆家(竜星涼)も加わり、一条天皇(塩野瑛久)が奏でる龍笛の音色に乗せて舞を踊る。

そこに現れたのが、女院の称号を与えられた詮子(吉田羊)だ。詮子が一条天皇の言動を諌める中、伊周が反論し、場が凍りつく。その日から宮中で放火が相次ぎ、隆家は詮子の仕業を疑うのであった。

一方、まひろは幾度となくさわに手紙を送るが、一向に取り合ってもらえない。そんな折、まひろが文字を教えていた少女・たね(竹澤咲子)が訪ねてくる。父母が悲田院に行ったきり、帰って来ないとまひろに助けを求めるたね。まひろが悲田院に赴くと、都に蔓延する疫病にかかった患者で溢れかえっていた。

やがて、たねが命を落とす。悲しみに打ちひしがれながらも他の患者の看病に当たるまひろは自身も疫病に感染。意識が朦朧とする中、まひろの目の前に道長(柄本佑)が現れる。道長は何の対策も講じない道隆(井浦新)に業を煮やし、道兼(玉置玲央)と共に悲田院視察に訪れていたのだ。

まひろを家まで送り届け、つきっきりで看病に当たる道長の姿に為時(岸谷五朗)は驚く。まひろが山を越えたのを見届け、土御門殿に戻った道長。その様子から倫子(黒木華)は道長の心に、自分でも明子(瀧内公美)でもない誰かがいることに気づくのだった。

『光る君へ』第16話より ©NHK
光る君へ第16話より ©NHK

『光る君へ』第16回「華の影」は、さわがまひろへの劣等感を滲ませる場面から始まり、さまざまな光と影が描かれた。

特に対照的に描かれたのが、若者たちが集い華やかさを増す登華殿と、疫病患者が収容された悲田院。この頃、定子のサロンが始まる。それは一条天皇と中関白家の親密さをアピールする場でもあった。

そんな思惑はあれど、公任(町田啓太)、斉信(金田哲)、行成(渡辺大知)らをはじめ才気ある若者たちが集う登華殿はとても華やか。中でも、定子の「香炉峰の雪はいかがであろうか」という問いかけでききょう(ファーストサマーウイカ)が御簾を上げ、みんなで庭の雪を眺める場面は『枕草子』でも有名な一節で大きな話題となった。

その後、一条天皇も交えて雪遊びに興じる一同。平和な光景に眉をひそめるのが道長である。なぜなら、彼らがそうしている今も都では疫病で次々と人が亡くなっているからだ。

一条天皇は見目麗しいだけでなく、お心も美しく、庶民たちを気遣うが、道隆は何の対策も講じない。「疫病が流行っておりますが、それは下々の者しかかからぬものゆえ、我々には関わりがございませぬ」。

いつの時代も「自分さえよければいい」という政治家はいるものだが、亡き父・兼家(段田安則)に“光”として育てられた道隆は本音を取り繕おうともせず、傍若無人っぷりに拍車をかけていく。

『光る君へ』第16話より ©NHK
光る君へ第16話より ©NHK

一方で、変化を見せるのが兼家に“影”でいることを強いられた道兼(玉置玲央)だ。

道兼は悲田院に視察へ向かおうとする道長を「都の様子なら俺が見てくる」と引き止める。父に認められたい一心で罪なき人々を苦しめてきた道兼。その過去は変えることができない。

だが、道長に「まだこれからではありませぬか。兄上は変われます」と言われたことで真剣にこれから自分に何ができるのかを考えたのではないだろうか。

「汚れ仕事は俺の役目だ」

同じ汚れ仕事でも、誰かのための汚れ仕事を。父の呪縛から解き放たれ、自らの意思で選択した道兼のかっこよさに痺れた。

『光る君へ』第16話より ©NHK
光る君へ第16話より ©NHK

そんな対照的な道を辿る道隆と道兼の、かつての姿に重なるのが伊周と隆家だ。今回から登場となった隆家は、雅に振る舞う伊周とは異なり、その態度に荒々しさがある。

定子のサロンでもどこか冷めた様子で皆を眺めており、父・道隆に対しても「恨んでいる人は大勢いるでしょう」と憚らず言い放つなど、一歩引いた視点に立っている隆家。

道兼とは違い冷静ではあるが、彼にもまた兄である伊周への対抗心があるのではないだろうか。詮子に放火の容疑をかけたのも、周囲をかき乱すためであろう。

竜星涼といえば、連続テレビ小説『ちむどんどん』(NHK総合)でヒロイン・暢子(黒島結菜)の兄である賢秀を演じたことでもお馴染み。当時、一攫千金を狙っては失敗し、家族に迷惑をかける賢秀はネットで“ダメニーニー”と騒がれていたが、筆者は割と彼が好きである。

なぜなら賢秀が他人に迷惑をかけるのは、自らの利益のためではなく、常に長男として幼い頃から厳しい経済状況に置かれていた家族にいい思いをさせてあげたいという気持ちで行動した結果だから。竜星のコミカルな演技にはどこかその哀愁が滲み、憎むことができなかった。

隆家も同じで、不遜な態度の中にも彼なりの苦しみが感じられる。彼も道兼のように回り道をして自分の生き方を見つけていくのではないだろうか。引き続き見守っていきたい。

(文・苫とり子)

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