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匠に聞く、買い物の極意。〈ビームス〉バイヤー・加藤忠幸のお宝自慢

  • 2024.4.26
〈メゾン マルタン マルジェラ〉の「アーティザナル」ミリタリージャケット、

デザイナーの息吹を感じる洋服は、もはやアート

自他共に認める買い物マスターの加藤忠幸さん。日本を代表するセレクトショップのバイヤーとくれば、目利きでないはずがない。自身のクリエイションの源にもなっているというのが、90年代後半から2000年初頭に買い集めたメゾンブランド。

「当時から〈メゾン マルタン マルジェラ(現・メゾン マルジェラ)〉や〈ヘルムート ラング〉は大人気だったけど、マルタン・マルジェラ本人がデザインを手がけていた1989年SS〜2009年SSのコレクションは世界的にも価格が高騰している。中でも僕が大好きだったのが、1991年にスタートした『アーティザナルライン』のミリタリージャケット。古着を分解して新しい洋服として再構築したもので、洋服というよりもはや一点もののアートピースという感覚さえある。

その後、リメイクものがめっちゃ流行ったけど、マルジェラは間違いなくその火付け役だったと思う。デザイナーのミリタリーものに弱くて、エレガントな洋服を作るメゾンブランドが作るパンクや軍ものに惹かれるんです」

〈メゾン マルタン マルジェラ〉の「アーティザナル」ミリタリージャケット
古着を加工して再構築したアーティザナルラインは手作業で製作されたため、もともと数も少なく現在はほとんど市場に出回らない。
〈メゾン マルタン マルジェラ〉の「アーティザナル」ミリタリージャケット
カレンダータグでは「0」「10」の数字が○で囲まれているのが目印。
〈メゾン マルタン マルジェラ〉の「アーティザナル」ミリタリージャケット
「1950年代の、おそらくドイツ軍のキルティングジャケットのパーツを使い、新たに襟にムートンとポケットを着けて再構築されたミリタリージャケット。当時は確か数十万円ほどだった気がするけど、今買ったら倍くらいかな」
〈メゾン マルタン マルジェラ〉の「アーティザナル」ミリタリージャケット
「上のオリーブを買った後に黒があることを知り、探し当てて色違いも購入。黒はさらに数が少ないので貴重な一着です」
〈メゾン マルタン マルジェラ〉の「アーティザナル」ミリタリージャケット
「追加された袖口のリブとポケットは同じ素材。襟のラインが少し女性っぽいかな、と購入当時はほとんど着なかったんですが、久しぶりに着てみたら逆に大きめの襟がいい感じですね(笑)」

洋服には商品として明確な定価があるけれど、付加価値が付くことで価格が上がることもあるという。

「ファッション業界にも昔から“御意見番”と呼ばれる方たちがいて、彼らの目に留まりブランド価値が上がり、入手困難で価格高騰、という図式はあります。けれどマルジェラのように作り手の心血が注がれた洋服が時代を超えても色褪(あ)せることなく愛され続けている。そこにモノとしての価値があると思うのです」

〈ヘルムート ラング〉のミリタリーベスト
1997年AWコレクションで初登場以来、ブランドを象徴するアイテムの一つ。
〈ヘルムート ラング〉のミリタリーベスト
「当時職場で同じラインの黒を着ている人を見て一目惚れ。ヘルムート・ラング自身がデザインしていた1999年の名作ですね。サイドのあしらいなど、ラングらしいミニマリズムの中に僕はパンク要素を感じていて、グッときます」

profile

〈ビームス〉バイヤー、 〈SSZ〉ディレクター・加藤忠幸

加藤忠幸(〈ビームス〉バイヤー、〈SSZ〉ディレクター)

かとう・ただゆき/大学卒業後、〈ビームス〉に入社。2012年よりサーフ&スケート部門のバイヤー。17年に同社オリジナルブランド〈SSZ〉を立ち上げ、デザイナー兼ディレクターとして活躍。鎌倉の野菜農家4代目の顔も持つ。

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