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仕事だけの人生はかわいそうで物足りない? 29歳・七苗(川口春奈)が抱く寂しさの正体 『9ボーダー』1話

  • 2024.4.24

19歳・29歳・39歳。節目の年齢を目前にした三姉妹が「LOVE」「LIFE」「LIMIT」の「3L」について悩み、葛藤し、それぞれの答えを見つける過程を描くヒューマンラブストーリー『9ボーダー』(TBS系)。第1話では、次女・大庭七苗(川口春奈)とコウタロウ(松下洸平)の出会いを中心に、三姉妹が直面する“壁”が明らかになった。

幸せな人生に恋愛・結婚は必須?

老舗の銭湯「おおば湯」の三姉妹、長女・成澤六月(木南晴夏)、次女・七苗(川口)、そして、三女・大庭八海(畑芽育)は、それぞれ10ずつ年が離れている。19歳・29歳・39歳と、次の年代に足をかけた“9ボーダー”上にいる三姉妹のそれぞれの視点から、彼女たちが抱えた“壁”が見えてくる。

1話では、主に次女・七苗の抱える「LOVE」(恋愛)の壁に焦点が当てられた。

飲食店のトータルプロデュース会社に勤める彼女は、最年少で女性初の役職に選ばれるなど、仕事は順調。しかし、元の恋人と別れてからは華々しい話題に欠け、仕事一筋で突き進んできた人生に一抹の寂しさを覚えている。

それが浮き彫りになったのは、元恋人・小森誠(塩野瑛久)とたまたま仕事先のレストランで再会し、彼が結婚していることを知った瞬間。誠が妻を紹介すると、七苗は、とっさに自分が嵌(は)めていたリングを左手の薬指に付け替え、結婚を前提にした相手がいることをほのめかしてしまう。

そのとき、誠が言うのだ。「仕事ばっかりじゃ、寂しいもんな」と。

女性が幸せな人生を過ごすうえで、恋愛や結婚は必須事項なのか? このテーマは近年、さまざまなドラマで扱われているように思う。

たとえば、『こっち向いてよ向井くん』(2023・日テレ系)でも、主人公・向井悟(赤楚衛二)の元恋人・藤堂美和子(生田絵梨花)が、親戚の独身女性を指して自身の父親が言った「孤独で、悲しいよな」という言葉に対し、違和感を覚えるシーンがあった。

七苗も、誠の発言に、明らかに引っかかっている。彼女は仕事が好きで、出世に戸惑いつつも充実していて、「恋愛」や「結婚」ではなく「仕事」に生きる人間が周りに多ければ、きっと不意に寂しさを覚えることもないのだろう。

七苗が抱く寂しさの根本には、「仕事一筋じゃかわいそう」と決めつけられてしまう違和感と、仕事ばかりしてきた自分に対する物足りなさがあるように見える。

三姉妹の「誰」に共感するか?

長女・六月は復縁、三女・八海は進路の“壁”を前にしている。

フリーカメラマンの夫・成澤邦夫(山中聡)がいる六月は、「手に職を」と考えて公認会計士の資格を取得。こうみると、六月は七苗のように仕事に誠実なしっかり者に思えるが、そもそも邦夫とは、大学卒業後に渡り歩いていた海外で出会っている。そして、彼の浮気が原因で、4年にわたる別居生活中だ。

40歳になるまでに、夫との別居を解消し、結婚生活をやり直すことを目標に掲げた六月。そんな彼女の姿に感化されるように、八海は20歳になるまでに進路を定めることを宣言する。

19歳の八海は、進学も就職もしていない。1話では菓子をつくる描写があり、彼女の部屋には専門学校のパンフレットもあるため、もしかしたらパティシエになりたい夢があるのかもしれない。でも、踏ん切りをつけられず、“浪人生”という名目で、人生のモラトリアム期間を過ごしている。あまつさえ、マッチングアプリで知り合った立花祐輔(兵頭功海)から“交際0日婚”を申し込まれる始末だ。

夫との関係性を見直し、新たな人生に進もうとしている六月か。

自分のやりたいことに向き合うか、それとも交際0日婚で無理にでも人生を変えようとしている八海か。

はたまた、仕事一筋だった人生に迷い、恋愛をしたいと望んでいる七苗か。

三姉妹の誰に共感するかで、このドラマの見方はガラリと変わるだろう。

コウタロウとの出会いが示唆する未来

七苗は、誠との再会後にたまたま、路上でギターの弾き語りをしていたコウタロウ(松下)と知り合う。彼の歌を聴いていたら、目が合ったのだ。七苗はその場を去ろうとするが、コウタロウは彼女の手をとり、「僕のことを知っていますか?」と問いかける。

誰もが夢をみて、一度は思い描くような、不思議で運命的な出会い。その後、実はコウタロウは記憶をなくしていて、バルの店主・辻本あつ子(YOU)のもとで、住み込みで働いていることがわかった。

記憶をなくしているにも関わらず、不安そうな素振りのないコウタロウは、幸せそうだ。何も持っていない彼よりも、好きな仕事をして家族もいる七苗のほうが圧倒的に寂しそう……、この対比が色濃く残る。

透明な水に、一滴の墨をポツンと落とし、じわじわと滲むコントラストのようなものが、コウタロウと七苗の関係性には見え隠れする。少しずつ距離を縮めていく二人。コウタロウから「俺のこと、好きになっていいよ。俺もきっと、君を好きになる」と言われた七苗は、新しい恋の予感に、素直に胸を躍らせる。

しかし、おそらく多くの視聴者が予想するように、コウタロウには秘密があるようだ。それはきっと、七苗の人生を揺るがすような……。そう、たとえば、自ら失踪して行方不明になってしまっている、三姉妹の父親に関するようなことかもしれない。

人生の転機を前にした彼女たちの視点から、浮き上がってくる“答え”はなんだろう。そのゴールを導き出すまでの過程を、そっと見守る春になりそうだ。

■北村有のプロフィール
ライター。映画、ドラマのレビュー記事を中心に、役者や監督インタビューなども手がける。休日は映画館かお笑いライブ鑑賞に費やす。

■モコのプロフィール
イラストレーター。ドラマ、俳優さんのファンアートを中心に描いています。 ふだんは商業イラストレーターとして雑誌、web媒体等の仕事をしています。

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