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「声優の存在よりキャラクターが大事」映画『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』剣城斬鉄役・興津和幸氏が語る

  • 2024.4.24
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©金城宗幸・三宮宏太・ノ村優介・講談社/「劇場版ブルーロック」製作委員会
©金城宗幸・三宮宏太・ノ村優介・講談社/「劇場版ブルーロック」製作委員会
©金城宗幸三宮宏太ノ村優介講談社劇場版ブルーロック製作委員会

――『ブルーロック』は、2022年から地上波アニメ(テレビ朝日系)で放映されていましたが、斬鉄役を演じるにあたり、どのような心持ちだったのでしょうか。

「全身全霊で!コンプリートしました!(笑)」

――元々、原作は読まれていたのでしょうか。

「いや、オーディションのお話をいただいた際に初めて読みました。『斬鉄くん面白いな』と思って、テープを送って。それで斬鉄役に決まりました」

――『ブルーロック』は、スポーツ×デスゲームという他にないストーリーですが、初めて原作を読まれた際、率直にどう思われましたか?

「みんな熱苦しいな〜と思いましたね(笑)でも、そんなに自分のエゴを押し付け合っていい世界は新しいなとも思いました。譲り合うことがいいとされている世の中で、全力で自分のエゴを出していく。そしてその先にあるものが『チームワーク』というところに繋がっていくのは本当にすごいですよね」

――ちなみに、興津さんご自身は、サッカーのご経験はあったのでしょうか?

「小学一年生から三年生まで少年サッカーチームに居ましたが、ボールが当たると痛いのでやめました。あと、走るのが遅くて。ドリブルしようと思ってもボールに追いつけなかったんです(笑)」

――辞めた理由がとても面白いです(笑)今作『劇場版ブルーロック – EPISODE 凪-』の脚本を読んだ際に感じた、印象や感想などをお聞きしたいです。

「TVシリーズよりも、斬鉄くんの出番が大幅に増えたので、嬉しかったです。脚本を読んだ時の印象だと、斬鉄くんの考えている志を感じることができて、キャラクター作りにより深みが増したなと自負しております! これ文字で伝わるかな(笑)」

ーー斬鉄への愛が伝わってきます! 役作りをするにあたって、どういったことをされたのでしょうか。

「TVシリーズまでの本編だと、コメディ担当のような役どころでしたが、ただのバカじゃない。志をしっかり持ったバカなんだ。ということを、ご覧になるお客様に届けなきゃいけない。そういった面を改めて考えました。今作で、斬鉄くんの『バカなりのかっこよさ』が伝わったら嬉しいです」

――それは、斬鉄の心の声があるということでしょうか。

「そうです。今回、斬鉄くんの長い心の声があります! 心の声って、30分のアニメだったら、主人公とかメインキャラじゃないと描かれないんですよ。でも今回、斬鉄くんも心の中で語るシーンがあるので、そこは是非注目していただきたいです」

©金城宗幸・三宮宏太・ノ村優介・講談社/「劇場版ブルーロック」製作委員会
©金城宗幸三宮宏太ノ村優介講談社劇場版ブルーロック製作委員会

――TVシリーズと比べて、斬鉄の『バカなりのかっこよさ』が見えることは、劇場版にあたっての魅力のひとつですね。

「そうですね。TVシリーズを観ていた人も、ステーキ食べて『美味しい〜』くらいしか印象に残ってないんじゃないですか(笑)」

――そんなことないとないです!(笑)でもそのステーキのシーンは個人的にも印象に残っています。チームZの久遠渉が、チームを裏切って、凪、玲王、斬鉄の3人に取引を持ちかけ、全員から一蹴されるシーンですね。確かにステーキについてぶつぶつと言っていました。

「今回、劇場版でもステーキを食べて『美味しい』のシーンはありますよ! しかも新録です(笑)やはり場面の前後が描かれると少し演技も変わってきますので、TVシリーズと比べると、こういう細かい描写も感じ取るものが多くなっているのではないかなと思っています」

ーー今作、『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』の斬鉄を演じられて、1番印象に残っているシーンやお好きなシーンはどこですか?

「ステーキを食べるシーン!」

ーーそこは長セリフの心の声ではなく、ステーキなんですね(笑)

「心の声についてはだいぶ語らせてもらったので(笑)でも、凪とお風呂に入って、2人がどういう想いでこの“ブルーロック”に来たかという話をするんですが、個人的には、変人同士だからこそのシーンだと思っているので、是非注目してほしいなと思います。お風呂シーン好きの方にもおすすめです」

ーーいつも間違えて使っていますが、斬鉄は多くの名言を残すキャラクターです。特に興津さんが気に入っている迷言(間違っている名言)やセリフはありますか?

「斬鉄くん自身は、間違えているつもりはないんですけどね(笑)今回の劇場版で好きなのは、『レンジでチン』です。いや、レンジでチンは間違ってないですからね。多分、彼の中では、小粋なジョークと間違いが共存していて、全部まとめて『間違ってるよ』って言われることは、侵害だと思っているんじゃないでしょうか。

序盤では、玲王に『バカ斬鉄』と言われるたびにイライラしていますから。これは個人的な考えですけど、ビシッと名言やジョークが決まったなっていう時は『最高だったよ』と褒めてあげたら、彼は大喜びするんじゃないですかね(笑)」

©金城宗幸・三宮宏太・ノ村優介・講談社/「劇場版ブルーロック」製作委員会
©金城宗幸三宮宏太ノ村優介講談社劇場版ブルーロック製作委員会

――斬鉄の一番の理解者は、紛れもなく興津さんですよね。徹底的に分析して演じられたのだと伝わってきます。チームVで一緒だった、凪役の島﨑信長さんと玲王役の内田雄馬さんとの収録エピソードなどをお聞きしたいです。

「和気藹々としていましたね」

ーー元々仲が良かったのでしょうか。

「共演する機会は多かったので、今回、一緒に収録できてよかったねっていう話はしました。声のバランスもそうですけど、3人のチーム内での空気感というか、考えている感情の大きさなど含めて、調和が取れていた気がします。

凪を演じた信長くんは、ぼーっとしている凪の中にある心の機微を繊細に表現しているので、そこをお互い感じ取りながら演技できたのはよかったと思いますね。玲王のキャラは繊細じゃないかもしれないですが…いや、彼は逆に繊細か。3人とも繊細なんで、僕たち(笑)」

ーーお二人とは、何度も共演されていたとのことですが、本作ではどんな会話がありましたか?

「TVシリーズのシーンを流用して演じる場面があったんですけど、スタッフの方に『TVシリーズの音をそのまま使うかどうしようかなって思ってるんです』って言われたんですよ。多分、僕たちに気を遣って言ってくれたんだと思いますが、3人で『そんなのありえないでしょう!』って音響スタッフの方々に言って、改めて劇場版用に録り直しました。満場一致でしたね」

ーーーー録り終わった際はどのような雰囲気だったのでしょうか。

「2日に分けて録ったんですが、初日に録り終わったと思っていたシーンを、まだ録っていないことに気がついて、すごく焦っていた記憶があります(笑)。最後のシーンは、斬鉄くんは出ていなかったので、お煎餅を食べながらモニター越しに、凪と玲王と潔がバチバチしてるのを『頑張れ!』と応援してました(笑)。

あ、最後に、劇場で本編終了後に週替わりに上映される『あでぃしょなる・たいむ!』(ショートアニメ)を録ったんですが、かなり和気藹々としていたので楽しかったです。『これ3Dにならないのかな』って言いながら」

ーー今日お話ししていて、興津さんがその雰囲気を作りだしていたんじゃないかと思います。『あでぃしょなる・たいむ!』では3Dにできそうなシーンがあったのでしょうか。

「3Dで『飛び出せ斬鉄くん』を作るのが僕の夢なんですよ。同時上映で『飛び出せ斬鉄くん』を作りたいですね」

ーーそれは是非観たいファンが多い気がします。推してください(笑)

「至る所で言っていきます!」

©金城宗幸・三宮宏太・ノ村優介・講談社/「劇場版ブルーロック」製作委員会
©金城宗幸三宮宏太ノ村優介講談社劇場版ブルーロック製作委員会

ーー先程、『和気藹々』と仰っていましたが、具体的なエピソードなどがあれば教えてください。

「まだ1日目は、これから試合だぞ!というところで終わったので、『早く続きを録らせてほしい!』という気持ちが大きかったですね。でも、もう夜中だったんですよ。

サッカーの試合のシーンの画にはとても力を入れているので、そこは時間をかけて作ってもらいたいですし、まだ完成したものを見てないですが、迫力あるサッカーシーンが描かれていると思います。それは声優チームと作画チームの、エゴのぶつかり合いですので」

ーーちょうど『エゴ』の話になりましたが、本作は世界一の『エゴイスト』を目指す物語です。興津さんが自分をエゴイストかもしれない! と思ったエピソードはありますか?

「うーん、僕は、言われたことをそのままやるのが嫌だから、結構エゴイストなのかな…。今日も質問にあんまり素直に答えてないですよね(笑)『こういう答え欲しいんだろうな』って思うけど、答えたくないっていう、天邪鬼なところがありますね。」

ーーいえ、興津さんからしかお聞きできない貴重なお話、大変嬉しいです。『ブルーロック』は個性的なキャラクターがたくさんいますが、興津さんが特に好きなキャラクターは誰ですか?

「南無三(なむさん)くんこと、五十嵐栗夢(いがらしぐりむ)くんです。僕が勝手に南無三くんと呼んでいるんですけど。イガグリくん」

ーーとても意外です。なぜイガグリくんなのでしょうか?

「『南無三!』っていうだけでかっこいいからズルいじゃないですか。斬鉄よりかっこいいこと言ってるし、しかも言葉も間違ってないし。しかも進化系の『南無阿弥陀仏アーップ!!』とか言うし。ズルい!『南無阿弥陀仏アップ』ってすごく言いづらいんですよ。好きなのにいつもスマートに言えないんですよ。

この間『ブルーロック』のイベントがあって、そこで言ってみたんですけどスムーズに言えなかったです。南無阿…ほら言えない。そこのイベント会場で僕が『南無阿弥陀仏アップ!』やりたいって言って会場の3000人巻き込んで、みんな付き合っていただきました(笑)」

ーーすごく楽しそうなイベントだったんですね。ご自身が、サッカーをもう一度やるとしたら、誰のプレースタイルや能力が欲しいですか?

「僕自身足が遅かったから、やっぱり斬鉄くんです。早く走る人って、足をどう動かしたら早く走れるかとか考えているんですよね。そこまで行きつかないうちに諦めてしまったんで」

ーー小学校の時に気づいたら、まだサッカーを続けていたかもしれないですね。足が速いキャラでしたら、千切豹馬になりたいとは思いますか?

「彼は、斬鉄くんとはライバルですからね。負けるわけにはいかないんです!ロングランでは負けてしまったけれど、これから努力して千切くんには負けないようにしようと思ってますね。トップスピードをさらに伸ばしていきたいなと思いますね!(斬鉄くんになりきり)」

ーー斬鉄は『バカ斬鉄』と呼ばれるキャラでしたが、興津さんがご自分と似ていると思う点はありますか?

「作中で斬鉄くんも言っているように、『バカっていうやつがバカなんだぞ』って思って生きてます(笑)馬鹿は悪口だぞ! ということを皆さんもう1度胸に刻んで、優しく斬鉄くんのことを見てあげてください」

ーー『バカ斬鉄』には、愛が籠っているとブルーロックファンは思っているんじゃないでしょうか。

「いや、許さない!(笑)でも本作を観ていただければ、そのバカの素晴らしさが、そしてバカに対する矜持というものを斬鉄くんが語っていますので、是非ともそこは注目していただきたいポイントです」

©金城宗幸・三宮宏太・ノ村優介・講談社/「劇場版ブルーロック」製作委員会
©金城宗幸三宮宏太ノ村優介講談社劇場版ブルーロック製作委員会

ーー斬鉄くんのシーンの中で、好きなシーンや心に残っている描写はありますか?

「『チェキラポイント』ですか?それはバカの矜持を語るシーンですね。バカのプライド。バカなりの矜持。みんな『斬鉄くんごめんなさい』って思いますよ!あとは、シュートシーンですかね。あと、原作を読んでいる人ならわかると思いますが『俺のテリトリーからのレンジでチン』ですね」

ーー声優という職業を目指したきっかけなどをお聞きできれば幸いです。元々声優志望でしたか?

「小学生の時は、まだ声優という職業が世の中に認知されていなかったので、これはダメだと思って小6の時、一瞬だけ料理人になろうと思いました」

――声優を目指されたきっかけはなんだったのでしょうか。

「『ドラえもん』(1979〜/テレビ朝日)ですかね。毎日藤子不二雄のアニメがやっていましたし。あとは『魔神英雄伝ワタル』(1988〜1989/日本テレビ)っていうアニメが好きで、そこからアニメのことを色々と調べるようになりました。

そこで、声優という職業があること知り、そのキャラクターたちが別の作品でも声を当てていることに、『そんな仕事があるんだ! 面白い!』 って思ったんです。それが小5ぐらいの時です。

しずかちゃんとわかめちゃんの声が一緒っていうのを、大人になってから気づいてショックだったんですよ。それぐらい名前というか、声優の存在よりもキャラクターが大事なんだと思いますし、だからキャラクターが愛されることが、何より嬉しいですね」

ーー話は飛びますが、興津さんのプロフィールにあった、『趣味:妖怪』が気になりました。子供の頃からお好きでしたか? 特にお好きなアニメはなんですか?

「大好きでした。特に好きなのは、水木しげる先生の『宇宙卵』(『週刊ポスト』/小学館)っていう話です。『コケカキイキイ』(『週刊漫画サンデー』/実業之日本社)とかも大体好きです」

ーーではもし、水木しげる先生の『ゲゲゲの鬼太郎』シリーズに出演するとしたら、演じたい妖怪はいますか?

「高校生になった、『その後のゲゲゲの鬼太郎』(扶桑社文庫)っていうのがあって、その大人になった鬼太郎を演じたいです。今は、映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』(2023)が公開されているので、鬼太郎のお父さんが人気ですけど、高校生になった鬼太郎は、野球部とか相撲部に入ったりするんです。これがなかなか下品なんですよ!

ちなみに今おすすめした漫画の『宇宙卵』も『コケカキイキイ』も結構下品です(笑)でも、真理が詰まっています」

ーー最後になりますが、興津さんから見て『ブルーロック』という物語の魅力はなんですか?

「エゴとエゴがぶつかることによって、生まれる美しい形。それがサッカー!」

(取材・文:タナカシカ)

【作品情報】
キャスト:島﨑信長、内田雄馬、興津和幸、浦 和希、海渡 翼、小野友樹、斉藤壮馬、諏訪部順一、内山昂輝、木村 昴、神谷浩史
原作:金城宗幸、漫画:三宮宏太、キャラクターデザイン:ノ村優介(講談社「別冊少年マガジン」連載)
監督:石川俊介、構成・脚本:岸本 卓、ストーリー監修:金城宗幸、音楽:村山☆潤、アニメーション制作:エイトビット、配給:バンダイナムコフィルムワークス
©金城宗幸・三宮宏太・ノ村優介・講談社/「劇場版ブルーロック」製作委員会

 

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