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青木冨貴子さん「ノンフィクションだけど、ラヴストーリーと思って読んでくださると、とてもうれしい」/新刊インタビュー

  • 2024.4.23

ノンフィクションだけどラブストーリーのような感覚に陥る、青木冨貴子さんの著書『アローン・アゲイン』が発売。青木さんのパートナーであるアメリカの作家・ジャーナリストのピート・ハミルさんと出会ってから最期までを書き記した一冊。読み進めるうちに“まさに運命!”だと感じる数々の逸話にきっと出合えるはず。

ラヴストーリーと思って読んでくださると、とてもうれしい

ノンフィクションでありながら、あたかもラヴストーリーの小説を読んでいるかのよう! アメリカの作家・ジャーナリストとして知られるピート・ハミルさんのパートナー、青木冨貴子さんの著書『アローン・アゲイン』。出会いから死別まで、33年間にわたる結婚生活を描いた、感動の手記が上梓されました。

「“病気の時も健康な時も、死がふたりを分かつまで”という言葉がありますけど、本当にそう思うんです。ただ、ふたりで手を繋いで死ぬわけにはいかない。どっちかが先にいくわけだから。この本は、私がピートと出会ってから最期までを書きました。ラヴストーリーと思って読んでくださると、とてもうれしいですね」

本書で綴られるのは「まさに運命!」と言いたくなる、数々の逸話。来日中のピートさんを青木さんが取材した出会いの場面からそうでした。

「相手は有名な作家ですし、こっちはドキドキしてるわけです。そんな時、なんと地震が起きて」。後にふたりのなれそめを尋ねられるたび、ピートさんはニヤリとしながら「大地が動いたんだよ」と答えたと言います。

そう、読み進めるうち折々垣間見えるのは、そんなピートさんのチャーミングな人柄。

「こんなにも寛容な人間は、今まで見たことないというくらい。結婚しても『こんな面があったのか』と失望することは、本当にひとつもありませんでした」

しかしつき合い始めた頃は、連絡が途絶えてしまうことも。日本での出会いの後、まもなく「ニューズウィーク日本版」の立ち上げで渡米することになった青木さんと再会、ふたりの仲は急速に縮まりますが、すれ違う日々もありました。

「彼が急に電話に出なくなった時は、もう本当に傷つきました。ましてや私は、ニューヨークでひとりだったので」

やがて結婚し、正式なパートナーとなった後もなお、ドラマチックな展開は続きます。ニューヨーク郊外からメキシコまで、安らげる居場所を求めてさまざまな土地に移り住んだり。9・11のアメリカ同時多発テロ事件が起きた日、ジャーナリストであるふたりは現場に駆けつけ、混乱の最中に離れ離れになったり。やがて大病を患ったピートさんへの、長きにわたる献身的な介護……丁寧な状況描写の積み重ねからじんわりと伝わってくるのは、青木さんが抱いていた深い愛情と覚悟。

「私は長年ノンフィクションを書いてきたので、自分の感情よりも事実を書くことで、読み取ってもらいたい。それは、すごく大事なことだと思うんです」

新著『アローン・アゲイン ―最愛の夫ピート・ハミルをなくして―』

青木冨貴子/¥1,760(新潮社)

「ニューズウィーク日本版」創刊時にニューヨーク支局長を務めた日本人ジャーナリストの著書と、映画『幸福の黄色いハンカチ』の原作者として知られるアメリカ人作家との、ドラマチックな33年間の軌跡を綴ったエッセイ。大切なパートナーを失い、アローン・アゲイン(再びひとり)となったことの「覚悟」が胸に迫る。

お話を伺ったのは……青木冨貴子さん

あおき・ふきこ/1948年東京生まれ。作家。1984年渡米し、「ニューズウィーク日本版」ニューヨーク支局長を3年間務める。1987年作家のピート・ハミル氏と結婚。著書に『ライカでグッドバイ―カメラマン沢田教一が撃たれた日』『たまらなく日本人』『ニューヨーカーズ』など多数。ニューヨーク在住。

photograph:Shinnosuke Soma text:BOOKLUCK

リンネル2024年6月号より
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