カピバラ先輩に続け…SNSで人気の「マイナー動物」たち
好きな動物は?という問いかけで真っ先に挙がるのは、ペットとしてもなじみの深い猫や犬、ハムスターなどでしょうか。また動物園や水族館の人気者といえばパンダやコアラ、イルカが常に上位にランクイン。身近な動物ほどファンも多い傾向にあるようです。……しかしSNS上では、日常ではほとんど接点のないにもかかわらずジワジワと人気を拡大し続けている動物たちが存在します。
平成で不動の地位に…先輩格のカピバラ
SNSなどインターネット上で熱狂的なファンを擁する“マイナー動物”。順に紹介していきましょう。まずは近年すっかり市民権を得た、ご存じカピバラです。
げっ歯目カピバラ科。ネズミの仲間で最大級、体長約80cm、体重は50~60kgにもなります。水中に潜る習性があるため、少し顔を出すだけで事足りるように、耳・目・鼻が顔の高い位置に一直線に並んでいるのが特徴です。
華美とは言いがたい外見や無表情とも取れる面立ちの素朴さ、そして各動物園で真冬に見られる、温かい湯に漬かる「露天風呂」姿がかわい過ぎると話題に。2005(平成17)年に本格展開が始まったキャラクター「カピバラさん」の人気も相まって、確固たる地位を築き上げました。
X(旧ツイッター)には、カピバラのアイコン画像やその名をアカウント名に冠するユーザーが多数存在します。のんびり屋や平和主義者を自認するケースが多く、男女を問いません。年齢層は比較的高めの傾向がありますが、20代の学生を名乗るアカウントもいるようです。
ペットなどのような身近な存在ではないにもかかわらず、Xでの遭遇率は犬猫に次ぐ勢いを誇る存在です。
臆病そうだけど優しいあふれる、その表情が人々を引き付ける
近年では検索ワードとしてカピバラの勢いを超えている(※)マイナー動物、それはシマエナガ。
スズメ目エナガ科、日本では北海道にだけ生息する小型の鳥で、体重はスズメよりも軽い数g~10gほどしかありません。
冬はモフモフの真っ白な毛に覆われる姿が愛らしく、ちまたでは「雪の妖精」とも呼ばれています。また、つぶらな黒目と小首をかしげているようなポーズが、庇護(ひご)欲をくすぐるような愛らしさを感じさせるのも人気の理由です。
こちらもすでに多数のグッズ化がされており、ぬいぐるみやキーホルダーはもちろん、写真集やアパレルグッズなども。Xでシマエナガの撮り下ろし写真を投稿しているアカウント「ぼく、シマエナガ。」のフォロワー数は何と49.6万人に上ります。
一般ユーザーにもシマエナガをアイコン画像にしている人は多く、こちらは女性が多いもよう。少し臆病で内向的、人見知りするけれど本当は人と仲良くしたい――。自分自身のそんな内面をシマエナガの表情に重ね合わせているようです。
※「Googleトレンド」で2004~2024年の人気度動向の推移を比較。
「世界一幸せな動物」笑顔にあやかりたい人多数
2010年代後半からジワジワと人気を拡大しているのは、「世界一幸せな動物」の異名を取るクアッカワラビーです(クオッカと表記することもある)。
カンガルー科クアッカワラビー属の有袋類。オーストラリア南西部に生息する、なかなかお目に掛かれないまさに“マイナー動物”ですが、日本では埼玉県東松山市の「こども動物自然公園」で見ることができます。
世界一幸せと称される理由は、その表情。口角が上がっているため、いつも笑っているように見えるのが最大の特徴です。
数年ほど前から国内のSNSでもその写真がたびたびシェアされるようになり、まさに笑っているようなかわいい顔立ちのとりこになる人が続出。特に笑顔に見える表情がクリエーターたちの創作意欲を刺激するのか、クアッカワラビーのぬいぐるみ作家やイラストレーターなども見掛けます。
この動物をアカウントに関するユーザーの傾向は、もともと性格の明るい人というよりは、クアッカワラビーのように笑顔でいたいと思う人、ニコニコ顔の裏に人知れぬ苦労を抱えている人が少なくないようです。
今一番に勢いのある動物「マーモット」の魅力とは
さて、最後に紹介するのは、マイナー動物界隈(かいわい)で今最も“勢い”があるといっても過言ではない生き物、その名も「マーモット」です。
カピバラと同じげっ歯目でリス科マーモット属。アルプス山脈やヒマラヤ山脈などの山岳地帯に生息しています。インスタグラムなどで、野生ながら人間に食べ物をねだるマーモットの動画が拡散され、その魅力にハマる人が相次ぎました。
先述のクアッカワラビーとは真逆の、ふてぶてしさを感じさせる顔立ち。 何か不満でもあるのかと不安になる、憮然(ぶぜん)とした表情。 2本足で立ち上がるとあらわになる、デップリとしたおなか。 おなかだけじゃない、ムッチリしたボディー。 ほかのマーモットとしばしば始まる取っ組み合いのケンカ……。
挙げればキリがない個性の数々に引き付けられ、インスタにアップされたマーモット動画は1000万回再生を連発、100万近い「いいね」を集めています。SNSでマーモットの画像や動画を逐次シェアする「マーモット中毒」なるアカウントも登場しています。
マーモットが現代においてこれほどの人気を博すのには、ある種の必然があると考えることもできます。
先述の通りマーモットは、現状に何らかの不満を抱えているかのような表情をしつつも、人間に必死で食べ物をねだったり、別のマーモットとガチンコの取っ組み合いをしてみたり、そのケンカの動きが独特で2匹でワルツを踊っているかのように見えてしまったりと、一生懸命なのにどこか抜けて見える、報われなさを感じさせる、コミカルさと哀愁を思わせる存在感……。
そう聞いて思い浮かべるキャラクターはいないでしょうか。今日、日本のみならず世界で人気が拡大する「ちいかわ」や「おぱんちゅうさぎ」です。
絶対的な強さや成功を約束されたヒーローより、ままならない自分自身を重ね合わせられるキャラクターが支持される現代。また“王道カワイイ”よりち多少のクセやツッコミどころがある造形に愛着を覚える人が多い時代。マーモットはそんな時流にぴたりとハマる存在なのではないでしょうか。
マーモットの魅力に時代が気づいた、もしくは時代がマーモットに追いついたのです。
※ ※ ※
その他SNS上では、カワウソ、プレーリードッグ、ハリネズミ、チンチラ、ハダカデバネズミ、オオアリクイなど、さまざまな“マイナー動物”たちが固有のファンを獲得しています。
なかでも、カピバラ、マーモット、チンチラなどが該当する「げっ歯目」への注目度は高く、6月の「夏至の日」にはげっ歯目の動物の人気投票企画が展開されるほどです。
(LASISA編集部)