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【吉田羊さんの着物と12のアソビゴコロ】 第9回 “推し”とアソブ

  • 2024.4.22

アンティーク着物を愛する吉田羊さんが、四季折々に着物のおしゃれを楽しむ様子を撮り尽くしたフォトエッセイ『ヒツジヒツジ』(宝島社)を発売。その至極の着こなしの数々から、「着物で遊ぶ」をテーマに切り取ったアソビゴコロあふれる着物語りを12か月にわたって綴っていきます。第9回で遊ぶのは「推し」。

こんにちは、吉田羊です。
着物スタイルだからこその「アソビゴコロ」をお伝えする連載です。
好きなブランド、好きな動物、好きなアイドル――。
尊い“推し”の存在は、装いにも忍ばせたいもの。
推しのモチーフを何かに見立てて遊ぶことも、手数の多い着物ならでは。
好きなものを思い浮かべながら、連想するのも楽しいもの!

“好き!”こそ、コーディネートの源

好きなキャラクターのテーマカラー、好きな猫の柄、好きなアイドルの持ち物などなど、「好き」だからこそ、「〇〇といえば!」の発想があれこれ思い浮かびませんか? そんなモチーフを、着物や帯の柄、帯留めや半衿、草履に靴に足袋にと忍ばせるのも、着物の醍醐味です。

“推し”ブランドの色使いを着物で表現

昔から好きなアパレルブランドといえば「sacai」。「sacai」が着物を作ったら?をテーマにコーディネートを考えました。深みがありつつ、鮮やかな配色の妙を表現したくて、デニムの着物に緑の小物を合わせました。馴染みのあるデニムは、初心者にもおすすめの着物です。バッグやソックス、サンダルはsacaiのものを。

アパレルブランドは、キーカラーやキーアイコンがあるので、イメージを作りやすいですよ。好きなブランドのハンカチやスカーフを使って、オリジナルの帯を作っても。そうすれば“あの”ブランドの着物バージョンに! 「今日は洋服にしようかしら、着物にしようかしら」なんて悩む朝も楽しいはず。

耳もと、首もと、足もと―― 細部にこだわりを忍ばせて

子どもの頃、夢中になって観た映画『風の谷のナウシカ』。「私がナウシカになりたい」と思うほど、憧れの存在でした。そこで、ナウシカが令和に着物で現れたら、という発想でコーディネートを考えてみることに。ナウシカの紋章の雰囲気がありつつ、ブルーのワンピースのイメージに合うものを探していたときに、アンティーク着物の催事で出合ったのがこちら。帯、着物、帯揚げ、帯締めはブルーを基調にしつつ、ナウシカの世界観を表現するために帯の柄と帯留めには昆虫モチーフを選びました。

帯留めがわりにつけているのはトンボのブローチ。胸もとのイヤリングは王蟲の目をイメージ。映画の中でスカートの下にインナーパンツをはいていたことを思い出し、足元にブルーのタイツとベージュのレッグウォーマーを合わせて。細部までなりきりました! 帯締めは3本使い。着物の色に合う帯締めがなければ、こんなふうに合わせ技で乗り切って。なければ作ればいいんです。

色や柄で大好きな猫になりきり!

好きすぎて、帯に絵柄を刺繍してしまったほどの“推し”猫、キジトラの「メメ」。ヘアメイクの中野明海さんの愛猫です。帯の柄にするだけでは飽き足らず、自分も猫になりました(笑)。まずはキジトラ柄から3つの色を抽出。各色の印象が漂う帯、小物を合わせました。

帯は渦巻き柄で、猫特有の毛流れを表現。着物のストライプ柄は縦にも横にも見え、その整然としていない感じが猫っぽくないですか。タイツにもキジトラ柄を。ネットで必死に探しました! 首もとのチョーカーは猫の首輪をイメージしています。
 
アンティーク着物はさまざまな色や柄があるので、自分だけの“推し”ポイントを見立てて表現する楽しみがあります。そして、「どうしてこの組み合わせなの?」と聞いてもらえたら狙い通り(笑)! 「これはね〜」と、止まらぬ推しトークを楽しみましょう。

 

キモノ語り:Yoh Yoshida edit & text:Masaki Takeda(mineO-sha)
photograph:Emiko Tennichi[sacai]、Yuji Takeuchi(BALLPARK)[ナウシカ、メメ]
 
※人物カットはフォトエッセイ『ヒツジヒツジ』(宝島社)から
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください

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