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【今見たいアート案内:4~5月】 キュレーションが光る注目の展覧会3選

  • 2024.4.20

最近は、キュレーションの光る面白い企画展がたくさん開催されています。『リンネル』本誌のアート&イベント連載ページを担当しているライター赤木真弓さんおすすめの、見逃したくない注目のアート&イベントを厳選してご紹介します。

1. モダン・タイムス・イン・パリ 1925ー機械時代のアートとデザイン

■機械と人間との関係をアートやデザインを通して考える

ラウル・デュフィ《パリ》1937年 ポーラ美術館

パリをはじめとする欧米の都市が「機械時代(マシン・エイジ)」と呼ばれる、華やかでダイナミックな時代を迎えた1920年代。

当時のヨーロッパやアメリカ、日本における機械と人間との関係をめぐる様相を紹介する「モダン・タイムス・イン・パリ 1925ー機械時代のアートとデザイン」が開催中です。

フェルナン・レジェ《鏡を持つ女性》1920年 ポーラ美術館

第一次世界大戦からの復興によって工業化が進むと、自動車や航空機が機械時代の象徴に。 芸術家やデザイナーも機械の進化が理想的な時代をもたらすと信じ、機械をモチーフにした作品を制作しました。

特に1925年には、パリ現代産業装飾芸術国際博覧会(アール・デコ博)が開催され、価値観の分岐点に。工業生産品と調和する、幾何学的な装飾スタイル「アール・デコ」の流行が絶頂を迎え、ガラス工芸作家のルネ・ラリックやグラフィックデザイナーのアドルフ・ムーロン・カッサンドルなどをはじめ、未来を感じさせるデザインは建築や家具、服飾の分野にまで広がりました。

左から、ルネ・ラリック《香水瓶「ジュ・ルヴィアン」》(ウォルト社)1929年12月2日 原型制作、ポーラ美術館/マルク・ラリック《香水瓶「ジュ・ルヴィアン」》(ウォルト社)1952年以降、ポーラ美術館、ロベール・ボンフィス《ポスター「PARISー1925アール・デコ博」》1925年 京都工芸繊維大学美術工芸資料館[AN.2694ー43]

本展ではフェルナン・レジェやコンスタティン・ブランクーシなど、機械をデザインに取り入れたアーティストから、逆に近代化に抵抗する芸術運動「シュルレアリスム」を代表するデ・キリコやマン・レイ、そして現代において機械文明やロボット、デジタル時代の視覚性をテーマに制作を行うアーティストまで、約170点の作品を紹介。

1920~1930年代のパリを中心に、機械に対する賛美と反発が同時に現れた100年前の文化の様相を振り返ることで、現代における、機械と人間とのさまざまな関係性を考えさせられます。

展示風景 ラファエル・ローゼンダール Courtesy of Takuro Someya Contemporary Art © Rafaël ROZENDAAL Photo by Ooki JINGU

『モダン・タイムス・イン・パリ 1925ー機械時代のアートとデザイン』   開催中~5月19日(日)/ポーラ美術館 展示室1、2/9:00~17:00 ※入館は閉館30分前まで/会期中無休/一般¥1,800/https://www.polamuseum.or.jp

2. 小金沢健人×佐野繁次郎 ドローイング/シネマ

■二人の作家の作品を、ドローイングの視点から読む

小金沢健人《ドローイング/シネマ(佐野繁次郎の素描に基づく変奏)》2023年 作家蔵

佐野繁次郎《le plus demande en France et dans le monde》制作年不詳 神奈川県立近代美術館蔵

絵画から映像、立体まで多様な展開を見せ、国際的に活躍する小金沢健人さんと、独特の手描き文字による装幀や挿画の仕事が、油彩画と並んで愛されている佐野繁次郎さんの仕事を紹介。

線を引いてイメージを描き出すドローイングは、カット/イラストレーションとどう異なるのか? イメージの連なりがもたらす動きの感覚とは?

小金沢さんが美術館所蔵の佐野繁次郎の作品に目を通し、自ら数百点をセレクト。佐野さんのカット原画をもとに、時間と空間、平面と立体へと展開する、新作のインスタレーションを作り出します。

美術家の手と目が生み出す、色や線、動きに着目し、平面表現の境界を探求します。

企画展「#小金沢健人×#佐野繁次郎 ドローイング/シネマ」展示風景(撮影:内田亜里)

『小金沢健人×佐野繁次郎 ドローイング/シネマ』   開催中~5月6日(月)/神奈川県立近代美術館 鎌倉別館/9:30~17:00 ※入館は閉館30分前まで/月曜休館(ただし4月29日〈月・祝〉、5月6日〈月・休〉をのぞく)/一般¥700/http://www.moma.pref.kanagawa.jp/annex

3. ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?──国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ

■美術館だからこそできる、アートの力を問い直す

クロード・モネ 《睡蓮、柳の反映》1916年 油彩、カンヴァス 国立西洋美術館 松方幸次郎氏御遺族より寄贈(旧松方コレクション)

国内外で活躍する21組の現代アーティストたちの作品が集結する、国立西洋美術館史上初の現代美術の展覧会。

20世紀半ばまでの西洋美術作品を所蔵、公開してきた国立西洋美術館。モネやセザンヌ、ポロックなどのコレクションから、アーティストたちが独自の視点で選んだ作品約70点も展示します。

竹村京《修復されたC.M.の1916年の睡蓮》2023-24年、釡糸、絹オーガンジー、作家蔵

小沢剛《帰ってきたペインターF ─ Painter F Song》2015年、ビデオ、12分8秒、森美術館

美術館の役割が大きく見直され、さまざまな世界の問題に直面する今、美術館ができることとは?

国立西洋美術館の所蔵作品にインスピレーションを得た新作や、美術館という場所の意義を問い直す作品など、現代、そして未来のアートの様相を知るうえでも必見の、見応えのある展覧会です。

辰野登恵子《WORK 89 -P-13》1989 年、油彩/カンヴァス、千葉市美術館

『ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?──国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ』   開催中~5月12日(日)/国立西洋美術館 企画展示室/9:30~17:30(金•土曜および4月28日〈日〉、29日〈月・祝〉、5月5日〈日・祝〉、6日〈月・休〉は20:00まで) ※入館は閉館30分前まで/月曜、5月7日(火)休館(ただし4月29日〈月・祝〉、4月30日(火)、5月6日〈月・休〉は開館)/一般¥2,000/https://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2023revisiting.html

text & edit:Mayumi Akagi
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください

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