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どんどん落ちぶれていく…玉置玲央“道兼”の好感度が上がっているワケ。 NHKドラマ『光る君へ』第15話考察&感想レビュー

  • 2024.4.19
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『光る君へ』第15話より ©NHK

吉高由里子が主演を務める大河ドラマ『光る君へ』(NHK総合)。平安時代中期を舞台に紫式部の生涯を描く。道隆が独裁を進めるなか、ききょうが定子と初対面し、”清少納言”誕生の歴史的瞬間が訪れる。今回は、第15話の物語を振り返るレビューをお届けする。(文・苫とり子)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価】
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【著者プロフィール:苫とり子】
1995年、岡山県生まれ。東京在住。演劇経験を活かし、エンタメライターとしてReal Sound、WEBザテレビジョン、シネマズプラス等にコラムやインタビュー記事を寄稿している。

『光る君へ』第15話より ©NHK
光る君へ第15話より ©NHK

長らく貴族社会の頂点に君臨した兼家(段田安則)が亡くなり、その後を長男・道隆(井浦新)が継いだ。関白となった道隆は強引に娘である定子(高畑充希)を中宮に据え、詮子(吉田羊)を内裏の外へと追いやる。

【写真】三浦翔平”伊周”&柄本佑”道長”の2ショットも

その2年後、一条天皇(塩野瑛久)は麗しく成長。道隆の独裁には拍車がかかり、伊周(三浦翔平)らに身内びいきの人事を行うばかりか、定子のために公費を投じ始める。道長(柄本佑)は兄のやり方に納得がいかない。宮廷でも道隆を批判する声が多くあり、「帝を手玉に取っていい気になっている」と定子を悪く言う者たちも増え始める。

そんな中、内裏で女房として働くことになったききょう(ファーストサマーウイカ)は、道隆の妻・貴子(板谷由夏)に定子の話し相手になってほしいと頼まれる。定子の美しさに思わず言葉も失い、見惚れるききょう。その日、彼女は定子から「清少納言」という名を与えられた。

一方、まひろ(吉高由里子)はさわ(野村麻純)と参籠に訪れた近江の石山寺で思いもよらぬ人物と出会う。幼い頃から愛読していた『蜻蛉日記』の作者で、兼家の妾だった藤原寧子(財前直見)だ。

寧子との会話から滲む兼家への愛情に心を打たれるまひろ。日記にも登場した寧子の息子・道綱(上地雄輔)にも会えたことで心が満たされるが、石山寺から帰る道中、川辺に転がる複数の死体を目にする。都で疫病が流行し始めていたのだった。

『光る君へ』第15話より ©NHK
光る君へ第15話より ©NHK

道隆の独裁には拍車がかかる一方、どんどん落ちぶれていくのが道兼(玉置玲央)だ。汚れ仕事を買ってまで父である兼家に尽くしてきたが、後継に選ばれなかった。その父も亡くなり、妻と子供にも捨てられて意味を見失った道兼が取った行動は、まさかの“家出”。道長が公任(町田啓太)から「実は道兼殿が我が家に居座ってしまわれ……」と相談されたことで発覚した。

前回の予告で「お前、俺に尽くすと言ったよな?」と不敵な笑みを浮かべてきた道兼。公任を利用し、道隆に反旗を翻すのかと思っていたら、ただの家出とは。この頃、道兼の年齢はすでに30歳。なのにやっていることは、中高生と変わらない。呆れると同時に、愛おしみが湧いてくる。

そんな道兼だから、弟である道長も放っておけないのだろう。公任の家に入り浸る道兼をわざわざ迎えに行き、「兄上はもう父上の操り人形ではありません。己の意志で好きになさって良いのです」と声をかける。

幼い頃から兄弟の中で不遇な扱いを受けていた道兼に、怒りの矛先を向けられていた道長。道兼は愛するまひろの母親の命を奪った張本人でもあり、当然、憎い気持ちはあるはずだ。

だが、道兼がそういう非道な振る舞いを取るのは兼家に認められたい一心であることを道長は知っている。父親に対する愛憎渦巻く感情も理解できるのだろう。そんな父も、もうこの世にはいない。

「兄上は変われます。変わって、生き抜いてください。この道長がお支えいたします」

以前、道兼に道隆がかけた「お前を置いてはゆかぬ」という言葉とは違い、道長の誠意がこもった言葉は凍てついた道兼の心を溶かす。積年の思いが溢れ出す玉置玲央の泣きの演技に心を打たれた。

しかし、道兼が多くの人を苦しめてきたことは事実。史実では、道隆亡き後に道兼が関白職を継ぐが、わずか7日で病没する。それまで己の罪とどう向き合っていくのか、見ものだ。ちなみに道兼が世を去った後、道長と伊周の間で跡目争いが勃発する。今回、描かれた2人の競べ弓はその伏線となっていた。

『光る君へ』第15話より ©NHK
光る君へ第15話より ©NHK

もう一つ、第15話の見どころとなったのが、ききょうと定子の出会いだ。ファーストサマーウイカがききょうが定子の美しさに衝撃を受ける場面をコミカルに演じた。

幼くして天皇となり、母である詮子にも厳しく育てられた一条天皇の孤独を理解している定子。道隆の娘とは思えないほど愛情に溢れた彼女の人柄は外見にも現れており、まるで女神様のよう。

そのあまりの尊さにききょうは語彙力を失い、浄化されたかのような表情を浮かべる。そんな彼女の姿は、まさしく“推し”を前にした時のそれで笑ってしまった。恋とも、単なる憧れとも表現できない複雑な感情がそこにはある。

脚本家の大石静は本作で、家族、恋人、友人といった名前がつけられない関係性を映し出してきた。例えば、道長と行成(渡辺大知)。二人は若き頃、公任と斉信(金田哲)とともに見目麗しい貴公子として貴族の女性たちの視線を浴びていた。

行成は6歳年上の先輩・道長を慕っており、道長にとっても文学に長けた行成は良き相談相手。互いに尊敬し合っている。けれど、行成は道長が恋をしていることに気づき、「好きな女子がいらっしゃるのですね……」とちょっぴり切ない表情を浮かべていた。それが恋なのかは定かではないが、憧れ以上の感情が見え隠れする。

まひろとさわの関係も家族ではないし、友人とも少し違う気がする。血の繋がりはないが、姉妹のように心を許しあっている2人。そんな彼女たちの間には穏やかな空気が流れており、石山寺に向かう途中、さわの「私たち、このままずっと夫を持てなければ、一緒に暮らしません?」という言葉に、まひろが「それはまことによいかもしれません」と笑顔で答える場面が微笑ましかった。

だが、そこに水を差したのが道綱だ。どうやら、さわは道綱に一目惚れしたよう。一方、道綱は自分に会えて感激するまひろの方に好感を抱いており、その夜に夜這いをかける。だが、間違ってさわの布団に潜り込んでしまった道綱。自身も妻がおり、妾の立場に苦しんだ母親を見て育ったにもかかわらず……と呆れつつも、慌てて取り繕う姿は上地雄輔が演じているのも相まって何だか憎めない。

でも、それによって深く傷ついてしまったさわは、「私には才気もなく、殿御を惹きつけるほどの魅力もなく、家とて居場所がなく……もう死んでしまいたい!」と卑下する。こういう経験、女性なら一度は経験があるのではないだろうか。友達のことは大好きだし、魅力も分かっているけど、嫉妬でおかしくなりそうなあの感じ。一度そうなると、なかなか純粋に相手と向き合えなくなるものだけど、さわとまひろの場合はどうだろう。これで2人の関係にヒビが入ったら、道綱はどう責任を取ってくれるんだか。

(文・苫とり子)

 

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