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ジャコメッティ・インスティテュートに能の舞台、杉本博司の写真......。

  • 2024.4.18
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インスティテュートに設けられた能のステージ。左がアルベルト・ジャコメッティ作『Homme qui marche l』(1960年)、右が『Grande femme』(1958年)。どちらもジャコメッティ財団の所蔵作品だ。photo: vue de salle de l'exposition « Giacometti / Sugimoto. En scène »  ©︎Institut Giacometti

14区のジャコメッティ・インスティテュートで『Giacometti/ Sugimoto Staged』展が始まった。財団がコンテンポラリーアーティストを定期的に招待するプログラムの一環である。杉本博司とアルベルト・ジャコメッティというふたりの芸術家の名前が並ぶのを見て、日本のギャラリー小柳で2020年に開催された写真展『Past Presence』を見た人は、ああ!と思うことだろう。

杉本博司は2013年にMOMAから彫刻庭園の撮影を依頼され、そこで生まれたシリーズが『Past Presence』である。撮影に訪れた庭園で彼が目を留めたのがジャコメッティの彫刻だったと、彼は自身のサイトで語っている。ジャコメッティの『Grande Femme III』を日中の光と夕暮れの光で撮影した彼。展覧会のカタログにも引用されているが、「まるで肉体がなくなったかのように、極限のあり方を明快に表現した針金のように細い表現。私が写真へのアプローチで求めていたものは、ジャコメッティの彫刻によってすでに達成されていました」「私はジャコメッティを写しながら、能舞台を見る心持ちがしました。能舞台では死んだ魂が生き返り、いまとして(Past Presence)蘇るからです」。

左: 『Giacometti / Sugimoto. Staged』展のプレスプレビューでの杉本博司氏。「Past Presence071」の展示の前にて。右: 今回、『Past Presence』から4点が展示されている。photos: Mariko Omura

財団のガラス張りの天井の下のメインスペースにステージが設けられ、能の舞台が再現された。右に『Grande Femme』が、左には『歩く男』が配置されている。実は最初は女性像が左、男性像が右だったそうだ。しかし能の舞台で、幽界から現世への通路となる下手の橋掛りがない財団での舞台なので、杉本はこの2体の位置をスイッチし、左から右に向かって『歩く男』を左に配置することで役者の出を表現するようにしたという。鏡板の代わりに松を描いた幕が張られ、ステージ奥には3つの坐像が囃子方として配置された。左右2点はブロンズ、中央は石膏である。なおジャコメッティは近しい人々をモデルに選んでいて、この石膏の坐像のモデルは写真家で彼のお気に入りの最後のモデルとされるひとり、エリ・ロタールだ。

今回の展覧会では杉本が所蔵する能の面、そして『Past Presence』から杉本が撮影した4点が展示されている。1997年に始めたモダニズムの建築のシリーズと同様に、『Past Presence』の写真も焦点が意図的にぼかされている。仕上がった作品には現実との妥協が含まれていて、作家の理想の形、知的な進め方は初期段階で作家の脳内におぼろげに現れるという彼の確信ゆえである。

『Giacometti / Sugimoto. Staged』展の展示より。左: アルベルト・ジャコメッティ作の3坐像。左からブロンズの『Femme Assise』(1956年)、石膏の『Bust d'homme assis(Lotar III)』(1965年)、ブロンズの『Homme à mi-corps』(1965年)。右 : 小田原文化財団が所蔵品する能面を展示。写真は室町時代の能面。photos: Mariko Omura

展示より。左: 杉本博司『Baltic Sea, Rugen』(1996年)と270cm高さのアルベルト・ジャコメッティ『Grande Femme IV』(196061年)。右: アルベルト・ジャコメッティ『Bust de Yanaihara』(1960年)。photos: Mariko Omura

通り側に面した部屋では杉本によるシリーズSeascapesから『Baltic Sea, Rugen』(1996年)が展示され、その前にはジャコメッティがニューヨークのチェース・マンハッタン銀行前の広場用に依頼されたものの完成に至らなかったという『Tall Woman IV』を展示。さらに通路状スペースの奥には、ジャコメッティによる矢内原伊作の胸像(1960~61年)が。実存主義の研究のため渡仏した矢内原がジャコメッティのアトリエを訪問し、親しくなったふたり。矢内原はジャコメッティのモデルを何度も何年も務め、彼と妻のアネットが歌舞伎を知るのも矢内原のおかげである。なお、大阪で見つかった珍しいブロンズの矢内原像を杉本はシリーズ『Past Presence』のために最近撮影したところだという。インスティテュート内、物事の本質を捉え、内なる世界に目を向けるジャコメッテイと杉本と矢内原の3名がくるりと輪を描くサークルに囲まれるような気がしてくる。

『Giacometti / Sugimoto. Staged』展の展示。左: 杉本博司「Past Presence」より。右: 会場の半地下のスペースでは素材の試みをテーマに、通常とは異なるサポートに描かれたジャコメッティのデッサンが杉本の依頼で財団から選ばれた。ジャコメッティが近所のカフェで食事をした時にペーパークロスにボールペンで描いたものなどが、部屋の中央で初公開されている。周囲の壁には杉本博司のセルフポートレートのネガティブ・ポラロイドなど。photos: Mariko Omura

インスティテュートに常設されているアルベルト・ジャコメッティの14区のアトリエの再現。家具も壁もアトリエからここに移された。インスティテュートでこのアトリエを正面から見る人はアトリエの窓の前に立っているという位置関係だ。次回『彩色された彫刻』展は7月2日から11月3日までの開催。photo: Mariko Omura

「Giacometti / Sugimoto En Scène」展
開催中~6月23日
Institut Giacometti
5, rue Victor- Schoelcher 75014 Paris
開)10:00〜18:00
休)月
料)9ユーロ
www.fondation-giacometti.fr

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