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「介護したのは私なのに、納得いかない…」より多く相続する手段は?

  • 2024.4.18
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「介護したのは私なのに、兄のほうが多く相続するなんて…納得いかない」

お金のために介護していたわけではないといっても、長年介護していた身からすれば、何もしなくて遠くに住んでいる兄弟の方が相続でより多くの遺産を受け取ると、納得いかないのではないでしょうか。

今回はFPの筆者が、介護した人が納得のいく形で相続を受けるための、いくつかの方法を紹介します。

■介護していた人がより多く相続する方法

介護していた人がより多くの遺産を相続する方法を3つ紹介します。

●1 介護を受ける人に遺言書に書いてもらう

納得のいく相続を受けるために、介護が必要な状態になった早い段階で遺言書を書いてもらう、という方法があります。遺言がある場合、相続人は遺言通りに遺産分割を進めていくことになります。

安全性、確実性を高めたいときは、遺言書のなかでも公正証書遺言がおすすめです。

●2 介護した人が生前贈与で多めに遺産を受け取る

介護を受けていた親が、生前に財産を、介護してくれる人に渡しておく方法も有効です。

介護した人は、生前贈与で先んじて財産を受け取っておけば、結果的に介護をしなかった他の相続人より多く財産を受け取れます。

注意点として、被相続人(財産を渡す人)に、「特別受益の持ち戻し免除」の意思表示をしてもらうことが重要です。これがないと、相続を受ける際に生前贈与を受けた分の金額が差し引かれてしまいます。特別受益の持ち戻し免除とは、生前贈与の分は遺産に含めずに遺産分割をするというものです。

例えばAさんが1,000万円の生前贈与を受けていて、相続発生時に遺産が2,000万円、相続人がAさんとBさんだった場合、一般的にはAさんが500万円、Bさんが1,500万円相続します。

しかし特別受益の持ち戻し免除の意思表示があれば、Aさん1,000万円、Bさん1,000万円となります。

なお、生前贈与は介護する人とされる人、双方の合意が必要なため、極力安全性が高い公正証書で贈与契約書を交わしましょう。

●3 負担付死因贈与契約ー条件付きで資産を相続するー

納得のいく相続を受けるために「負担付死因贈与契約」という方法があることも覚えておきましょう。

負担付死因贈与契約とは、「〇〇の財産を渡すので、介護してほしい」など、条件付きで資産を贈与することを約束する契約です。

■介護した分、納得のいく相続を受けるための制度がある【ハードル高】

介護した分、納得のいく相続を受けるための「寄与分」という制度があることをご存知でしょうか。

寄与分とは、生前に被相続人の事業を無給で手伝ったり、被相続人を介護したりするなど「特別な寄与」をした相続人の相続分を、貢献度に応じて増加させる制度です。

ただし、すべてのケースで寄与分が認められるわけではないので注意が必要です。

被相続人の配偶者や直系血族、兄弟姉妹は、そもそも被相続人を扶養する義務が法律によって定められています。したがって介護の内容によっては「特別な寄与」にあたらず、寄与分が認められない場合があるのです。

被相続人に対して行った介護が「特別な寄与」とみなされるためには、以下の要件を満たす必要があります。

・特別性
一般的な扶養義務を超える介護と認められること。要介護2以上、排せつや入浴などの介助が必要だったかが1つの目安となります。

・無償性
無償で介護をしていたこと。

・継続性
一定期間継続的に介護をしていたこと。月に数回、看病をした程度では認められない。

・専従性
仕事を辞めて介護をしたなど、介護に従事していたと認められること。

上記の4つの要件を満たした「特別な寄与」を証明する書類も用意しておきましょう。 特別な寄与を証明する書類としては以下のようなものがあります。

・医師の診断書
・要介護認定の資料
・介護サービスの利用履歴
・介護日誌(介護の詳細が分かるものを自身で用意)

上記の要件を満たしていても、遺産分割協議で相続人全員の合意が必要です。なかには証明しにくい項目もあり、相続時に介護の寄与分を認めてもらうのは容易ではないでしょう。

■円満な相続に向け、生前にしっかり対策しよう

被相続人の配偶者や直系血族、兄弟姉妹は、介護をしても寄与分として認められるには、行った介護が「特別な寄与」の要件を満たしていなければなりません。

介護した分、多く遺産を相続できるようにするためには、遺言書や生前贈与、負担付死因贈与契約など生前の対策が大切です。

文・金子賢司(ファイナンシャル・プランナー)
立教大学法学部卒業後、東証一部上場企業に入社。その後、保険業界に転身し、FPとして活動を開始。個人・法人のお金に関する相談を受けながら、北海道のテレビ番組のコメンテーターとしても活躍中。

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