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LVMH メティエ ダールがレジデント・アーティストの作品展を初開催した。

  • 2024.4.17

2015年に設立された「LVMH Métier d'Art(LVMH メティエ ダール)」。皮革やメタルなど世界中のマニュファクチャーや職人たちとパートナーシップを結び、そのサヴォアフェールを守り、そして革新させるための活動を行っている。ルイ・ヴィトンなどグループに属するメゾンをはじめとするラグジュアリーブランドへの技術、素材提供を促進することはもちろんだが、さらに職人技との芸術的対話を求めて2016年にアーティスト・イン・レジデンスをスタートさせた。そのために毎年候補者を募っていて、今年も秋にその中から1名が選ばれる。そのレジデンス先はスペインのシルクのマニュファクチャーだという。

左: アーティストのジョゼファ・チャム。SFと思索が混じり合ったストーリーを持つ作品を制作している。右: 彼女のレジデンス先だった、パリとポルトガルを本拠地とするメタルのマニュファクチャーJADE。@piercarloquecchia @dsl_studio

LVMH メティエ ダールにおけるマニュファクチャーとアーティストの出会いについて、フランスではこれまであまり語られることがなかったが、3月19日から25日までLVMH メティエ ダールの8人目のレジデント・アーティストであるJosèfa Ntjam(ジョゼファ・チャム)の作品展「Une Cosmogonie des Oceans(大洋のコスモゴニー)」がリシュリュー通り73番地の地上階を占める廃墟化したようなスペースにて開催された。LVMH メティエ ダールはこの近くにショールームを擁する本拠地を設けるそうで、夏前にそのお披露目が予定されている。この展覧会はそのイントロダクション的意味合いを込めて開催されたのだ。

1週間だけの開催が惜しまれた「大洋のコスモゴニー」展より。@piercarloquecchia@dsl_studio

パリのJADEでポルトガルのマニュファクチャーでは行わない立体作品をジョゼファは制作した。@piercarloquecchia@dsl_studio

「大洋のコスモゴニー」と題された展覧会で展示されたのは、ジョゼファ・チャムとメタルのマニュファクチャーであるJADEとの出会いから生まれた12点。2023年に彼女がポルトガルとパリのJADEのアトリエに入り込んで製作活動に励んだ実りである。それまでに扱ったのはセラミックや樹脂などで、メタルを素材にしたのはこれが初めて。発見続きの毎日だったそうで、メタルの3Dプリントは驚くほど時間が必要で、またほかの素材以上に数多くの製造工程を踏む必要があったと語るが、作品のアイデアはこのレジデンスの志願時にすでにしっかりと構想されていたという。LVMH メティエ ダールのプレジデント、ジャン=バティスト・ヴォワザンは、壁に展示された赤紫色の作品を指して、「これまでメタルの世界ではできないとされていた色です。ジョゼファの希望により、職人たちは技術の限界をより遠くへと押し進めることによってこの色のメタルを作り出すことができました」と、この出会いがもたらす革新のひとつのわかりやすい例として話してくれた。また、通常はジュエリーなどの仕事が主なJADEにとっては、2メートル近い高さのジョゼファの作品はサイズにおけるチャレンジでもあった。道具、作業工程、素材、仕上げ......技術面での難しさに直面したJADEの職人たちは日頃慣れ親しんでいる"安楽ゾーン"から出て、ジョゼファが課したチャレンジにこたえたのだ。アルチザンたちにもアーティストにも前進する機会となるコラボレーションである。

レジデンス中に生まれた光などによって色が変わるカメレオン・ペイントを使用した作品もある。中央アフリカ・西アフリカなどで海底に埋没した記憶を掘り起こすかのように、彼女は半人半魚の女神マミワタ、ドゴン族の神話に登場するアンマやノンモといった昔の物語を現在の最新テクノロジーで表現。カテゴライズされないことも彼女がテーマに選ぶことで、プランクトンにインスパイアされた作品も展示されていた。photos: Mariko Omura

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