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自分のために、ミニスカートが履きたくなった。|前田エマの、日々のモノ選び。#7

  • 2024.4.16

30代という年齢は、“モノを選ぶ眼”が育ち養われてくる年齢ではないだろうか?流行りものやブランドものではなく、自分が心地いいモノを選びたい。生産の背景を知り好きになるモノだったり、多少値が張っても人生をかけて大切にしたいと思えるモノだったり…。そういった視点でモノを選ぶ前田エマさんが、ご自身の私物とともに「モノの選び方」について綴る連載です。第7回目は“ミニスカート”について。

先日、確定申告をするために去年の領収書を整理していたら、この1年間に服を1万円分くらいしか買っていないことに気がついた。
5,000円くらいのパーカー(写真で着用)、2,000円くらいのミニスカート(写真で着用)、セールで3,000円くらいだったセットアップ。

去年は留学していて、日本と韓国を行ったり来たりしながら仕事をしていたので、当然、受けられる仕事は限られていた。
そして、学費や飛行機代などいつもと違う出費もあったので、お財布の紐を少しかたくしていたかもしれない。
それにしてもだ。一応モデルという仕事をしているのにも関わらず、あまりにも服にお金を使っておらず、少しガクンとした。服が見せてくれるトキメキが好きなのに、心が動くような服との出会いがなかったのだろうか。

できるだけ長く着られる、飽きがこなくて丈夫な、いい服を買いたい。けれど、この年齢だからこそ似合う服や、今のテンションに寄り添う服も着たい。
もともと貯金をする癖があり、毎週のように通帳記入をしては身を引き締めている。
しかし、短い人生。お金を貯めるのも大事だが、2度とやってこない季節があるわけで、楽しまないと損だとも思う。
そんなこんなで色々と考えてしまって、余計に服を買うのが難しくなって、やきもきしている今日このごろなのだ。

去年買ったパーカーは、留学していた学校の限定品で、胸もとに学校名が入っている。もっとたくさん着て、いい雰囲気にヨレヨレにしたい。
そういえば大学生の頃、ヨーロッパに留学していたときも、思い出に服を買った。雑誌の取材もさせていただいたヴィンテージショップで、チューリップ柄のワンピースを購入し、今も大切にとってある。

ミニスカートも韓国で買った。
韓国は“外見至上主義”と言われるが、留学中に街中を歩いていると、胸が豊かでなくても、お腹がぽにょっとしていても、足がスラッとしていなくても、それを隠さないで、今この瞬間に着たい服を着て、たのしんでいる人が多いように感じた。
その姿は眩しく、とても健全だと思った。
私も本当は、そんな服が着たかったのかもしれない。
何かをアピールするとか、誰かに見せるとか、そういうことではなく、ミニスカートが履きたくなった。

留学中、日本に一時帰国したある日、韓国の女性DJの方が、日本で行われた音楽フェスでのパフォーマンス中に性暴力、性被害を受けたニュースが飛び込んできた。
SNSを開くと、被害を受けた彼女に対する誹謗中傷がものすごく多く、特に彼女の服装を指摘し「自己防衛が足りていないから仕方がない」と、多くの日本人が書き込んでいた。

本当におかしな話だと思った。誰がどんな格好をしていようが、それが性暴力を受け入れることにつながるわけではない。
韓国では、性犯罪者が家の近くに引っ越してくると、近所の住民に通知が配達される。過去の性犯罪の内容、顔写真や名前、年齢や身長なども記載されているらしい。これは大きな犯罪抑止になっているだろう。
こういったことの積み重ねが、ミニスカートを楽しく履くことができると思える社会に繋がっているのかもしれない。
世界の性的コンテンツの約6割が日本で作られていると言われている。私たちはもっと、性暴力についても考えなくてはいけないだろう。

1992年神奈川県生まれ。東京造形大学を卒業。オーストリア ウィーン芸術アカデミーの留学経験を持ち、在学中から、モデル、エッセイ、写真、ペインティング、ラジオパーソナリティなど幅広く活動。アート、映画、本にまつわるエッセイを雑誌やWEBで寄稿している。2022年、初の小説集『動物になる日』(ミシマ社)を上梓。
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