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【女子旅 熊本県・阿蘇】草原の未来を守る! 食とアクティビティの体験レポート

  • 2024.4.16

熊本県を象徴する景色である、阿蘇の草原。夏には緑が波打つこの場所は、草原特有の植物や生き物の宝庫です。その草原を維持するために、毎年春に行われるのが野焼きです。阿蘇の草原と野焼きって何? 阿蘇ではどんな体験ができるの? 春先の、野焼きが終わったばかりの現地を訪れて調べてきました。

阿蘇の草原ってどう保たれているの? 草原学習館で聞きました

阿蘇の草原は、阿蘇五岳と呼ばれる山々のすそ野とカルデラ周辺部にあります。緑が波打つ真夏の風景は、皆さんも映像などで見たことがあるでしょう。この草原は、人の手が入っていない自然とは違い、農業や畜産など、人の営みと結びついて保たれている自然なのです。特に大切なのは、毎年春に行われる野焼きなのだとか。そんな草原の保全活動について学べる、草原学習館を訪れました。

館内には、阿蘇のカルデラの大きな模型があります。それを見ながらお話をしてくれたのは、阿蘇グリーンストックの増井太樹さん。阿蘇グリーンストックは、阿蘇の草原を守るボランティア活動に取り組んでいます。

カルデラの直径は約20㎞で、その中に4万7千人の人が住んでいます。カルデラの中は、水田も多い米どころで、昔は水田で働く牛馬が、草原の草を食べていました。しかし、農業の機械化にともなって、家畜の数は減少。牛馬に食べられなくなった草原はどんどん草木が成長して、やがては森になってしまいます。それを防ぐために毎年行われているのが野焼き。草原に火をつけることで森になるのを防いでいます。野焼きのあとすぐに、草の芽吹きがはじまり、夏には緑の草原になるのです。

実は、昔は日本の国土の10%は草原でした。しかし、農業や畜産の機械化で徐々に利用されなくなり、森になったり住宅地になった結果、今では、草原は国土の1%まで減少。多くの動植物が暮らす阿蘇の草原を守るには、私たちがそこで遊んだり、草原に生えるススキなどの植物をえさにしているあか牛を食べることが大切なのです。

阿蘇グリーンストック(草原保全活動センター内) ℡0967-32-3500 熊本県阿蘇市小里656‐1 開館時間9:00~17:00 無休
公式HPはこちら

気球に乗って、草原のうえを空中散歩しよう

photograph:Isamu Yamamoto

阿蘇のカルデラの全貌を知るには、空から眺めるのがいちばん。というわけで、人気なのが気球体験です。気球でのフライトは、朝日が昇る前から準備がスタート。早朝が一日のうちでいちばん風が穏やかな時間帯だからだそう。大きな気球が広げられ、ゴーッというバーナーの音とともにぐんぐんふくらんでいきます。ゴンドラに乗り込むとふわりと浮き上がって、ゆっくりと上昇し、上空40mへ。朝日に照らされる阿蘇のカルデラが、目の前に広がります。

ゴンドラはほとんど揺れないので、怖がりでも大丈夫! 上空から見下ろすと、外輪山に囲まれた阿蘇の地形がよくわかります。運がよければ雲海が広がる幻想的な光景を見ることもできます。

photograph:Isamu Yamamoto

気球は係留なので、どこかに飛ばされる心配はなし。ただし、風が強い日は中止になります。5分ほどの時間で、非日常を味わっては? パラグライダーの体験もあります。

photograph:Isamu Yamamoto

阿蘇ネイチャーランド 集合時間は6:00前後で季節により異なる 料金/¥2,500
公式HPはこちら

草原のパノラマを、馬と一緒にトレッキングしよう

草原に吹く風やざわめきを、間近に感じたいなら、乗馬体験がおすすめ。草原は牧野と呼ばれる地域資源でもあるため許可のない立ち入りは禁止されています。そんななかで、牧野の中で、乗馬ができるのが夢・大地グリーンバレーです。

ウエスタン風の建物で、乗馬体験の受け付け。気分も盛り上がります。

こちらにいる馬は、アメリカンクォーターホースという種類で、馬の方までの高さである鬐甲(きこう)が147㎝ほどの小柄な馬。小さいけれどパワーがあって心が広く、乗馬に向いている馬なんです。阿蘇の草原で多頭放牧されているため、馬は自然に上下関係を学び、人間の指示にも従ってくれます。

レクチャーを受けたら、さっそくトレッキングに出発! 基本的には馬は前の馬のあとをついて歩くので、細かい指示は必要ありません。馬に乗ると目線が高くなるので、草原の景色も広々と見えます。起伏の多い牧野での乗馬を楽しんで、自然と一体になりましょう。

夢・大地グリーンバレー
℡090-1773-3366
熊本県阿蘇市湯浦1674-18
料金/ロングトレッキング(約60分)¥13,200~
公式HPはこちら

赤身たっぷり! 草原でのんびり育ったあか牛をいただく

野焼きが終わったばかりの草原で、今回特別に企画されたのが、草原でのアウトドアダイニング。熊本市内で薪や炭火を使った料理を提供するレストラン.know(ノウ)の鍬本峻さんによる、スープから前菜、薪を使ったバーベキューなどの全7品をいただきました。

ドーンと吊るされている大きなかたまり肉は、阿蘇のあか牛。阿蘇の草原で放牧されている母牛から生まれ、おいしい野草をいっぱい食べて育った牛です。肉質は赤身が多く、うまみとやわらかさを兼ね備えています。一日40~50㎏の草を食べ、3~6㎞を歩くあか牛は、阿蘇の草原を保つのに欠かせない存在。私たちがあか牛を食べて、畜産業が振興することが、草原を守ることにつながります。

赤身のお肉を切り分けて、参加者みんなでいただきます。草原の風に吹かれながら、阿蘇のクラフトビールとともに、いただくうまみの強い赤身のお肉……至福の時間です。

あか牛のテールを煮込んだ、チーズ入りのリゾット。チーズの濃厚さとお肉のだしがきいて、おいしい! 体が温まります。

3月中旬の野焼きシーズンだったこの日は、特別に野焼きのデモンストレーションが行われました。冬枯れた草にはサッと火がついて燃え上がり、すごい迫力です。表面の草を焼くだけなので鎮火までは一瞬で、火が燃え広がらないように工夫されています。野焼きで表面の草がなくなることで、地下に埋まった芽生えや種に光が届き、芽吹きの春を迎えるのです。

草原ダイニングプラン 0967-32-3330(阿蘇温泉観光旅館協同組合) 料金/¥21,000~ ※時間帯、メニュー内容は体験時のプランと異なります。 公式HPはこちら  

今まで知らなかった阿蘇のこと、草原の過去と未来……。そんなことに思いを馳せる旅になりました。食やアクティビティ、美しい風景などさまざまな魅力が詰まった阿蘇地方。GWや夏休みに、出かけてみませんか?

text:Ema Tanaka
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