結婚をする・しない、子どもを産む・産まないは人それぞれで、考え方に違いがあるのは当然のことです。しかしそれが自分の大切な人を悩ませていることもあります。今回はひとりのシンママとその子どもたちにまつわる複雑な事情を知ってしまった、私の知人Nさんから聞いたお話です。
引っ越してきたシングルマザー
Nさんが当時住んでいた家の近くのアパートに、ある日4人の子どもがいる女性が引っ越してきました。
その女性の一番下の子とNさんの子が同じ保育園だったので、送り迎えで顔を合わせているうちに親しくなり、たまに会ってお互いの家庭や家族のことを話し合う関係に。
「私シングルなのよー。結婚歴ないの」
よく聞いてみると彼女はシングルマザーで、女手ひとつで4人の子どもを育てるため、忙しい毎日を送っている様子。
「子どもたちのお父さんと結婚することは考えなかったの?」
4人も子どもを作るぐらいだから、結婚という話も出たのではないかとNさんは思ったのです。
「あー、全然ないよ。だって4人とも、父親が違うから」
「えっ!?」
面白いから子どもを作る?
「結婚に興味はないけど、子どもだけは欲しいのよね」
よく話を聞いてみると、シンママが結婚を望まず、子どもができたらそれで終了という関係だったとのこと。
「4人もひとりで育てるの大変じゃない?」
「うーん、どの子の父親も養育費はくれるし、みんな顔が似てなくて面白いからいいじゃん」
シンママはNさんの質問に笑って答えました。
しかしシンママの子どもたちはどうやら学校や幼稚園で「お父さんが違う兄弟の子」とからかわれているらしいというのを、Nさんは他のママ友から聞きました。
成長した子どもたちは……
それから十数年後。
保育園を卒園してからNさんが引っ越したため、シンママと顔を合わせることがありませんでした。
しかしある日、ひとりで買い物をしているシンママとばったり会いました。
「久しぶり、元気?」
Nさんが声をかけると、シンママは複雑な表情。
「実は……」
なんと子どもたちは高校を卒業すると次々に家を出てしまい、誰1人として母親の元にはいないとのことでした。
「縁を切られたのよ。こんな家、ずっと嫌だったって言われたの。全員父親が違うことで、結構いじめられたみたい」
シンママはそう言って涙ぐみましたが、Nさんは何も言葉をかけることができませんでした。
父親が違う子を産んだシンママの選択が正しかったのか間違っていたかどうかは、本人と子どもたちにしかわかりません。
もちろん父親が違っても、仲良く暮らしている家族やきょうだいがいることも間違いありません。子どもたちに見放された寂しい老後にならないためにも、何か方法があったのではないかと思わずにはいられないのでした。
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:齋藤緑子