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子ども好きで結婚を意識した男性もいたが…30代後半で婚活を辞め一人で生きていく選択をした女性が得たもの

  • 2024.4.13

結婚をしない女性が増えている。彼女たちはどのような思いでその選択をしていくのだろう。会社員の傍ら文筆活動をするあたそさんは「結婚することと同じくらい、結婚しないことにもそれなりの覚悟がいる。それでも、周囲に惑わされることなく、自分らしく生きていけるのは、紛れもなく幸せのひとつの形だ」という――。

ベッドサイドの窓の前に立ち、大きく腕を広げてリラックスする女性
※写真はイメージです
結婚しない女性4人に1人

国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集(2023年)」によると、現在は約4人に1人の女性が結婚しない時代になっている。

結婚適齢期を過ぎてもなお、独身でいる女性は、もはや珍しい存在でもなんでもない。女性が寿退社をして専業主婦になるしかなかった時代も、25歳を過ぎた未婚女性をクリスマスケーキに例えて「売れ残り」と称する時代も、とっくに終わった。男性に頼らなくても、女性は自立して自分の人生を自由に選ぶことができる。女性がひとりでも生きやすい時代になっているのを肌で感じる。

「私も結婚しないんだろうな」と思うことが多々ある。いずれ、その約4人に1人のなかに私もカウントされるようになるのだろう。

今後も一人で暮らし、一人で死んでいく

例えば、私は家族と仲が悪く、幸せな家庭像がいまいち想像できない。両親からも愛されて育てられたという実感がないまま今まできてしまったから、そんな自分が誰かを愛せることなんてあり得るのだろうか。他者と生活をともにできるのだろうか。家族や家庭を新たに構築できるのだろうか。そもそも、人間関係でつまずくことがあまりにも多い。自分の抱えているものを確認するたび、「結婚しないのだろうな」と思う。

しかし、結婚適齢期もど真ん中にもかかわらず、焦ることもない。周囲の同世代の友達は、結婚し子どもを育て、35年ローンで家を購入し、夫や姑との関係に悩んだり、仕事と家事をいかにして両立させるか? に頭を抱えたりしている。その様子を端から見ていると、「私は、このままでいいのだろうか?」と思うことが多々ある。でも、これは決して結婚や子育てに対する願望には直結しない。多分、今後もひとりで暮らし、ひとりで死んでいくのだと思う。

でも、不安がないわけではない。このままひとりで生きていけるのだろうか? 本当に? たまに、どうしようもなく怖くなる。

ふと、「ほかの人は、どんな理由で結婚を選択しなかったのだろう?」と考えたことがある。書店に足を運んでも、インターネットで検索してみても、数値として未婚女性の実態を知ることができても、生の声を見聞きする機会はあまりにも少ない。そもそも、結婚や自身の人生について、誰かとじっくりと話し合うことすら乏しかったと感じる。

結婚や出産だけが女性の幸せなのか

この連載は、私と同じような独身女性たちの疑問や不安を解消するためのものである。PRESIDENT WOMAN Onlineのメールマガジンにてアンケートを実施し、独身女性483名からの回答が得られた。そのなかで、自分が結婚していないことに関しては、「よかったと思っている」(25.7%)、「後悔している」(13.0%)、「何も思わない」(61.3%))いう結果となっている。実感として「よかったと思っている」と回答した方が少ないように思う。皆、どのような結婚観を持っているのだろうか。

アンケート回答者のなかから取材可能の方にインタビューをしながら、その理由や結婚観、自身の幸せについて追及していきたい。果たして、結婚や出産だけが女性にとっての幸せなのだろうか? 結婚や出産をしなかったとして、一人前の大人になれないのだろうか? 私はまったくそう考えていない。

「将来、結婚するのか? したいのか?」という、誰しもが必ず考えたことのある問題を通じて、人生や将来を見つめ直し、深く考えるきっかけとしたい。

つながったウェディングリング
※写真はイメージです
結婚をしなくてよくなったので、気持ちが楽になった

2023年、婚姻数が90年ぶりに50万組を割る結果となった(厚生労働省『人口動態統計速報(令和5年12月分)』)。新型コロナウイルス禍の影響や経済的な理由が大きい。「結婚したい」と考えている人が、なかなか結婚までたどり着けない要因は、感覚的にも身に覚えがある。また、未婚化・晩婚化が進み、生活が多様になりつつあることに加え、「結婚は、してもしなくてもいいもの」と捉える方が体感として多くなったことも理由のひとつとして考えられるだろう。

50代前半・長崎県在住、セラピストとして働くKさんもそのひとりだ。現在自身が結婚していないことに対して「自分がしたくないことをしなくてよくなったので、気持ちが楽になった」という。

もともと、結婚願望が特別強かったわけではない。ただ、好きな人と一緒にいるための方法として、結婚ができればいいと思っていた。出産や子育てに対しても、特に希望はない。昔から自分が子どもを育てているイメージを持てなかったそうだ。

子どもは好きだ。親戚や友だちの子どもを見ていると、素直にかわいいとは思う。でも、自ら育てるとなると責任が伴う。幼少期から動物が好きで保護活動にも参加しているが、飼育を放棄された犬や怪我をした猫を見て胸を痛めることも多々あった。

もし、自分に子どもがいたとして、交通事故や事件に巻き込まれたらどうするのだろう。動物相手でさえ、これだけショックを受けるのだから、我が子に何かあったら精神的に耐えられない。将来的に、子どもはいなくてもいいと強く思った。

結婚はしなくてもいいと気付いた

それでも、24歳のときに結婚を意識した人とのお付き合いもあったそうだ。付き合っていた頃から気も合っていたし、3年ほどの交際期間のなかで「この先、一緒にいられたら結婚したいね」と口約束をしていた。そのうちに、結婚するものだと信じていた。相手は、Kさんと付き合っているときでさえ、デートに誘ってきたり、あからさまなアピールをしてきたりする女性が常にいるほどモテる人だった。

Kさんも彼にとても魅力を感じていた。だからこそ、いつも相手に合わせようとしてしまう自分がいる。付き合う友達も、考え方も、できる限り彼に合わせ続けた。しかし、そのなかで、一緒にいる時間が長くなればなるほど、自分らしさが失われていくような感覚になったという。結局、すれ違いの末に別れることになった。

海辺での失恋の様子
※写真はイメージです

破局後、失恋を忘れるために、合コンに参加したり友達に紹介してもらった人とデートを楽しむ機会は何度もあった。でも、うまくいかない。初対面の相手との価値観の違いや気遣いのなさに傷つき、無理をしている自分に気がつく。もちろん、自分のことを気に入ってくれる相手もいたが、どうしても心から好きにはなれない。交際や結婚に向かって頑張らなくてはいけないことに疲労感を覚え、30代後半ごろから出会いの場から遠ざかって「結婚はいいかな」と思うようになった。

周囲からは「跡継ぎになってくれる人」を求められた

もともと、周囲からは「跡継ぎになってくれる人じゃないと」「長男はだめだね」と言われるような家系であったし、交際相手も家族に認められる必要があった。特に父親は跡取りを連れてくるはずの長女であるKさんに異常なほど固執してきたという。

家からの呪縛から解放されたい。結婚しないと決断することは、ひとりで生きていくことを選択するのと同じ意味を持つ。それなりの覚悟がいるだろう。それでも、Kさんは結婚に対する必要性を感じなくなってから、肩の荷が下りた感覚になったという。

長崎の実家に戻ったときの違和感

30代前半になったころ、母親の介護をきっかけに地元・長崎県に帰った。

地元に戻って驚いたのは、自分と同じ未婚女性が周囲には誰ひとりとしていなかったことだ。同窓会に出席しても、「旦那さんが帰りを待っているんじゃないの?」「子どもはいくつなの?」と、結婚して子どもがいることが当然として扱われる。結婚していないことを告げると、怪訝な顔をされる。そんな風に扱われることが不思議でならなかったという。

Kさんは、10年ほど東京で働いていた経験がある。東京にいたときは周囲に結婚している人自体が少なく、未婚女性自体珍しいものではない。実際に、婚姻歴の有無で人の態度が変わることもないだろう。女性は結婚して子どもを産むものだという価値観や、未婚女性を変わった存在として扱うのも、田舎ならどこでも“あるある”な光景かもしれない。しかし、東京で過ごした10年間があるからこそ、Kさんのなかでの結婚観が変化し、結婚や子どもの有無で怪訝な顔をされることに対して違和感を覚えたのではないか。

自分だけのペースで生活できる幸せ

しかしながら、2020年国勢調査によると、女性の生涯未婚率(50歳時未婚率)は17.8%となっている。過去最高の数値といえど4分の3以上は人生で一度は結婚を経験しているため、確率論として結婚して子どもがいることが前提で話が進んでいくのは自然なことだろう。

友人たちとの会話の内容が子育ての悩みや家庭のできごと一色になり、一方的に話を聞いているだけになると、ときおり寂しさを感じることもあった。結婚生活の愚痴や不満も多い。そのなかで、「私は、きっと人と一緒に生活ができないんだろうな」と、考えたそうだ。

結婚して家庭を持つということは、生活をともにしなければならない。家にいる間は、ほとんどの時間を一緒に過ごす必要がある。パートナーとお互いに譲歩し合わなければならない場面もあるだろう。料理や掃除、洗濯の頻度も多くなり、自分だけの問題ではなくなる。子どもがいれば、さらに育児にも追われ、自分だけのリズム・スペースでの生活が難しくなる。

Kさんは、結婚した同級生の話を聞き、人と生活していく難しさを感じながら「自由な時間を持って、自分だけのペースで生活するのが好き」だと改めて思った。自分のリズムやスペースを守りながら生きていくことは、自分らしさを大切にすることにつながるのだと気付いたそうだ。

ひとりが好きだ。それほど苦ではない。もともと相手の望む姿に合わせがちなタイプだったからこそ、今は結婚せずに、ひとりで自由に生活ができていることに大きな幸せを感じている。

婚活を辞めることで得たもの

セラピストの仕事をするなかで、結婚し、子どもを持つ方の話を聞く機会も多い。改めて、日本人女性は自己犠牲の精神が強いと感じたそうだ。自分の時間や体力、精神力をすべて家族・家庭のために費やしている方は、あまりにも多いように思う。

自分が本当に何をやりたいのか? どういう風に生きたいのか? 何が悲しくて、うれしいのか? 配偶者や子どもと同じ生活をすることで、忘れてしまう人は多いのではないかとKさんは言う。家族の在り方や家庭に自分を順応させることができず、精神的な病気になってしまう人も今までたくさん見てきた。

今、自分ひとりの空間を持てている。飼育している猫2匹と自由な生活ができている。これからやりたいこと、好きなことを考える時間もお金も自分のために使える。

以前は、結婚するべきだと考えていた時期もあったが、結婚のための活動を辞めることで、精神的に楽になれた。自由気ままにすべてを楽しめる今の生活は、どうしても人に合わせてしまうKさんにとっての本当の幸せなのかもしれない。

結婚しないことへの覚悟

女性の幸せは、結婚して家庭に入り、子どもを産み育てること」と考える時代はとうに終わった。結婚は幸福に導くための手段にはなるが、結婚そのものが自分を幸せにするわけではない。結婚や出産、働き方などの考え方や価値観が変容し続けるなかで、「一体、自分にとっての幸せは何なのか?」「どんなことを大切にして生きていきたいのか?」を考え続けなければならない。

Kさんにとっての幸せは、結婚という形には当てはまらなかった。結婚し子育てをしている周囲の人との会話の内容に困ることも、家族や親戚から結婚へのプレッシャーをかけられたこともあった。結婚することと同じくらい、結婚しないことにもそれなりの覚悟がいる。ひとりで生きていくことが、それなりの不安も伴うだろう。それでも、周囲に惑わされることなく、自分にとって本当に何が大切なのかが明確になり、自分らしく生きていけるのは、紛れもなく幸せのひとつの形なのだと思う。

あたそ
文筆家
普段は会社員。たまにインターネット上であれこれ文章を書いたりトークイベントを開いたりしている。好きな飲みものは酒。著書に『女を忘れるといいぞ』(KADOKAWA)『孤独も板につきまして 気ままで上々、「ソロ」な日々』(大和出版)など。

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