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井浦新&三浦翔平、2人のイケオジ俳優が醸し出すたまらない魅力とは? NHKドラマ『光る君へ』第14話考察レビュー

  • 2024.4.12
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『光る君へ』第13話より ©NHK

吉高由里子が主演を務める大河ドラマ『光る君へ』(NHK総合)。平安時代中期を舞台に紫式部の生涯を描く。ついに兼家が鬼籍に入り、長男である道隆が後を継ぎ、まだ若い息子を蔵人頭に任命するなど、独裁が始まった…。今回は、第14話の物語を振り返るレビューをお届けする。(文・苫とり子)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価】
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【著者プロフィール:苫とり子】
1995年、岡山県生まれ。東京在住。演劇経験を活かし、エンタメライターとしてReal Sound、WEBザテレビジョン、シネマズプラス等にコラムやインタビュー記事を寄稿している。

『光る君へ』第14話より ©NHK
光る君へ第14話より ©NHK

まひろ(吉高由里子)は土御門殿からの帰りに道長(柄本佑)と鉢合わせる。2人は4年ぶりの再会だったが、お互いに軽く会釈をする程度でその場を立ち去った。しかし、内心は動揺を隠せない道長。そんな中、兼家(段田安則)から呼び出しが。

兼家は道長ら3兄弟に関白を辞し、出家することを告げる。さらに自身の後継者として、長男・道隆(井浦新)を指名。これまで兼家に尽くしてきた次男の道兼(玉置玲央)は納得がいかず激昂するが、決定は覆らない。

やがて兼家が逝去。跡を継いだ道隆は17歳の息子・伊周(三浦翔平)を一足飛びに蔵人頭に任命する。道長の検非違使の改革案も却下。さらには娘・定子(高畑充希)を中宮とし、皇后と並立させるために公卿たちを説得するよう道長に迫る。兄の独裁ぶりに道長は、「俺は何一つ成していない」と焦燥感に駆られながら月を見上げた。

時を同じくして、まひろも月の下で物思いに耽っていた。伊周の伴侶選びのために開かれた和歌の会に招待されたまひろは、久しぶりにききょう(ファーストサマーウイカ)と顔を合わせる。後日、屋敷を訪ねてきたききょうから志を問われるまひろ。

家族を捨てて女房として宮中に仕えたいというききょうほどの情熱はないにしろ、目標はある。それは、文字が読めない人を少しでも減らすこと。まひろはそのための一歩として、庶民の子供・たね(竹澤咲子)に文字を教えていた。しかし、ある時からぱったりたねが来なくなる。心配で家を訪ねたまひろは、たねの父親から「俺ら、あんたらお偉方の慰みものじゃねえ」と言われてしまうのだった。

『光る君へ』第14話より ©NHK
光る君へ第14話より ©NHK

「今宵、星は落ちる。次なる者も長くはあるまい」

安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)が宣言した通り、その日、一つの大きな星が落ちた。

ついに兼家が鬼籍に入った「光る君へ」第14回。庭園を一人で徘徊し、三日月を見上げるその顔は穏やかだった。だが、やがて月は赤く染まり、雷鳴が轟く。まるで一族の未来を暗示するかのような不穏さだ。老いによってほとんど正気を失っている兼家だが、その瞬間だけは以前の威厳を放つ。翌日、兼家が庭に倒れているのを道長が見つけた。

兼家の死はおそらく老衰であり、明子(瀧内公美)の呪詛によるものではないだろう。しかし、兼家は誰にも看取られず一人で逝き、その遺体は雨風にさらされた。それは呪詛がもたらしたものかもしれない。明子だけではなく、己の大義のために多くの人を苦しめ恨みを買ってきた兼家。

けれど、家の存続のために命を懸けてきたのは確かであり、それは兼家なりの愛情だったのかもしれないとも思う。死の直後、妾である寧子(財前直見)が詠んだ歌を口ずさみ、「あれは良かったのお。輝かしき日々であった」と言ったのも、自分を支え続けてくれた寧子への感謝を示そうとしたのではないか。立つ鳥跡を濁さずではないが、自分が亡き後のことも見据えて行動していた兼家はやはり偉大と言わざるを得ず、単なる悪人ではなかった。

そんな父の亡骸を抱きしめ、涙した道長。3兄弟の中でおそらく最も冷静に、かつ複雑な心境で父である兼家を見つめていたのは道長だ。尊敬、軽蔑、愛情、憎悪。さまざまな感情を滲ませる柄本佑の鳴咽に、もらい泣きしてしまったのは筆者だけではないだろう。

『光る君へ』第13話より ©NHK
光る君へ第13話より ©NHK

一方、自身の後継に道隆を指名した兼家に「この老いぼれが…とっとと死ね!」と吐き捨てた道兼。反抗期の子供みたいな暴言に笑うところではないのかもしれないが、思わず吹き出してしまった。

兼家の死後も喪に服すことなく、女中たちとどんちゃん騒ぎ。結局、妻と娘にも見放され、一人ぼっちに。完全に自業自得だけど、その哀愁漂う後ろ姿を見ているとなんだか気の毒に思えてきた。道兼の描き方には、どこか愛あるいじりを感じるのは筆者だけだろうか。

かたや兄である道隆は独裁を始め、露骨に身内を贔屓する。摂政になって初めての公卿会議で蔵人頭に任命した伊周をお披露目した道隆。「蔵人頭、参れ!」という一条天皇(柊木陽太)の宣言とともに公卿たちの前に現れた伊周は17歳とは思えないほど落ち着き払っている。その顔や佇まいが父・道隆とそっくりで驚いてしまった。

この間まで『おっさんずラブ-リターンズ-』(テレビ朝日系)で井浦新演じる和泉を、切ない恋心を滲ませる子犬のような瞳で見つめていたというのに。上司と部下から、父と息子へ。役柄は大きく変化しているが、井浦新と三浦翔平が交わす芝居には、二人だけにしかわからない阿吽の呼吸があるように見える。息の合ったやりとりをもう少し見ていたい気もするが、安倍晴明の宣告通り、道隆の治世も長くは続かない。暴走を極める道隆、その最期はどのように描かれるのだろうか。

『光る君へ』第14話より ©NHK
光る君へ第14話より ©NHK

第14話は、まひろとききょうのやりとりも印象的だった。伊周の伴侶選びのための和歌の会に招待された2人。彼女たちが呼ばれたのは道隆の妻・貴子(板谷由夏)の提案によるものだった。「わたくしたちは賑やかしですのよ、あほらしい」と、まひろ以外の人にも聞こえるような声で言い放つききょう。

さらには和歌の会に現れた伊周の妻候補たちについて、「よりよき婿を取ることしか考えられず、志を持たず、己を磨かず、退屈な暮らしもそうと気づく力もないような姫たち」と毒舌を炸裂する。そんな物怖じしないききょうの振る舞いに、まひろも少々引き気味だ。

一方で、ききょうはまひろのことに一目置いているように見える。文字が読めない人を少しでも減らしたいというまひろの志に関しては理解できないようだが、少なくとも男性の力に頼らず、己の力で道を切り開いていく同志と思っているのではないだろうか。

「私は私のために生きたいのです。広く世の中を知り、己のために生きることが、他の人の役にも立つような。そんな道を見つけいのです」

自己愛の中に確固たる信念がある。そんなききょうは愛すべきキャラクターだ。紫式部と清少納言はライバル関係にあったそうだが、本作における2人の関係はどうなっていくのか。引き続き注目していきたい。

(文・苫とり子)

 

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