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年を重ねることで生まれる女性のストーリーがある。梨花と振り返る「オトナミューズ創刊10周年」

  • 2024.4.9
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モデルを続けていく覚悟。梨花さんのこれまでとこれから

揺るぎないチームのサポートを得て、オトナミューズ創刊から10年という長旅でさまざまな困難を乗り越えてきた梨花さん。そして歳を重ねた今、彼女が見つめるその先にあるものは?

一緒に作品を作る「チーム」の有難さ
 
—どれも思い出深いのは承知のうえで、特に印象に残っているカバーはありますか? 梨花さんはカバー撮影への入魂度合いが桁違いですよね。撮影当日、現場に来て終わりじゃなく、どういうイメージで撮るのか、事前に何度も打ち合わせを重ねると伺いました。
だからヌケ感のあるような写真でも、実はめちゃくちゃストイックに撮影してたりする。

2014

—修行部屋みたいな感じですね。全然そうは見えませんが。
それはね、極限までモチベーションを持っていってるからこそ、できたものなんですよね。2015年7月号(❶)のこれは、フィルムで撮りました。光の作り方もキレイで、今見ても本当にいい。私、こういう路線もいけるんだ、って発見があったビジュアルです。

❶2015年7月号

2015

—編集部的にもターニングポイントで、外部からも反響が大きかったのは、東京で撮影した2018年9月号(❷)のモノクロビジュアルです。年齢の痕跡を消していない梨花さんの肌がとてもリアルで、美しくて。肌はレタッチしてツルツルにするのが当たり前、という時代に、よくぞこの表紙をやってくれた! と、称賛の声が上がったとか
自分自身の変化とどう向き合うのか……事実を受け入れて、整理していく方法は、時代によっても変わっていくもので。だからこそ、そのときのヒントになるようなものを、“今を生きる、今を表現する”という姿勢で見せられるといいですよね。梨花だからこれができる、と思ってもらえることや、そういうビジュアルを一緒に作るチームがいるっていうのは、本当に大きいことだなって。最近だと、2024年3月号(❸)も大きな意味をくれました。

❷2018年9月号

❸2024年3月号

—フレンチシックで、ガーリーさもあって。今の梨花さんだからこそ到達できた世界観ですよね。
これを見たときに「あ、私、まだモデルをしていてもいいらしい」って思えたの。ファンの方たちからもすごく評判がよくて、今だからできる表現のトーンを掴めた実感がありました。
—今そのように思えている梨花さんですが、この10年のあいだ、カバーガールとしての自信をなくしかけたり、迷われたりした時期もあったんですよね。
何度もありました。子育てもあるし、体調も優れないし、自分自身のキレイになりたいみたいな欲望も低下していて。「……こんなんじゃ無理だよ! カバーガールなんて!」ってどうしても思ってしまって。
—それでも続けてこられたわけですよね。どのようにしてご自身を奮い立たせていたんですか?
それはもう、チームのみんながハワイまで来てくれて、人のエネルギーをもらっていたから成立していたんだと思う。

2016

2017

2018

—そこからスコーンと抜けたのは、やはり昨年50歳になったタイミングで?
そう。子育てが一段落したのが大きいです。今は息子に対して「自分のことをやるから、ちょっとあっち行ってて!」って言えるけど、息子が小さなときはできなかった。誰よりも私自身がそういう自分でいたくなかったから。
—そうして今はモデルとしての自信もしっかりと手にされて。手探りで悩みながら、10年かけて撮ってきたカバーのバリエーションたるや、生きざまが刻まれているようで圧巻のひと言です。その多様な梨花さんのビジュアルを拝見するとまるで、正解がないと冒頭で梨花さんがおっしゃっていた、シンプルスタイルを探す姿勢そのもののように感じます。
正解があるわけじゃないというのが、正解というか。

2019

2020

2021

年齢を重ねるって、とても普通のこと
 
—さて、ここからはこれからのお話を。今後モデルとしてどんな表現をしていきたいと思われますか? 以前梨花さんが女性を年代別に特集した雑誌の企画に出演された際、一番心惹かれたのが60代の女性だった、っておっしゃっていましたよね。
そう。誰よりも私の目に素敵に映ったのは60代の女性だったんです。服に着られることなく、凛とした佇まいで、トレンチコートを圧倒的にかっこよく着こなしていました。そのときの感情は今でも忘れられない。
—「服が似合っている」とはどういうことなのか、考えさせられるエピソードですね。
ひとりの女性が年齢を重ねていきながら見せられるものがあるんだと、今でもとても強烈に私の中に残っています。

2022

—歳を重ねることで生まれる深みのようなものを、表現に滲ませていく。梨花さんにはこの先も、私たちのロールモデルとしてかっこいい歳の取り方を見せてほしいです。
そもそも、皆さんに今の私はどのように映っているのでしょうか? 今まで何十年もモデルをしてきたのでやはりモデル、なのでしょうか? 正直私自身、毎日撮影をしていたあのころからすると、ごく限られた撮影しかしていない、1年の半分以上を海外で子育てをメインとした今の生活からは、自分をモデルと思うのには少し無理があるんです。それでも、必要としていただける場所があるのなら、そこに一生懸命向き合うつもりです。今でも撮影前は、自分を奮い立たせて挑んでもいます。ポージングや表情のテクニックをどれだけ持っているかということに向き合ってきたときを経て、これから私が意識していくのはそこじゃないように感じています。……歳を重ねることでそのときそのときの女性のストーリーがある。

2023

—多くの大人の女性が、もちろん若い方も含めて、そんな風に生きる梨花さんを見て、自分が歳を重ねることに対する可能性のようなものを見出していらっしゃると思います。
歳は誰だってとるものじゃないですか。年齢を重ねるって、とても普通のことなんですよね。私がこうして考えることも、何も特別なことじゃなくて。ただ私はたまたま、モデルであるというだけなのではないでしょうか……なんてことを感じるこのごろだったりします。素の梨花を出しておしまいじゃなくて、そのときの理想の女性像を合体させて、作品にしていくことが大切。あくまでもオトナミューズの作品として素敵でありたいし、そのなかで私も素敵であれたらいいな。

photo:YUKI KUMAGAI styling:TOMOKO KOJIMA hair:NORI TAKABAYASHI[YARD] make-up:UDA[mekashi project] model:RINKA interview & text:AYANA
otona MUSE 2024年5月号より

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