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【新学期スタート】環境になじめない子どもに親ができることは?“カード”を使ったアートセラピーのやり方を心理カウンセラーが解説

  • 2024.4.9

はじめに

新しい環境に対応できない子どもにどう対応する?
新しい環境に対応できない子どもにどう対応する?

新しい学期がスタートしました。私たち親としては、子どもたちの健やかな成長を願うものです。ただ、どうしても新しい環境に馴染めず、モジモジし言いたいことを言えずに黙り込んでしまう子もいます。このような場合、そのままにしておくと、自分の思いや気持ちにフタをしたまま大人になってしまうかもしれません。では、どのようにすればよいのでしょう?

子どもとアートセラピー

アートセラピーとは、言葉では表現しきれない心の世界を、目に見える形にして、自分の内面への気づきを促したり、周囲とのコミュニケーションを深めたりする心理療法のことです。

アート(芸術)を通して自分を表現することにより、心身の健康を回復させ、さらに自己理解や成長につなげていくことが主な目的となります。

絵画というアートを通して、子どもたちが自由にノビノビとした時間を持つこと。その結果、なかなか言えなかったこと(自分の内面にあること)を、表現できたらいいですよね。この記事では、18枚のイラストを用いた【気持ちくんカード】を紹介します。これは、自分や相手の気持ちとうまく向きあえるように作成したものです。もちろん、親子でのコミュニケーションのツールとしても活用できます。では、早速この使い方をお伝えいたします。

「気持ちくんカード」の使い方

気持ちくんカード(18枚中の一例)
気持ちくんカード(18枚中の一例)

基本的な使い方です。18枚のイラスト(すべてを本記事の画像ギャラリーで紹介しています)と色鉛筆やクレヨン、カラーペンなど、色を塗れるものをご用意ください。なお、お子様がうまく言葉で表現できない場面、例えば友だちとうまく遊べなかった場面や、学校での不愉快だった場面などを想定して進めています。イラストは、A4サイズなど、彩色しやすいサイズでご活用ください。

(1)子どもに、今の気持ちに見合うイラストを1枚選んでもらいます。選ぶのは2~3枚でも大丈夫です。(2)選んだイラストに表情や髪の毛を描き込んだり、気になるところに色を塗ったりして、イラストを完成させてください。全身に彩色するのもOKです。(3)イラストに名前を付けてください。(4)実際にお子様にそのイラストと同じようなポーズを取ってもらいます。(5)この作業に取り組んでいるときや、同じポーズを取った際に感じたこと、また付けた名前の理由などを、ゆっくりとお子様と会話をしてみてください。取り組んでいただきたいことはこの(1)~(5)です。よかったら、親御さんもお子様と一緒に愉しむのもいいですよね。親が率先して取り組む姿を子どもも見て、学ぶことでしょう。

この他の使い方として、相手を想定して気持ちくんカードを選ぶ方法もできます。例えば、お子様の友だちが困っている場面など、その友人をイメージして似たカードを選ぶ方法です。そして、(1)~(5)の手順に取り組んでください。相手の立場に立つことや、相手の気持ちの理解の促進に役立ちます。

「気持ちくんカード」に取り組む際のお願い

このアートセラピーに取り組む際のお願いは次の点です。

・あくまでもお子様が主体です。アートセラピーの目的は、取り組む本人の自主性や主体性を育むことです。・先回りをしないこと。とかく「ここは何色で塗らないとダメでしょ」とか、「悲しいんだから涙も描こう」などのように、親が指示を出しがちです。多少時間はかかったとしても、お子様のやりたいように任せてみてはいかがでしょう。時間をかけた分、成長にもつながるとご理解ください。・カードは全部で18枚です。そのため、希望通りのカードが見つからない場合もあります。そのときは、似たカードを選ぶのもOKOKですし、お子様に自分でオリジナルのカードを描いてもらう方法もあります。・完璧や上手に描くことを目指さないでください。【気持ちくんカード】の目的は、完璧に上手く取り組むことではありません。自分の内面に目を向けること。そして、フタをしがちな自分の気持ちを開放することが一番の目的です。・間違いはありません。上記の(1)~(5)の手順はあくまでも1つの方法です。お子様が手順を間違えたとしても、それは間違いではありません。あくまでも試行錯誤です。そして、その過程で、より独創的な方法を見出したのなら、それでOKです。正解は1つではありませんから。・途中で描くのをやめてしまっても構いません。「なんで、最後までやらないの?」と叱るのではなく、取り組んだ意欲の方を評価してください。

親子で楽しむためには?

問い詰めないことが大事
問い詰めないことが大事

イラストができた後、ぜひ次のような会話をなさってください。・同じポーズを取ったよね、どんな感じがしたかな?・このイラストに名前を付けたよね。どうしてなのかな?・この「○○くん」(カードに付けた名前)、どんな気持ちなのかな?・「○○くん」の顔、どうしてこの表情なんだろう?・じゃあ、どうしたら元気になるのかな?・(例えば、胸の部分に色を塗った場合)どうして、ここだけ色を塗ったのかな?・お友だちが同じような気持ちのときは、何をしたらいいかな?

幾つか挙げてみました。どれもカードとの対話の促進を促すものです。ただ、詰問にならないようにご注意ください。答えにくい場合は、それ以上問い詰めないでください。普段なさっている会話の延長として、このカードも取り入れてみる、このぐらいの感覚でお子様との会話を楽しんでください。

途中で気分が悪くなった場合は?

このワークの中で、気分が悪くなってしまうケースも想定できます。取り組んでいる最中に、嫌なことを思い出してしまうケースなどです。このような場合、無理に最後まで取り組む必要はありません。それよりも、お子様の「安全・安心」を優先なさってください。ギュッとハグしてもいいですし、一緒に深呼吸をするのもOKです。そして、お子様の気持ちが落ち着き、取り組めるようであれば続けてみてください。

【図1】書いてる最中に気分が悪くなってしまったら…
【図1】書いてる最中に気分が悪くなってしまったら…

図1をご覧ください。例えば、このイラストのように胸に青色を塗っている最中に、気分が悪くなったと仮定します。この場合、イラストの青い部分に、一緒に手を当ててください。そして「ここがモヤモヤするんだよね」と声を掛けながら、ゆっくりとその部分を、さすってあげてください。実際に、お子様の胸に手を当てる方が効果的な場合もあります。「痛いの痛いの飛んでいけ~」と同じ要領です。先に深呼吸をし、落ち着いてから取り組むのもOKです。

さいごに

なかなか自己表現が苦手なお子様向けのアートセラピーとして、この【気持ちくんカード】を作成しました。途中でもお伝えしましたが、これが絶対正解という使い方はありません。今回ご紹介した手順も、あくまでも一つの方法で、まだまだたくさんの可能性を秘めています。これは、あなたのお子様も同じです。

子どもたちは、自分たちで使い方をドンドン工夫するものです。これが主体性や独創性を育てます。ぜひ、いろいろな方法を見つけてみてください。そして、できたら教えていただけると幸いです。この【気持ちくん】も、あなたのお子様と一緒に成長できたらと願っています。

(佐藤城人(さとう・しろと))

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