1. トップ
  2. エンタメ
  3. 「光に包み込まれるようなドラマに」キャスト陣が”満たされた”と感じたエピソードは? ドラマ『アンメット』制作発表レポート

「光に包み込まれるようなドラマに」キャスト陣が”満たされた”と感じたエピソードは? ドラマ『アンメット』制作発表レポート

  • 2024.4.9
  • 856 views
撮影:武馬怜子

杉咲花が主演のドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』(カンテレ・フジテレビ系)が4月15日(月)より放送開始。都内で行われた制作発表に、杉咲をはじめ、若葉竜也、岡山天音、生田絵梨花、千葉雄大、吉瀬美智子、井浦新ら主要キャスト7名が登壇し、作品への思いを語った。今回は、制作発表のレポートをお届け。(取材・文:苫とり子)
ーーーーーーーーーー
【著者プロフィール:苫とり子】
1995年、岡山県生まれ。東京在住。演劇経験を活かし、エンタメライターとしてReal Sound、WEBザテレビジョン、シネマズプラス等にコラムやインタビュー記事を寄稿している。

撮影:武馬怜子
撮影武馬怜子

『アンメット ある脳外科医の日記』は、講談社『モーニング』で連載中の漫画(原作:子鹿ゆずる/漫画:大槻閑人)を原作に、杉咲花演じる記憶障害を抱える脳外科医の主人公・川内ミヤビが目の前の患者を全力で救い、自分自身も再生していく新たな医療ヒューマンドラマだ。

冒頭、杉咲は「一昨年にプロデューサーの米田孝さんにお会いし、原作となっている漫画を映像化するにあたっての熱を帯びた思いを聞かせていただきました。そこから今日までこのドラマに関わる方々とアンメットについて何百時間も言葉を交わしてきましたが、いよいよ放送されるんだなと思うと息が速くなるような気持ちです」と現在の心境を語った。

続いて撮影現場の雰囲気について聞かれ、「すごく素敵な現場。みんな仲良しで、毎日現場に行くのが本当に楽しみです」と笑顔で答えた杉咲。一方で、今回の現場ではマイクが心臓の鼓動を拾うほどに緊張したそうで、「同じように良い緊張感を持ってお芝居に挑んでいる皆さんの姿を見て、それだけ役とナイーブに向き合っているからこそたどり着ける領域があるんだということを感じ、光を見つけられたような気持ちです」と、共演者たちに刺激を受けていることを明かした。

アメリカの大学病院からミヤビが働く丘陵セントラル病院に赴任してくる変わり者の脳外科医・三瓶友治を演じるのは、杉咲とは連続テレビ小説『おちょやん』(2020、NHK総合)や映画『市子』(2023)など多数の共演経験がある若葉竜也だ。

若葉が民放のテレビドラマに出演するのはレアなケースだが、今回のオファーを受けた理由について「米田プロデューサーの熱い思いに応えたいと思ったからです。あと杉咲さんから電話かかってきて『やるよね?』ってプレッシャーをかけられたので」と回答。それに対し、杉咲は「三瓶先生の役が若葉さんしかいないんじゃないかってくらいぴったりだと思って、気づいたら電話しちゃってました(笑)」と電話をかけた意図を明かした。

会見中、何度も息の合ったかけ合いを見せていた杉咲と若葉。そんな2人のコンビネーションについて、丘陵セントラル病院で救急部長の星前宏太を演じる千葉雄大も、「花ちゃんの屈託のない笑顔や、実はよく喋る若葉くんとの2人のかけ合いが場を温めてくれています」と語る。

それを受け、若葉は「杉咲さんは本当に頼りにできる座長。役者としても人間としても信頼しています」、杉咲も「若葉くんは人が疑わないようなところを疑って、人が見過ごすようなところに感動や幸福を見つける方だと思っていて。そんな若葉くんの感覚を信じているし、自分にはない視点で作品を捉えてくださるので心強い存在です」と互いに寄せている信頼の気持ちを打ち明けた。

撮影:武馬怜子
撮影武馬怜子

丘陵セントラル病院の看護師長で、病院内のいかなるリスクもミスも許さない“安全の鬼”津幡玲子を演じる吉瀬美智子は、原作キャラクターと同様に一つに束ねたヘアスタイルで登場。「いつもは撮影ギリギリにオファーをいただくことが多いんですが、今回は時間があったので、髪を伸ばして見た目を原作に寄せています」と役作りについて明かした。

ミヤビの主治医で関東医大病院の脳外科教授・大迫紘一を演じるのは井浦新。千葉以外の主要メンバーとは初共演となるが、「ここにいらっしゃる皆さんはドラマや映画はもちろん、音楽の分野でも第一線で活動している方々なので、一つひとつのシーンが刺激的です」とコメントした。

同じく関東医大病院の脳外科医で、一見すると物腰穏やかな好青年だが、上昇志向が強く本音が見えない綾野楓を岡山天音が演じる。そんな綾野の婚約者で、西島医療グループの最高権力者の娘・西島麻衣を演じるのは、元乃木坂46の生田絵梨花だ。

2人は昨年放送されたドラマ『こっち向いてよ向井くん』(2023、日本テレビ系)以来の共演となる。役の上では、愛のない政略結婚をする2人だが、撮影以外ではプロデューサーも交えながらお芝居について話し合っているそうで、岡山は「生田さんは色んなフィールドでお仕事をされている方なので、お話を聞いていて楽しいです」と語った。

そんな岡山と生田は2人だけの撮影シーンが多いが、最初の撮影には杉咲も見学に訪れたそう。岡山は当時の心境について「隅っこの方に杉咲花さんぽい人がいて、一気に芝居が硬くなりました(笑)」と振り返る。

それを受け、杉咲が「声かけるのは恥ずかしいので、そっと見てそっと帰ろうと思ってたらバレてました。圧力かけちゃったみたいですみません(笑)」と謝罪すると、岡山は「一番ハードなポジションなのに、その中でお休みにあて替える時間を僕らのシーンに顔を出しに来てくださって嬉しかったですし、色んな現場これまで経験させていただきましたけど、そんなことは初めて。まずそこで座長パンチを食らったというか、本当に魅力的な方だなと思いました」と杉咲の座長としての生き様を明かした。

撮影:武馬怜子
撮影武馬怜子

今回、主要キャストは実際の医療従事者から指導を受けながら、傷口を縫い合わせる縫合練習に当たったそう。しかし、クランクイン直前で擬似血管を使った吻合シーンも撮影することになり、杉咲はスタジオにこもりっきりで吻合練習に励んだとのこと。その上達具合について、側で練習を見守っていた若葉は「医療指導のお医者さんたちが度肝を抜かれるくらい」と明かした。

一方、「若葉さんはコツをつかむスピードがものすごく速くて、私が時間をかけてやっとできるようになった吻合も、『ちょっとやらして』って言われて貸した瞬間にできちゃったんですよ。本当にやめてほしい(笑)」と複雑な心境を吐露した杉咲。

すると、若葉は「僕は器用ですね(笑)」と素直に認めた上で、「ただ僕の場合は今のところ吻合シーンの撮影がないので、何のプレッシャーもなくできるんですよ。撮影となったら緊張との闘いになるので、やっぱりそんじょそこらの女優さんじゃ乗り越えられないんじゃないですか」と改めて現場で感じた杉咲の役者としての凄みについて話した。

井浦が演じる大迫は脳外科の権威だが、手術道具は一切現場にないそう。代わりに観葉植物の収集が趣味である大迫の教授室には緑が溢れている。そのため、「自分が何の教授かわからなくなる」という井浦。一方で、「僕も植物は好きなんですが、大迫教授が面白いのは枯れかけていたり捨てられていた植物を集めて、育て直すのが好きなところ。そういうの素敵だなって思いました」と自身が演じる役の魅力を語った。

医療秘書役として物語を俯瞰する立場にある生田は、「私は主要キャストの中で唯一医療従事者ではないので、吻合練習とかちょっと羨ましいなって思います(笑)」と吐露。また、「私が演じる麻衣は人間関係のところで少し視聴者の皆さんを惑わすキャラクターなので、この人何を考えているんだろうとか、なんでミヤビちゃんに対してきつい言い方をするんだろうとか、推察しながら楽しく見守っていただけたらなと思っています」と見どころをアピールした。

撮影:武馬怜子
撮影武馬怜子

直訳すると「満たされない」という意味を持つドラマのタイトルにちなみ、最近心が満たされたと思ったエピソードについて聞かれた杉咲は、記憶障害でその日の記憶が翌日には全てリセットされてしまうミヤビが日記に今日の出来事や患者の状態を記録するシーンで、漢字を間違えてしまったことを明かし、

「裏写りがあるので、裏のページもびっしり全部書き直さなきゃいけないことになって、かなり現場をお待たせする状況が生まれてしまったのですが、誰1人として嫌な顔をせず、『コーヒー休憩ですね』と監督がおっしゃって、スタッフさんたちがコーヒーを持ってきて、みんなでまったり待っていてくださって。なんて優しい現場なんだろうと思って心が満たされました」と撮影中の心温まるエピソードについて語った。

そんな杉咲から美味しい塩を紹介してもらったことを千葉が明かすと、そこに岡山も「僕も杉咲さんにお塩をおすすめしてもらって。美味しすぎて塩だけで舐めてます(笑)」と乗っかった。

生田は「ランチミーティングしているときにプロデューサーさんが話の流れで『ちょっとおかわり行ってきていいですか』って言ったんです。そこで人間的な部分が垣間見えて、誰でもお腹は空くし、美味しいものを食べたいんだなと思って心が満たされるというか、頑張れるなと思いました」と、ほっこりエピソードを明かす。

すると、杉咲は「そういうのすごい大事ですよね。これだけタイトなスケジュールでも、ご飯食べたり休んだりする時間をしっかり取ってくださるので本当に良い現場だなと思います」としみじみ語った。

そうしたハードな撮影現場の中でも欠かせないルーティンについて聞かれ、「僕は飼っているわんちゃんと朝晩散歩行くことくらいですかね」と回答した千葉。吉瀬もトイプードルを飼っており、「ちょっと若葉くんの髪型に似てる。この前、スタッフさんに若葉くんが寝ている写真を見せてもらったんですけど、うちの子みたいって思いました」と語ると、千葉も「言われてみれば、うちの子にも似ているので、ちょっとメンタルが疲れてきたら撫でさせてもらおうかな(笑)」と笑った。

さらに生田が「私もわんちゃんを飼っていて、目が若葉さんと似てるなと思って。今度から対峙するときは、癒されたいと思います」と話すと、若葉は「忙しくなりそうですね。頑張ります」と少し照れたようにはにかんだ。

最後に杉咲は、「アンメットは直訳すると満たされないという意味ですが、自分が恐怖に感じていることや拙いところをそばにいる人が想像し、理解しようとしてくれるだけで、自分のことをもう少しだけ受け入れてみようと思えたり、明日のことを前向きに考えてみようと思えるんじゃないかなって思っていて。そんな風に光に包み込まれるようなドラマになったらいいなと思っています」と思いを明かし、

「このドラマに関わる全員が血の滲むような思いで日々を過ごしていて、良いものになるなら進んで険しいの道を選ぶような気概のある現場でもの作りをできていることを幸せに感じています。今までも本当にたくさんのドラマが作られてきたと思うんですけど、その中でも『指折りの傑作を作りたい』なんて、恥じらいもなく言ってみたい気持ちです。ぜひ期待していただけると嬉しいです」と視聴者にメッセージを送った。

(取材・文:苫とり子)

 

元記事で読む
の記事をもっとみる