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「ダイヤモンドより硬く割れにくい」炭素構造の生成条件が判明!宇宙には既にある可能性

  • 2024.4.8
スパコンでスーパーダイヤモンドの生成をシミュレーションする
スパコンでスーパーダイヤモンドの生成をシミュレーションする / Credit:Mark Meamber(LLNL)_Supercomputer simulations of super-diamond suggest a path to its creation(2024)

ダイヤモンドといえば、「非常に硬い物質」として有名です。

これはダイヤモンドを構成するそれぞれの炭素原子が結び付きの強い構造で配列されているからです。

そして理論的には、この炭素原子の配列を変更することで、さらに硬い材料が作れると考えられています。

最近、アメリカのサウスフロリダ大学(USF)に所属する物理学者イヴァン・オレイニク氏ら研究チームは、スーパーコンピュータを用いたシミュレーションにより、ダイヤモンドよりも圧力に対して30%高い抵抗力を示す「BC8」と呼ばれる構造の生成条件が判明したと報告しました。

「スーパーダイヤモンド」とも言えるこの物質は、非常に高い温度と圧力の中で生成されると考えられており、他の惑星では「既に存在しているかもしれない」とのこと。

研究の詳細は、2024年1月25日付の科学誌『Journal of Physical Chemistry Letters』に掲載されました。

目次

  • ダイヤモンドを越える「スーパーダイヤモンド」
  • スパコンのシミュレーションが「スーパーダイヤモンド」の生成条件を示す

ダイヤモンドを越える「スーパーダイヤモンド」

ダイヤモンドにおける炭素原子の構造
ダイヤモンドにおける炭素原子の構造 / Credit:Wikipedia Commons_ダイヤモンド

ダイヤモンドの硬さは、炭素原子同士が作る共有結合に由来します。

各炭素原子が、原子間での電子対の共有を伴う結合により、隣接した原子と非常に強く結び付くのです。

つまりダイヤモンド特有の炭素原子の構造や配列が、その硬さを生み出していると言えます。

鉛筆とダイヤモンドは炭素原子だけで構成されていますが、硬さに大きな違いがあるのはそのためです。

炭素原子の構造の違いにより、硬さにも違いが生じる
炭素原子の構造の違いにより、硬さにも違いが生じる / Credit:Canva

ダイヤモンドは上記の理由で炭素原子の結び付きが非常に強く、簡単には削れません。

しかし鉛筆では、構造的に炭素原子の結び付きが弱く、力を少し加えるだけで簡単にほどけてしまいます。

鉛筆では、炭素原子の結び付きの弱さを利用して、紙に字を書くことができるようにしているのですね。

炭素原子の構造の違いで硬さが異なるのであれば、様々な構造を探求することで、ダイヤモンドよりもはるかに硬い構造を発見できるかもしれません。

では、ダイヤモンドより硬い物質、いわゆる「スーパーダイヤモンド」は存在するのでしょうか。

科学者たちは、これまでの研究により、「BC8(eight-atom body-centered cubic)」という構造が、ダイヤモンドを越える硬さを持つと考えています。

このBC8構造のスーパーダイヤモンドは、通常のダイヤモンドと比べて圧力に対して30%高い抵抗力を示す可能性があります。

しかし、炭素原子におけるBC8構造の生成は、これまでに成功していません。

今回、オレイニク氏ら研究チームは、スーパーコンピュータを使ったシミュレーションにより、炭素原子でBC8を生成するために何が必要か分析しました。

スパコンのシミュレーションが「スーパーダイヤモンド」の生成条件を示す

ダイヤモンドを越えるスーパーダイヤモンド(炭素原子のBC8)の生成に関してスパコンでシミュレートする
ダイヤモンドを越えるスーパーダイヤモンド(炭素原子のBC8)の生成に関してスパコンでシミュレートする / Credit:Mark Meamber(LLNL)_Supercomputer simulations of super-diamond suggest a path to its creation(2024)

BC8は、8つの原子からなる結晶であり、周期表で炭素のすぐ下にあるシリコンやゲルマニウムでは、既に生成されています。

そこでオレイニク氏ら研究チームは、それらの元素でBC8が生成されるための知識を利用し、炭素でBC8を生成するために何が必要か調べるためのコンピュータモデルを作成しました。

これには非常に膨大な計算が必要となりますが、彼らは世界初のエクサスケール(1秒間に100京回の演算)スーパーコンピュータ「フロンティア(Frontier)」を使用することで、生成シミュレーションを行うことができました。

その結果、チームはBC8のスーパーダイヤモンドの生成条件を予測することに成功しました。

彼らによると、BC8が生成されるのは、高圧・高温の狭い条件の中だけだという。

具体的には、6000K(約5727℃)の温度と、1050GPaの圧力が必要になると予測されています。

上図から分かる通り、さらに圧力を高めていくと、生成可能な温度の幅はいくらか広がると考えられます。

そして生成されるBC8のスーパーダイヤモンドには、通常のダイヤモンドに見られるへき開性(一定の面に沿って割れやすい性質)」が無いとも考えられています。

ダイヤモンドは非常に硬く傷つきにくいことで知られていますが、実はこのへき開性により、靭性(粘り強さ)はそこまで高くなく、ハンマーなどで叩けば比較的簡単に割れます。

スーパーダイヤモンドでは、いわばその弱点すら解消されると考えられており、研究チームによると、「これを作るには膨大な費用が掛かるだろうが、その強靭性は計り知れないほど貴重なもの」です。

宇宙のどこかに、天然のスーパーダイヤモンドが存在するかもしれない
宇宙のどこかに、天然のスーパーダイヤモンドが存在するかもしれない / Credit:Canva

では、実際にシミュレートされたスーパーダイヤモンドを生成することは可能なのでしょうか。

地球上の装置で、スーパーダイヤモンドを生成できるかどうかはまだ分かりません。

しかし、研究チームは、「炭素が豊富な太陽系外惑星には、スーパーダイヤモンドが存在する可能性がある」と述べています。

最近の観測では、炭素を豊富に含む太陽系外惑星の存在が示唆されています。

それらの天体はかなりの質量であり、その内部の炭素は膨大な圧力にさらされている可能性があるというのです。

遠く離れた惑星には、もしかしたら天然のスーパーダイヤモンドが眠っているのかもしれませんね。

参考文献

Supercomputer simulations of super-diamond suggest a path to its creation
https://www.llnl.gov/article/51016/supercomputer-simulations-super-diamond-suggest-path-its-creation

Supercomputer Cracks How To Create Material Harder Than Diamond: The “Super Diamond”
https://www.iflscience.com/a-supercomputer-opens-the-path-to-making-superdiamonds-73478

Rare ‘super-diamonds’ may already exist on other planets, and could be made on Earth, study hints
https://www.livescience.com/physics-mathematics/elusive-form-of-carbon-tougher-than-diamonds-created-in-supercomputer-simulation-for-1st-time-ever

元論文

Extreme Metastability of Diamond and its Transformation to the BC8 Post-Diamond Phase of Carbon
https://doi.org/10.1021/acs.jpclett.3c03044

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。

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