時計の針は真夜中を指しているのに、頭の中を心配事が駆け巡り、なかなか眠りが訪れない。私たちの大半は、この状況を間違いなく経験している。
このような状況では、あなたの脳が知覚された脅威(心配事)に反応し、実際に脅威にさらされているかのように闘争・逃走反応を発動させる。闘争・逃走反応は、人間が危険な状況を切り抜けて生き延びるために作られた神経生理学的反応。あなたの脳は入眠に必要なホルモン、メラトニンの生成も止めてしまう。その結果、眠れないことによる動揺で不安な気持ちが増幅し、闘争・逃走反応が収まらいという悪循環に陥って、ますます眠れなくなるというわけだ。
寝不足は“災難のもと”で、パフォーマンスや集中力の低下といった問題を引き起こす。では、不運にも眠れなかった日の翌日は、どう過ごすべきなのか? 米ハーバード大卒の臨床心理士で、キーノートスピーカーおよびパフォーマンスコーチとしても活躍するジョディ・ローウィンガー博士が教えてくれた。
眠れなかった翌日の過ごし方:
寝不足で頭がボーッとしているときは、次の方法で長い1日を乗り切ろう。
ルーティンを崩さない
疲れていても、普段のアクティビティとルーティンをキープしよう。いつもと時間に起きて、いつもと同じ時間に食べる努力を。
水分を補給する
体内の水分が不足すると疲労感を増幅するので、寝不足の日は頻繁に水を飲もう。
ヘルシーな間食をする
間食には、長時間にわたってエネルギーを供給する栄養価の高いスナックを。ナッツやヨーグルトはいいチョイス。甘いスナックは活力を奪うので避けるべき。
休憩を取る
日中は短い休憩をちょくちょく挟んで。数分間、呼吸に意識を向けるだけでも頭がスッキリするはずだから。
タスクに優先順位をつける
重要なタスクを先に終わらせ、大きなタスクは小さなタスクに分けるといい。
ガッツリ食べない
食事は軽めに、バランスよく。重たい食事は疲労感を増幅させる。
体を動かす
ところどころで軽く体を動かして、活力と注意力を高めよう。疲労感は短い距離を歩くだけでも十分和らぐ。
睡眠の質を高める方法:
長い1日を乗り切ったら、科学的な裏付けのある戦略で睡眠の質を高めよう。
受け入れる
最も効果的な方法の1つは、意外にも、眠れないことを受け入れること! 眠ることへの執着を手放して、眠れない自分を受け入れ、思いやるようにすれば、心身がリラックスして自然と眠りが訪れる。
睡眠衛生を改善する
まずは、規則正しい睡眠スケジュールをキープして、快適な(=涼しくて暗くて静かな)睡眠環境を作ること。カフェインとアルコールの摂取量を制限し、重たい食事を避けて、心身をリラックスさせるベッドタイムのルーティンを確立することも大切。
完璧主義を手放す
睡眠に関する完璧主義的な考え方(例:8時間しっかり寝ないと明日大変なことになる!)は不安を掻き立て、入眠を妨げる。完璧主義を手放せば、より穏やかな気分でベッドタイムを迎えられるようになり、寝付きがよくなる。
心配するのは明日にする
心配性と心配性がもたらす生理学的な影響は、心理的な戦略で和らげよう。例えば、ベッドの中で頭に浮かんだ心配事は全部紙に書いておき、自分の都合のいいときに対処する。また、心配事は自分でコントロールできるものとできないものに分類し、前者を解決することに専念しよう。
ストレスを管理する
マインドフルネス瞑想、漸進的筋弛緩法、ジャーナリングなどのテクニックでストレスを軽減すれば、就寝前の心身が落ち着いて睡眠の質を改善する。
スクリーンタイムを制限する
就寝前は電子機器の使用を避けて、メラトニンの生成を阻害するブルーライトにさらされないようにしよう。また、スマホは寝室に持ち込まないで。これまでの研究から、スマホがすぐそばにあると思うだけで休息やリラクゼーションが妨げられることが分かっている。
定期的な運動をする
1日の早い時間に定期的な運動を。ほぼ毎日、少なくとも30分は適度な運動をして、就寝時間が近づいたら激しい運動を避けるようにしよう。
根本的な問題に対処する
専門家の力を借りて、睡眠障害の一因となるような基礎疾患やメンタルヘルスに関する問題(不安、うつ病、依存症、トラウマなど)、好ましくない生活習慣(ストレス、食生活の乱れ、運動不足など)に対処しよう。
躍起になって眠ることから心身のセルフケアに自分の意識を移してあげれば、ぐっすり眠れるようになり、元気な毎日を取り戻せるはず。
ジョディ・ローウィンガー博士は米ハーバード大卒の臨床心理士で、キーノートスピーカーおよびパフォーマンスコーチとしても活躍する。不安、マインドセット、ヒューマンパフォーマンスに精通することで知られるローウィンガー博士は、カウンセリングサービス『The Anxiety Clinic』の創設者、ベストセラー『The Mind Strength Method』の著者、そしてポッドキャスト『Where to From Here?』のホストでもある。
※この記事は、オーストラリア版ウィメンズヘルスから翻訳されました。
Text: Jodie Lowinger Translation: Ai Igamoto