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溝端淳平さん「初心に返ることが、一番のモチベーションに」/舞台「カラカラ天気と五人の紳士」インタビュー

  • 2024.4.8

映像作品のみならず、舞台にも力を入れ、俳優としての幅を広げてきた溝端淳平さん。この春に挑むのは、劇作家・別役実さんの不条理劇の世界。稽古場の様子や手ごたえなど、稽古真っ最中ならではの、生の声をお届けします。

「俳優としての経験や感覚が、根底からリセットされるような感覚」。

━━現在、取り組んでいる舞台「カラカラ天気と五人の紳士」の稽古について、そう話してくれた溝端淳平さん。作品は懸賞で棺桶を当てた5人の紳士と、女性2人のやり取りを描いた別役実さんの不条理劇。演出を手がけるのは、舞台からドラマ、映画までボーダレスに活躍する気鋭の演出家・加藤拓也さんです。インタビューの日は、約1週間の本読みを経て、本稽古へと入ったタイミング。まずは本読みの感想から尋ねてみると……。
 
「今回の作品はメタファー的な要素が多く、解釈の仕方が本当に人それぞれ。役名も紳士1、紳士2、女1、女2…と書かれているだけですし、はっきりとした起承転結もない。この台詞はどんな意図で書かれているのか、ギャグなのか、それとも深い意味が込められた比喩表現なのか……? みんなで意見を出し合いながらこの戯曲の謎を解いていくような本読みでした。そのときの自分の感情や体調によっても捉え方が変わってくるし、読むたびに新しい発見があります」
 
━━溝端淳平さんとともに5人の紳士を演じるのは、堤真一さん、野間口徹さん、小手伸也さん、藤井隆さん……というベテラン勢。演技巧者たちによる掛け合いも楽しみなところですが、意外にも稽古場では「正解が分からず、雲を掴むよう」と苦戦している様子。
 
「正直、このメンバーですから、面白くすることはできるんです。僕も稽古が始まる前は、先輩からたくさん盗もう、自分も負けてられないぞ……と意気込んでいましたし。でも今は、その面白さを取っ払おうとしている段階。観る人に伝わるようにと分かりやすく表現したり、コントっぽい動きをすると、『それはやめてください』『何もしないでください』と加藤さんに言われてしまう。僕は蜷川幸雄さんをはじめ、厳しい演出で知られる方ともご一緒してきましたが、ある意味、今まででいちばん厳しいかもしれないですね。表現って何だろう? 自分って何だろう? と突きつけられる感じです」
 
━━「わかりやすく」「面白く」という、俳優としてはごく当たり前の感覚を取り払い、フラットに作品と向き合う。そうした経験を経て、「俳優として新しいフェーズに入れそうな気がする」という手ごたえも。
 
「『こうしたら面白くなる』というテクニック的なものをすべて取っ払って、『いかにその場に存在するか』という基礎に立ち返ることができるのは、非常に大きい経験になると思いますね」

俳優デビューから17年。仕事を続ける中でのモチベーションとなっているのが、「人の熱量」に触れること。

「作品に込められた思いを知ると、『自分も頑張ろう』と自然にスイッチが入るんです。一時期は、映画にしても舞台にしても、仕事のような感覚でしか観られないことがあって。素直に楽しめない自分がいやだったんですけど、今はいち視聴者として楽しみにしながら、他の作品も観られるようになりました。それと自分にとって大切なのが、初心に返ること。忙しくて休みたいと思っても、『和歌山で育って、他にやりたいことが何もなかった自分が、この世界に拾ってもらえたんだ』と思うと、本当によかったな、と。そうやって初心を取り戻すことが、いちばんのモチベーションになります」

#溝端さんに最近のこと、聞きました! Q&A

━━Q.最近観て、刺激を受けた作品は?
毎週楽しく見ていたのが、ドラマ「不適切にもほどがある!」。阿部サダヲさんって個性的な役を演じたり、一歩間違えたら嫌な感じに映りそうな言葉を言ったりしても、どこか愛くるしいですよね。僕はお会いしたことがないのですが、それはきっと、阿部さんの素敵な人柄やチャーミングさが根底にあるからなのかな、と。改めて魅了されました。
 
 ━━Q.稽古中のリフレッシュ方法は?
マンガを読みながら半身浴をすることです。途中で冷たいシャワーを浴びて、またお湯に浸かって……と交互浴をすると疲れが取れます。風呂上がりには大好きなアイスクリームを食べて癒されてますね。あとは漫才や漫談を聞いたり、ゲームをしたり。中学生の頃から好きなものが変わっていません(笑)。自分の“娯楽タイム”みたいなものは惜しみなく、しっかり取るようにしています。
 
 
 ━━Q.今後、「なりたい自分」のイメージ像はありますか?
「こうなりたい」というイメージはあまりないのですが、「こういう自分にはなりたくない」というのはあります。例えば、感覚が凝り固まっていたり、今いる場所で安穏としないように、とか。今回の作品もそうですが、一生懸命に一つの仕事と向き合って積み重ねていけば、意外なところで意外なチャンスが訪れたりするので、30代を経て、「どんな自分になるんだろう?」というのが楽しみです。

舞台『カラカラ天気と五人の紳士』公演情報

「カラカラ天気と五人の紳士」
作:別役実/演出:加藤拓也/出演:堤真一、溝端淳平、野間口徹、小手伸也、高田聖子、中谷さとみ、藤井隆   「棺桶」を担いでやって来た五人の紳士たち。懸賞のハズレくじでもらったという棺桶を役立てるには、一人が死んで棺桶の中に入らねば、と五人の議論が始まる。そこへ同じ懸賞に当選した二人の女性が現れ……。   ◎東京公演
2024年4月6日(土)~26日(金)シアタートラム ◎岡山公演
2024年5月2日(木)~4日(土・祝)
岡山芸術創造劇場 ハレノワ 中劇場   ◎大阪公演
2024年5月7日(火)~11日(土)
梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ   ◎福岡公演
2024年5月15日(水)・16日(木)
キャナルシティ劇場   ◎問い合わせ:シス・カンパニー 03-5423-5906(平日11:00~19:00) https://www.siscompany.com/karakara/ ※小学生未満のお子様はご入場いただけません。 ※当日券販売方法は公演サイトにてご確認ください。  

Profile

溝端淳平

みぞばた・じゅんぺい/1989年生まれ、和歌山県出身。2006年、第19回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストでグランプリを受賞。翌年にはドラマ「生徒諸君!」で俳優デビュー。2008年、映画『DIVE!!』で映画初主演を果たす。近年の出演作に大河ドラマ「どうする家康」、「何曜日に生まれたの」、Huluオリジナル「君と世界が終わる日に」、「恋する警護24時」、舞台『毛皮のヴィーナス』など。

[衣装クレジット]ニット¥50,600/ザ ヴィリディアン(ザ ヴィリディアン)、その他スタイリスト私物
photograph:Chihaya Kaminokawa styling:Ryo Kuroda hair & make-up:Miho Kai text:Hanae Kudo
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください

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