「メシマズ」とは?
「作るメシがマズイ」の意。ネットの世界では「味が極端にマズイ」「見た目も味もひどい」など、激しいものを指すことが多いですが、この連載では「料理歴はそこそこあるのに味が微妙・たまに成功するけれど、だいたいおいしくない」といった意味で使用しています。
【登場人物】
教えてくれるのは…
料理研究家
小田真規子さん
著書やテレビ出演多数! 長年第一線で活躍しているプロ中のプロ。料理初心者にも寄り添ってくれる、手取り足取りなレシピに定評あり。
教わるのは…
エディター オギ
料理歴は大学時代から一応10年以上の独身アラサーエディター。健康や美容に興味はあるが、基本ズボラ。
マンガでわかる「カボチャの甘煮」の作り方
カボチャは煮崩れしやすい? 身と皮がバラバラに!
オギ
前回の「肉じゃが」で煮物料理は克服できた!と思ったのですが、まだ「カボチャの甘煮」がありました……。煮込んでいると、皮と身が生き別れてしまったり、身の上の部分がドロッとして煮崩れかかったり。ひどいときにはポタージュ化することすらある有り様でして。
小田先生
今日は、そういった惨事は起こらないと思います(笑)。煮崩れしないポイントは3つあります。
1.余熱を使って火を通す
2.砂糖の代わりにみりんを使う
3.鍋ではなくフライパンで煮る
オギ
余熱!? 肉じゃがと一緒なんですね。
小田先生
皮と身が剥がれてしまう原因は「火の入りすぎ」。最後は余熱を使って火を通すことで、煮崩れが防げます。
オギ
肉じゃがのときもそうでしたが、「煮えるまでとにかく煮込めばいいよね?」としか考えていませんでした。それに甘煮=砂糖を使うと思っていましたが、今回はみりんなんですね。
小田先生
甘味を加えるだけなら砂糖でもいいのですが、みりんには野菜の表面をコーティングしながらカボチャの繊維を引き締め、煮崩れを防ぐ働きがあるんです。
オギ
知らなかった……。あと、煮物にフライパンというのも意外すぎます。
小田先生
煮汁の対流が鍋に比べて少ないのでカボチャが動かず、煮崩れを起こしにくいんです。メシマズさんでも安心な、煮崩れしにくいレシピはこちらです!
*カボチャの甘煮*
■材料(2人分)
カボチャ:1/4個(300g)
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みりん:大さじ3
しょうゆ:小さじ1
塩:小さじ1/2
■作り方
1 カボチャはスプーンで種とワタを除き、ところどころ皮をむいて3~4cm角に切る。
2 直径約20cmのフライパンに水1/2カップ、Aを入れて中火にかける。煮立ったら、カボチャは皮を下にして重ならないように並べ入れる。
3 再び煮立ったら弱火にし、水で濡らしたキッチンペーパーをかぶせ、さらにフタをする。汁気がほとんどなくなるまで8~10分煮る。竹串を刺してスッと通ったら、火を止める。フタを外し、そのまま約15分おいて味をなじませる。
煮崩れ防止はワタ取りから始まっていた!
小田先生
まず、カボチャの種とワタをスプーンでキレイに取り除きます。
オギ
先生のカボチャ、キレイすぎませんか? 表面がなめらかになるまで、何度も丁寧にワタを取るんですね。
小田先生
表面がデコボコだと引っかかりができて煮崩れしやすいので、ツルツルにしておくといいですよ。
オギ
いつも、繊維みたいなピロピロが浮いているのはなんでかなと思っていましたが、ワタをちゃんと取り除いてなかったからだと気が付きました……。
小田先生
一つ学んだところで、カボチャの皮をところどころ落とします。ランダムでOKです。
オギ
思ったより、たくさん皮を落とすんですね。
小田先生
硬い皮を落とすことで火が通りやすくなるので、煮る時間が短くて済み、煮崩れ防止になるんです。盛り付けたときの見映えもよくなります。
オギ
いつもカボチャを切るのが大変で、身の危険すら感じます(笑)。
小田先生
私もですよ。だから私は、身の厚いところではなく、薄いところから切り始めるようにしています。最初は小さな力で切り始めて手を慣らし、徐々に力を込めていったほうが切りやすくなるんです。
オギ
なるほど! いつも果敢に、一番厚い真ん中から切り始めていました……。
小田先生
それで難なく切れるならいいんですけどね。火の入り方にバラツキが出ないよう、できる限り形は揃えましょう。厚い部分は、ある程度切ってから小さく切り分けると、形が揃いやすいです。薄い部分は気持ち大きめに切りましょう。
オギ
思っていたより大きめに切るんですね!
小田先生
肉じゃがもそうでしたが、芋類は大きく切って煮たほうが、失敗しにくいんです。火を早く通そうと小さく切ると火通りが早すぎ、身全体が一気に煮崩れすることに。その点、大きく切っておけば、煮崩れも部分的にしか起こらないので、見た目の美しさも損なわれにくいんです。
オギ
カボチャは水にさらさないんですか?
小田先生
ジャガイモと違って、カボチャはでんぷん質が表面に出てきにくいので、さらさなくても大丈夫ですよ。
火の通し方を見直すだけで、ビジュアル大優勝!
小田先生
切り終わったら、煮ていきましょう。まず、フライパンに調味料を入れます。煮崩れ防止効果のあるみりんは、大さじ3と多めにするのがポイントです。
小田先生
味付けは、みりんと塩だけでもいいのですが、今回は香りづけにしょうゆも加えます。
小田先生
調味料を入れたら中火にかけてひと煮立ちさせ、みりんのアルコールを飛ばします。
オギ
よく「ひと煮立ち」とレシピに書いてありますが、「どうせ煮るんだから、ひと煮立ちって必要なのかな」と思ってしまう自分がいます。
小田先生
必要です! 煮崩れを防ぐには、カボチャに火を入れる時間をできるだけ短くしたいんです。カボチャを入れてからアルコールを飛ばそうとするとそれだけ長く煮ることになるので、前もってアルコールは飛ばしておいてほしいんです。
オギ
毎回思いますが、本当にどんな工程にもちゃんと理由があるんですね。
小田先生
レシピには、一つとして無駄なことは書かれてないんですよ。調味料が沸騰したら、皮を下にしてカボチャを入れます。
小田先生
並べたら、もう一度沸騰させましょう。カボチャは重ならないようにすること。重ねてしまうと、煮崩れの原因になるんです。
オギ
この時点で、私が作るのと全然違う……。見た目が美しすぎます。ただ、ひとつ気になることが。カボチャが煮汁からはみ出して「こんにちは」しているんですが、これでどうやって味が染みるのか、謎すぎます。
小田先生
大丈夫ですよ。沸騰したら、落とし蓋代わりに2枚重ねて濡らしたキッチンペーパーをかぶせます。濡らしておくことで、キッチンペーパーを伝って煮汁が上がってくるので、はみ出したところまでじゅうぶん味が行き渡るんです。
小田先生
カボチャをつぶさないよう、やさしくスプーンでキッチンペーパーを煮汁になじませましょう。
小田先生
さらにこの上に蓋をして、弱火で煮込みます。フライパンは煮汁が蒸発しやすいので、ずらさずきちんと蓋をしておきましょう。8~10分ほど煮込んだら、竹串を刺して火の通り具合をチェックします。
小田先生
竹串で火の通りを確認します。「竹串はスッと通るけど、少し硬いかな」くらいの状態で火を止めてOKです。蓋を外した状態で15分おき、余熱で火を通しながら味をなじませ、盛り付けて完成です。
オギ
蓋は外したほうがいいんですか?
小田先生
蓋を外すのは、火が通りすぎて柔らかくなるのを防ぐため。余熱が徐々に下がってく過程で味が落ち着き、形も崩れにくくなるんです。
完成!
小田先生
本当は皮の部分を面取りして角を落とすと、さらに崩れにくい&味が染みやすくなるのですが、今回はメシマズさん仕様の簡単レシピということで省きました(笑)。
オギ
まったく煮崩れてない! 皮も剥がれておらず、変なピロピロも見当たらず、「美しい」のひと言です。皮も身も硬すぎず、やわらかすぎず、歯ごたえがちょうどいい! しょうゆ少なめだからか、味わいも料亭みたいに上品です。
【今回の学び】煮る時間を守れば、見た目も歯ごたえも文句ナシの出来栄えに!
いつもポタージュっぽく煮崩れているカボチャを見慣れていた&食べ慣れていたので、見た目の美しさ&絶妙な歯ごたえに感動しました! 肉じゃがのときもそうでしたが、ちゃんとした歯ごたえのある煮物って、本当においしいですね。「火が通ればいいんでしょ?」と煮物を舐めていましたが、煮る時間や余熱で火を通していく時間をちゃんと計るのって大事なんだなと実感した次第です。家でも作ってみたら、自分史上最高の美しい煮物が完成しました!
次回予告:サバの味噌煮
撮影/国井美奈子 監修/小田真規子 イラスト/大窪史乃 取材・文/伊藤彩子