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「すべてが佐藤になる」夫婦同姓を維持すると2531年日本人はすべて佐藤姓に?東北大が試算

  • 2024.4.5
500年後には日本人の名字がすべて「佐藤さん」になる?東北大が試算
500年後には日本人の名字がすべて「佐藤さん」になる?東北大が試算 / Credit: canva

西暦2531年の未来、日本人はすべて「佐藤さん」になる…

そんな冗談のような研究報告が、東北大学 高齢経済社会研究センターの吉田浩(よしだ・ひろし)教授により発表されました。

現在日本では、家族のあり方や社会的な混乱防止などの目的で夫婦同姓制度が採用されています。

これは結婚した夫婦が夫または妻の姓に統一して同じ姓を名乗ることを指しますが、これを繰り返していくと割合の多い姓がだんだん増加していくことになります。

実際、現在の日本国内では最も多い名字「佐藤」姓が、夫婦同姓の制度により年々増加の一途を辿っています。

吉田氏はその増加率から単純計算をしたところ、約500年後の2531年には日本人に占める「佐藤さん」の割合が100%になると算出しました。

夫婦同姓制度については、現在さまざまな議論がありますが、これはちょっと違った角度から夫婦の姓について考えるきっかけになるかもしれません。

目次

  • 日本に「佐藤さん」はどれくらいいる?
  • 試算の結果、約500年後に日本人は全員「佐藤さん」になる⁈
  • 「選択的夫婦別姓を考えるきっかけに」

日本に「佐藤さん」はどれくらいいる?

日本には今、全部で約10万種以上の名字(姓)があると言われています。

その中で最も人口の多い姓が「佐藤さん」です。

佐藤姓の由来としては、平安時代に栃木県の佐野で武将として活躍した藤原秀郷(ふじわらのひでさと)に遡るといわれています。

藤原秀郷は、平将門の乱(935年)を鎮めたとして勇名を馳せました。

そこで彼の子孫たちが藤原秀郷の末裔であることを示すために、「佐野の藤原氏」を略して「佐藤」の姓を名乗り始めたという説が有力です。

藤原秀郷を描いた絵図(月岡芳年画『新形三十六怪撰』より)
藤原秀郷を描いた絵図(月岡芳年画『新形三十六怪撰』より) / Credit: ja.wikipedia

2023年時点の調査によると、佐藤さんは日本人全体の1.5%を占めており、合計で約183万人いると推定されています。

実に約70人に1人が佐藤さんとなっており、西日本よりも東日本、特に東北の地域に多いとのことです。

佐藤さんに次いで多いのが「鈴木さん」で約177万人、その次が「高橋さん」で約138万人、その後に「田中さん」の約131万人、「伊藤さん」の約105万人が続きます。

また現在の日本では、民法第750条により、結婚時に夫または妻いずれかの名字に統合するのが決まりとなっています。

そのため、一般的な確率からメジャーな名字のグループ(=佐藤さん)と結婚するケースが多くなり、これを繰り返していくと長い時間を経て「佐藤姓」に収斂していく可能性があるというのです。

実際に2022年〜2023年の1年間で佐藤さんの人数は約0.8%増えていることが分かっています。

では、このペースで佐藤さんが増え続けていくと、日本人の名字はどうなるのでしょうか?

試算の結果、約500年後に日本人は全員「佐藤さん」になる⁈

今回の試算シミュレーションは、選択的夫婦別姓の法制化を目指して活動する一般社団法人「あすには」と、その活動に賛同する団体「Think Name Project」の発案で始まりました。

チームは本格的な試算を行うために、東北大学 高齢経済社会研究センターの吉田氏に依頼したとのことです。

試算には、政府が発表している統計データや日本の名字の99%を網羅しているウェブサイト「名字由来net」のデータが用いられました。

吉田氏によると、国内人口に占める佐藤さんの割合は毎年0.83%のペースで増えているといいます。

そこでこの伸び率をもとに、現行の夫婦同姓の法制度がこのまま続くと仮定して単純計算してみました。

その結果、国内人口に占める佐藤さんの割合は約400年後の2446年時点で50%、そして約500年後の2531年時点で100%に達すると算出されたのです。

つまり、2531年の日本はどこもかしこも「佐藤さん」で溢れかえっている状態になるという。

この試算結果について、吉田氏は「どんどん佐藤さんが増えていくと、非常に不便になる。裁判で原告も佐藤さん、被告も佐藤さん、裁判長も佐藤さん、弁護士も佐藤さん。『判決、佐藤氏の言うとおりとする』どっちが勝ったの?みたいな」と冗談めかして話しています。

では、どうしてこのようなユニークな試算シミュレーションをしようと思ったのでしょうか?

「選択的夫婦別姓を考えるきっかけに」

Think Name Projectの石塚啓(いしづか・さとし)氏は「日本は世界で唯一、結婚時に名字を変えなくてはいけません。そして、改姓の95%が女性と大きく偏っている」と話します。

日本では年間に約50万組が結婚し、その過程で名字の多様性は着実に減っており、すでに無くなってしまった名字も少なくないという。

その中で石塚氏らは、選択的夫婦別姓の導入について人々に考えてもらうきっかけになればと思い、今回の試算シミュレーションを発案したそうです。

試算を担当した吉田氏も「名字にはその地域の文化や歴史があり、名字の存続は必要ではないか」と考えています。

名字について考えるきっかけに
名字について考えるきっかけに / Credit: canva

とはいえ今回の結果は、あくまでも単純計算にもとづくシミュレーションであり、本当に2531年には日本人全員が「佐藤さん」になることはあり得ないでしょう。

研究者も調査報告の中で、

「この推計は数々の仮定のシナリオに基づく暫定的試算であり、確定した将来を示すものではありません。

試算に用いた『佐藤姓』は現行の制度の『見える化』のためのサンプルであって、『佐藤姓』そのものに対する何らかの評価をするものではありません」

と注意書きをしています。

また名字とは別に、現在の日本ではかつてないペースで少子化が進んでおり、人口が減少の一途を辿っているという大きな問題があります。

2531年に全員が「佐藤さん」になる前に、日本人自体がどれくらい残っているのかが危惧される状況です。

現実的な問題を考えると、500年後には佐藤さんでさえも存亡の危機に陥っているかもしれません。

参考文献

日本における佐藤姓増加に関する推計方法と結果について(PDF)
https://think-name.jp/assets/pdf/Sato_estimation_yoshida_hiroshi.pdf

Everyone in Japan could be named “Sato” in 500 years, professor warns
https://www.zmescience.com/science/news-science/everyone-in-japan-could-be-named-sato-in-500-years-professor-warns/

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

ナゾロジー 編集部

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