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人気アニメに描かれた都電の表象とは?―大塚の聖地巡礼レポート

  • 2024.3.28

「アニメツーリズム」を国が推進しはじめて早数年。豊島区もまちづくり戦略としてアニメ・マンガゆかりのスポットと連携を強めています。作中でこどもの秘密基地や止まり木として描かれている場所のひとつが「都電の保存車両」。新たに内部公開が開始された都電とその歴史について都市商業研究所の若杉優貴さんがレポートします。

「アニメの聖地」となった新大塚駅近くの南大塚公園

東京メトロ丸ノ内線新大塚駅の近くにあり、近年は「アニメの聖地」としても知られる豊島区立南大塚公園(大塚南公園)。この公園に「ちょっとした変化」があり、アニメの名場面を再現できるようになったといいます。果たしてその変化とは――実際に公園を訪れてみました。

「バンドリ!」に登場した都電6162号

豊島区立南大塚公園があるのは、丸ノ内線新大塚駅から北東に5分ほど歩いた場所。JR大塚駅や、都電荒川線の大塚駅前停留所からも歩いて6~7分ほどです。

この南大塚公園が舞台となった作品とは、2015年からアニメ・ゲームなどで展開されている『BanG Dream!』(バンドリ!)。バンドリ!はガールズバンドを結成した女子中高生たちの成長を描いたメディアミックス作品で、作中では登場人物2人の回想シーンで小学生のときに初めて一緒にライブをした場所として南大塚公園が登場。公園に保存されている都電6162号の車内で演奏する姿や、都電の前で思い出を語る様子などが描かれているほか、スマートフォンリズムゲーム『バンドリ!ガールズバンドパーティ!』でも都電の前で仲良く焼き芋を食べる姿が登場しています。

バンドリ!の作中では南大塚公園の遊具なども再現されていますが、実際の南大塚公園にある都電6162号は作中とは違って金網に覆われており、最近は車内に入ることもできなくなっていました。

南大塚公園に保存されている都電6162号。「バンドリ!」作中に登場する電車ですが、実際には作中とは違い金網に覆われています。(写真:若杉優貴、公園敷地外より撮影)

この都電6162号は都電のなかで最も多い290両が製造された「6000形」のうちの1台で、日本車輌製造で1949(昭和24)年に製造されたもの。都心にあった青山車庫(現在は国連大学)や、現在も存続している荒川車庫などを経て1971年に禁止堀車庫(現在は丸井錦糸町店)で廃車となり、1971(昭和46)年に南大塚公園(当時は大塚南公園)へとやってきました。

ちなみに廃車当時の都電の運賃は大人20円均一(現在の都電は170円均一・IC利用168円)だったとのこと。その後、1990年代に再整備された際に現在の上屋とともに「都電ものしり博物館」という看板が付けられたものの、博物館としては使われておらず、残念ながらライトなど部品の脱落も目立ちます。

都電の車内で「バンドリ!」名場面が再現できるように

さて、冒頭に書いた通り、この南大塚公園に「ちょっとした変化」が起きました。その変化とは昨年(2023年)夏から「都電の車内公開日が設けられた」ということ。都電の車内公開日は、原則として毎週水曜日の9時から17時(11月から3月は16時まで)のあいだのみ。この時間帯ならば、作中で描かれたように「車内でギターを弾く」気分を味わうこともできるという訳です。

実は、『バンドリ!』のアニメ放映中は6162号の車内に入れなかったためか、作中で描かれた都電の車内は6000形とは別の形式のものでした。6162号の車内は一部の部品が撤去されているほか、座席のシートが木製のベンチに変えられているものの、長いあいだ立ち入り禁止となっていたためか比較的綺麗な状態。ベンチに座って写真を撮ることもできます。案内板によると廃車となったのは今から53年前の1971年のこと。木製の窓枠など、意外にも(?)多くの部品が残っていました。

6162号の車内公開が始まったのと同じ2023年には、文京区立「神明都電車庫跡公園」でも保存されている都電6000形6063号の車内公開が始まりましたが、6063号の車内外は1970年代当時に忠実に復元されています。アニメの聖地として注目を浴びる6162号も、今後再整備されることはあるのでしょうか。

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なお、南大塚公園は住宅街のなかにあり、また小さな子供たちも多く訪れる場所です。実際にギターを持って公園に行く場合は、周りの人への配慮をお忘れなく。

豊島区立南大塚公園。最近はアニメの「聖地巡礼」で訪れる人も。(写真:若杉優貴、公園敷地外より撮影)

■豊島区立南大塚公園住所:東京都南大塚2-27-1車両開放時間:毎週水曜9:00~17:00(※11月~3月は16:00まで)アクセス:東京メトロ丸ノ内線「新大塚駅」より徒歩4分JR・都電荒川線「大塚駅」より徒歩8分

参考文献:林順信(1996・1998)『都電が走った街 今昔(1)(2)』JTB日本交通公社出版事業局.林順信・諸川久(1986)『おもいでの都電』保育社.

若杉優貴

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