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「朝からお酒の匂い」朝ドラ主人公の"身勝手な行動"にコメント続出…行く末は地獄か天国か

  • 2024.7.13

連続テレビ小説『虎に翼』の第15週「女房は山の神百石の位?」では、ついに寅子(伊藤沙莉)に対する猪爪家の面々の不満が爆発する。SNS上でも、寅子の身勝手にも思える言動へのコメントが続出。新潟への転勤を受け入れた寅子は、娘・優未(竹澤咲子)とともに新天地へ向かうことを決める。

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写真:2021 TIFF/アフロ

寅子の何が悪かったのか?

あなたの前にいる優未は、本当の優未ではない……。花江(森田望智)にそう言われた寅子は、自宅で家族会議を招集する。

彼女自身、未遂に終わったものの職場で殺傷事件に遭い、くわえて、いつもは心を休められるはずの竹もとで、後輩たちが自分の陰口を言っているのを聞いてしまったばかりだった。傷心に傷心を重ねた状態で、家族全員から「自分の至らないところ」を教えられるのは、心が折れても仕方のない状況だろう。

家族から寅子に提示された「至らない点」は多々ある。「花江に対する感謝が足りない」「その道を極め、努力をする姿勢ばかり求められる」「就職の相談に乗ってくれない」「朝からお酒の匂いがする」など。

寅子自身、女性でありながら法律の勉強ができ、弁護士や裁判官になれたという背景には、比較的、裕福な出自であることも大きい。しかし、努力を積み重ねてきたことで現在の地位を得られた、という自信もあるからこそ、周りにも「2位ではなく1位であること」を求めてしまうのだろう。

優未がテストの点数を改ざんしていたことも、ひとえに、母である寅子に失望されたくなかったという「呪い」のせいである。寅子は直接、言葉にしてはいないかもしれないが、優未が良い子であるということが、ひいては亡くなった優三(仲野太賀)に対しても誠実さを示すことに繋がる、と子どもながらに感じていたのではないだろうか。

しかし、寅子ばかりが責めを負う必要があったのか?

「家族を省みられないほど、仕事を頑張ってと言った覚えはない」と花江は言ったが、実際のところ、寅子の稼ぎがなければ生活は成り立たないだろう。職場で刺されかけたり、後輩に陰口を言われたりしたことを、花江たち家族は知らない。それは、寅子が家族に不要な心配をかけまいと、しっかり線引きしていたからではないだろうか。

寅子から家族に向ける感謝も足りなかったかもしれないが、それは、逆にも当てはまる。お互いに感謝が足りず、傲慢と傲慢のぶつかり合いになってしまったからこそ、家族の問題が浮き彫りになったのかもしれない。

家族の土台を作り直そうとする母娘

家族の声をしっかり受け止め、自らの言動を反省した寅子は、心機一転、優未とともに新潟へ行くことを決める。これを機に、自らと、家族との関係を土台から作り直すことにした寅子。新天地で、どれだけ「本当の娘」と向き合えるだろうか。

7月12日に放送された75話では、多岐川(滝藤賢一)をはじめ、家庭裁判所でともに働いてきた面々が、寅子の壮行会をしてくれた。仕事でもプライベートでも、散々な目に遭っている寅子だが、彼らは心から寅子の仕事ぶりを評価し、別れることを惜しんでくれている。多岐川の、お決まりの水かぶりも含め、なんとも微笑ましいシーンだ。

少し距離をとっていた香子(ハ・ヨンス)や、よね(土居志央梨)との関係性も、遠く離れる前に、悔いのない結び直しができたのではないだろうか。自らを反省し、近しい人間との繋がりを見直すためには、やはり地盤が必要だ。自分で自分を認めてあげることはもちろん、かつてともに学んだ旧友たちとの縁は、より寅子の自尊心を強固にしてくれるだろう。

新潟にも、個性の強い顔ぶれが待ち構えている予感がする。新しい場所で、また勝手の違う仕事に慣れていきながら、娘との新たな距離感を探ることになる寅子。きっとまた、彼女らしい「はて?」を聞ける日がくるはずだ。



NHK  連続テレビ小説『虎に翼』毎週月曜〜土曜あさ8時放送
NHKプラスで見逃し配信中

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X(旧Twitter):@yuu_uu_