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開始31秒で"異例"の衝撃展開...!新ドラマ『笑うマトリョーシカ』が怖すぎる?"善人が正義とは限らない"ネットでは考察が続々

  • 2024.7.5

復讐ドラマが熱い。金曜よる10時から放送のTBSドラマ『笑うマトリョーシカ』は、早見和真による同名小説を原作とした本格政治サスペンスドラマ。開始早々の展開に、「怖すぎる」「一言もあげられない」など、ネットが騒然となった。ある一つの謎を取り巻く3人の人間……新聞記者・道上香苗(水川あさみ)、人気政治家・清家一郎(櫻井翔)、その秘書・鈴木俊哉(玉山鉄二)による、まさに丁々発止のやりとりに惹かれる。最後に笑うのは誰なのか、本当の悪は誰なのか。悪の中にさらなる悪が入り込む、悪の入れ子構造が見ものだ。

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タイトル「笑うマトリョーシカ」に込められた意味

正義が悪を裁く、いわゆる勧善懲悪の物語は、見ていて気持ちが良い。スカッとする。有名すぎるたとえで恐縮だが、やはり水戸黄門の印籠が掲げられる瞬間は、絶対にそうなると確信している展開でも胸がスッと晴れ渡るものだ。

悪は裁かれるべきであり、相応の報いを受けるべきである。なぜならば、そうじゃないと、割に合わないからだ。それでは、“誰にとって割が合わない”のか?

そう、自らこそが正しく、悪を裁く側だと信じて疑わない、正義に立つ者にとって割が合わないのである。

TBS金曜ドラマ『笑うマトリョーシカ』のメインキャストは、新聞記者を父に持ち、自らも真実を追求する記者として奔走する道上香苗。そして、何かと話題になる人気政治家・清家一郎と、その敏腕秘書・鈴木俊哉である。

彼ら3人は、香苗の父もその真相を追っていた「BG株事件」を軸に繋がっている。1話冒頭、謎の暴走トラックによって殺害されてしまった香苗の父は、清家の秘書・鈴木と会う約束をしていたのだ。予定していた日時と場所で、狙ったように殺されてしまった。

父が追っていた事件を調べるため、香苗は清家と鈴木に接触する。調べれば調べるほど、清家の過去や交流関係から不可解な点が浮かび上がる。やはり、とりわけ怪しいのは、学生時代から清家のブレーンとして暗躍していたと思われる鈴木の存在だ。

清家にはもう一人、学生時代の近しい友人・佐々木光一(濱尾ノリタカ・渡辺大)がいるが、同じく清家を支えていた鈴木とは打って変わり、佐々木のことは清家の自伝に一行たりとも書かれていない。この作為を感じさせる不自然さが、香苗の心にも引っかかっている。

香苗が清家に近づけば近づくほど、彼がいかに空っぽで、ブレーンたる鈴木の存在なくしては今の地位に辿り着けなかったかが知れる。清家の、顔に寸分の狂いなく貼り付けたような笑みは、まさにマトリョーシカの空虚な笑顔にも似ている。

本当の悪は“正義を掲げる側”?

こういった復讐もののドラマには、やはり正義が欠かせない。視聴者側が感情移入できるよう、より悪を裁くカタルシス効果が得られるよう、わかりやすく正義が掲げられるのが常だ。

しかし、昨今の風潮は変わってきている。

わかりやすい悪、わかりやすい正義は描かれない。悪人にも善なる部分があり、正義にも悪なる部分があると描写される

アニメ『鬼滅の刃』シリーズに、その傾向が顕著にあらわれている。人間を無差別に攻撃し、喰らってしまう鬼の存在は明らかに悪だが、彼らはもともと人間で、それぞれが、鬼にならざるを得ない理由を抱えており、半ば戦わされているのだ。

『笑うマトリョーシカ』も、1話の時点では香苗が正義、清家や鈴木が悪だという構図が示されつつある。

しかし、悪を裁く側がいつだって正義とは限らない

悪のなかにさらなる悪が隠されている場合もあれば、自らこそが正義だと信じて疑わなかった人間の過去にも、もしかしたら揺るぎない悪が潜んでいるかもしれない。マトリョーシカは、人形のなかにさらなる人形が入っている、ロシアの民芸品だ。

悪のなかに隠されているものは、何なのか。2話以降、清家の過去や、新たな関係者の存在が明かされるだろう。しかし、どれだけ権力側が悪だと提示されても、視聴者は「正義こそが悪かもしれない」という冷静な視点を忘れてはならない。



ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X(旧Twitter):@yuu_uu_