1. トップ
  2. SNSで賛否両論?NHK『虎に翼』で同性愛を描いたワケ。脚本家が語った轟の恋心とは

SNSで賛否両論?NHK『虎に翼』で同性愛を描いたワケ。脚本家が語った轟の恋心とは

  • 2024.6.14

6月10日〜6月14日まで放送された、連続テレビ小説『虎に翼』の第11週「女子と小人は養い難し?」は、花岡が餓死してしまったというショッキングな報を受ける形で始まった。戦地から戻ってきた轟(戸塚純貴)が、実は元旧友である花岡(岩田剛典)に想いを寄せていたことが明らかになる。

轟が花岡に向けた想いは、友情か、それとも愛情か。

本作の脚本家・吉田恵里香自身が、SNS上で真相に触れている。

轟→花岡への想いは「恋愛的感情を含んでいる」

undefined
(C)SANKEI

第11週「女子と小人は養い難し?」は、花岡が餓死してしまったというショッキングな報を受ける形で始まった。その反面、空襲で亡くなってしまったと思われていた、寅子(伊藤沙莉)の旧友・よね(土居志央梨)は生きていたことがわかる。そして、戦地から無事に戻ってきた轟と落ち合う。

元いた場所に戻ってきた途端、友人の死を知ってしまった轟は、深く落胆する。その横で、よねは驚きの一言を口にするのだ。「お前、惚れてたんだろう、花岡に」「白黒つけたい訳でも、白状させたい訳でもない」と。

轟が花岡に想いを寄せていた、という事実に、SNS上では意見が二つに割れた。「あくまでも人として、友として惚れていたという意味ではないか」という側と、文字どおり「恋愛感情を持っていた」という側に。

この件について、本作の脚本家である吉田恵里香さん本人が、自身のSNSではっきりと「轟の、花岡への想いは初登場の時から【恋愛的感情を含んでいる】として描いていて私の中で一貫しています(本人は無自覚でも)」と言及している。

いないことにされている人々の存在

この展開に関して、いわゆる「同性愛要素」をわざわざ入れ込んだのは何故か、と問う向きもある。物語上、どうしても必要になってくるならまだしも、轟というキャラクターにその要素が必然であるとは言えない。

しかし、これからのエンタメ作品には、吉田自身が語るように「透明化されている人たち」を描く余白が必要なのではないか。

映画やドラマなど、映像作品の展開には「必要じゃないから」という理由で、これまで描かれてこなかったセクシャリティの存在。見えない力が働いて、いないことにされてきた人々。

『虎に翼』の轟の場合、彼が同性愛者だという情報が加わると、物語を追う際の「ノイズ」になるという声も想像される。その設定を盛り込む必要があるのか、と疑問の種になる。

それでも、実際に「透明化されている人たち」「いないことにされている人たち」は存在するのだ。そんな人々を、あえて表舞台に出し、自然な形で言及することで光を当てる。彼らは確実に存在するのだと、エンタメ作品を通して示すことができる

轟が花岡に恋愛感情を持っていた、という展開は賛否を呼んだ。しかし、いずれこの「賛否」が起きなくなること、どんなセクシュアリティの人間でも自然に描かれることが、当たり前な世の中になること。それが、社会が良くなっていくことの兆しになるのではないだろうか。



ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_