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安藤政信が演じる“モラ気質”から分析!ドラマ『Destiny』モラハラ男の3つの特徴

  • 2024.5.30

モラルハラスメント(通称・モラハラ)の気質を見破るのは難しい。しかし、少しのコツを掴めば、早めに“モラハラ男”の傾向を察知することはできる。ドラマ『Destiny』(2024/テレビ朝日系列)に登場するキャラクター・奥田貴志(安藤政信)を例に、巧妙に世間に紛れるモラハラ気質を、事前に見極めるコツについて考えてみる。

奥田貴志の言動からわかるモラ気質

そもそもモラルハラスメントとは、「モラル=道徳や倫理」と「ハラスメント=嫌がらせ行為」を掛け合わせた言葉。ドメスティックバイオレンス(DV)を始めとする直接に手を出す暴力や、セクハラ・パワハラといったわかりやすい言葉の暴力とも違う。

モラハラは、相手の道徳・倫理観に訴えかけて罪悪感を煽るような、一見するとわかりにくいハラスメントだ。

わかりにくいからこそ、モラ気質を持つ人間は巧妙に世間に隠れられる。『Destiny』のキャラクター・奥田貴志の言動は、早い段階からモラ気質を見破るヒントを与えてくれる。

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(C)SANKEI

ちなみに便宜上、本記事には「モラハラ男」という呼称を用いている箇所があるが、モラ気質を持っているのは男性に限らない。女性はもちろん子どもにも、その傾向がみられる可能性があることを付記しておく。

モラ気質1. 相手を尊重しているようで、していない

モラハラ男の特徴として、まず「相手を尊重しているようで、していない言動」が目立つ。

『Destiny』4話の冒頭にて、主人公で検事の西村奏(石原さとみ)と、その婚約者である貴志が、朝食を摂りながら会話をしているシーンがある。その内容は、新しくマンションを買わないか、というものだ。

貴志は、結婚したらもう少し広さのある家に住むことを希望している。現在の家は少々手狭なため、近くにあるちょうど良さそうなマンションに移ったほうがいいのではないか、という提案だ。

この投げかけそのものに、不審な点はない。しかし、さりげなさそうに見える言葉選びに、モラ気質が垣間見える。

たとえば、奏が検事の転勤の多さに触れ「これから先また絶対にあるよ、転勤。その時は?」と問うと、貴志は「奏はどうしたい?」「その時々に決めていけばいいんじゃないかな、そんなに難しく考えず」と返す。

この対応は、しっかり相手の意思を確認していることから、一見すると問題なさそうに見える。

しかし、貴志は実のところ、転勤の多い検事という仕事をしている奏に、検事を辞めて弁護士になってほしいと思っているのだ。そうしたら「ずっと一緒にいられる」と考えている。

検事の仕事に誇りを持ち、続けていきたいと考えている奏にとって、住まいを変えることやマンションを買うこと(=そうそう簡単に移動できない定住地を持つこと)は、「そんなに難しく考えず」に決められることではない。

深く考えず引越しをさせ、あわよくば検事ではなく弁護士になってもらえれば、結婚後もずっと一緒にいられる。「奏さえよければ」とことあるごとに枕詞をつけてはいるが、貴志の言動は奏を尊重しているようで、していない。自分の希望だけを伝え、相手の反論はやんわりと拒んでいる

まともに話し合いをする場を避け、自分の希望を通そうとする姿勢は、モラハラ男の黄色信号である。

モラ気質2. とにかく相手の罪悪感を煽る

モラハラ男は、とにかく相手の罪悪感を煽るのが上手い。

決して自分自身は悪く見せず、あくまで「悪いのは相手である」とし、そう思い込ませる技術が巧みである。

5話の終盤、奏の大学時代の恋人である野木真樹(亀梨和也)が、理由あって病院に運ばれてくるシーンがある。医者である貴志は、真樹の主治医としての職務をまっとうしたあと、待合室で奏と話す。

奏と対面せず、前だけを向いて話す様子や、あくまで淡々としてはいるが、少しずつ感情が昂ってきて涙する激情的な貴志の振る舞いは、決して奏のためを思っての態度には見えない。

いかに奏に罪悪感を植え付けるか。誠実な婚約者である自分のことを、どれだけ裏切っていると痛感させるか。

貴志は、直接的な言葉で奏を責めることはない。あくまで態度と言葉で、彼女がどれだけ「僕という人を貶めているか」を分からせようとしている。おそらくは、無意識に。

モラ気質3. 外面が良い

やけに外面が良いのも、モラ気質を持つ人間の特徴である。

7話、奏の上司である横浜地方検察庁の支部長・大畑節子(高畑淳子)と貴志が、電話で話すシーンがある。そのとき奏は、一人で失踪してしまった真樹を追って、音信不通になっていた。事情を探るため、節子は貴志に連絡をとったのだ。

自分が奏に贈った指輪が箱入りのまま残されているのを発見し、密かにショックを受けていた貴志。節子から「西村検事はご在宅でしょうか?」と問われ、貴志は、奏の姿が見えないことを隠し「今やっと眠れたみたいで、休んでいるんですが……」と嘘をつく。

奏の婚約者である貴志の立場として、彼女に不都合がないよう取り計らった、と考えるのが自然かもしれない。

しかし、真樹と奏の仲を疑っている貴志は、ほぼ間違いなく二人は一緒にいると予測したはず。婚約者である自分の立場が蔑ろにされ、プロポーズしたばかりの恋人に不貞をはたらかれていると考えてもおかしくはない。それを外部の人間に悟られないよう、体面を保つために嘘をついたのだとしたら?

貴志は穏やかで、外部の人間に対してはとくに丁寧な物腰を崩さない。泣いたり声を荒げたり、感情を乱すのは奏の前に限られている。勝手知ったる身内の前でしか本性を出せない、外面はとても良いと思われる人間は、モラハラ気質のジャッジをするうえでは堂々たる赤信号である。

モラハラ男を作りだすのは、女性の態度?

『Destiny』のキャラクターの言動を振り返りながら、モラハラ気質を見分ける基準について紐解いた。ここまでの記述を鑑みると、こういった気質を持つ人間ばかりが悪い側に立たされているように思われるが、そうとは限らない。

モラハラ男の周りにいる人間、とくに、恋人のような近しい存在の態度こそが、モラハラ気質をつくり上げている、とも考えられる。

なんでも甲斐甲斐しくお世話をしたり、相手の顔色をうかがう言動をしたり、先回りして気の利くおこないをしたりすると、優しさや思いやりではなく「なんでも言うことを聞いてくれる都合の良い存在」と受け取られる危険性が高まる。

お互いに対等な関係でいたいと望むなら、相手をモラハラ気質に陥れていないか、自身の態度を振り返る癖をつけたほうがいいのかもしれない。



ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_