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日本で最速の「逃げ恥婚」?『虎に翼』寅子(伊藤沙莉)の選んだ“愛のない結婚”は成功するのか

  • 2024.5.18

寅子が選んだ“愛のない結婚”

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(C)NHK

寅子と同じく、明律大学女子部から卒業後、女性初の弁護士となった久保田聡子(小林涼子)。寅子が弁護士としての初仕事を得るのに苦戦しているあいだ、早くも久保田が法廷に立つことになった。結婚と出産も控えているという。

やはり、女性も男性と同じく、結婚していなければ社会的信用が得られないのだろうか。せっかく弁護士になれたにも関わらず、なかなかクライアントに名刺を受け取ってもらえない実情に、奥歯を噛む寅子。

「女性にはちょっと……」と言われ、男性弁護士を、と希望されるのは、かつて寅子の母・はる(石田ゆり子)が言っていた“地獄”の続きかもしれない。

連続テレビ小説『虎に翼』の舞台は昭和初期。90年近く経つ令和のいまも「独身の若い女性」が社会的信用を得られにくい状況は、変わっていないかもしれない。筆者が新卒で就職した2014年前後でも、できれば若い女性ではなくベテランの男性社員を、と言われ担当変更を余儀なくされたのは、一度や二度ではなかった。

結婚さえすれば、膠着しつつある状況を打破できるのだろうか。何度目か知れない地獄を抜け出すため、寅子は結婚することを決意。お見合い相手に恵まれず、またもや意気消沈していたところへ、元書生の優三が結婚を申し込んでくれた。

寅子にとって、優三は元書生であり、すでに家族のような存在。恋人や夫に対する愛情があるわけではないが、結婚して社会的信用を得られるなら、と政略結婚を決めた。

かつて『逃げるは恥だが役に立つ』(2016/TBS系列)で森山みくり(新垣結衣)と津崎平匡(星野源)が、お互いの利害の一致のために契約結婚をしたが、時代から考えると、寅子&優三がおそらく日本初の“逃げ恥”婚になるのかもしれない。

初法廷のために、寅子が払った代償

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(C)NHK

優三との結婚を決めた寅子は、さっそく弁護士としての初仕事が決まる。

独身女性ではなく既婚女性となった瞬間に、決まった初法廷。やはり、独身女性のままでは社会的信用が得られず、まともな仕事ができないのだろうか。

女性初の弁護士になるため、ここまで突っ走ってきた寅子には、できれば「独身女性でも社会的信用を得て、十分な仕事ができる」ことを証明してほしかった気持ちもある。

初法廷に立つため、弁護士として認めてもらうため、寅子は優三との結婚を決めた。それは、愛のない結婚だ。寅子にとって、優三の目的も同じく「社会的信用を得るため」だと聞いていたからこそ、踏み切れた“契約”だった。

しかし、実情は少し違っていた。優三は元から寅子に想いを寄せていたのだという。試験に受からなかったことを機に、その気持ちは永遠に秘めておこうと決めていた、と彼の口から教えられた。

初法廷に立つために、寅子は大きな代償を払ったことになる。愛のない結婚をしたこと。自分に想いを寄せてくれている相手を、裏切ったことになる事実。この立場が男女逆転していたら、立派な男尊女卑になってしまうだろう。

寅子が結婚を決めた理由は、見方によっては、あまりにも身勝手だ。果たして、寅子と優三の政略結婚は、上手くいくのだろうか。



ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_