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「30歳が魅力の限界?」ドラマ『ミス・ターゲット』で描かれる女性の“期限切れ”に滲む苦悩

  • 2024.5.19

20代女性と30代以降女性のマッチングアプリの使い方は、如実に変わってくる。20代は「20代だから」という理由だけで、黙っていても男性側から「いいね!」が飛んでくるもの。30代、40代になってくるにつれ、マッチングすることさえ難しくなってくるのが実情だ。ドラマ『ミス・ターゲット』(ABCテレビ・テレビ朝日系)では、そんな現実に触れている。

突然「いいね!」が来なくなる……

『ミス・ターゲット』は、とある理由から結婚詐欺師をしている主人公・朝倉すみれ(松本まりか)が、“真実の愛”を探すために婚活を始めるドラマ。

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写真:アフロ

「一人では見られない幸せを見てみたい」と願ったすみれは、同じく結婚詐欺師の見習い・玉木萌(鈴木愛理)のアドバイスでマッチングアプリに登録する。しかし、待てど暮らせど、男性からの「いいね!」が来ない

「全然いいね来ないんだけど、このアプリ壊れてない?」と訝しがるすみれに、萌はあっけらかんと「35歳の壁ですかね」と返すのだ。彼女いわく「女の婚活市場では、35歳を超えるとグッと相手を見つけるのが難しくなるんですって」とのこと。

34歳の筆者、20代前半のころから現在にかけて、多少のインターバルを置きつつもマッチングアプリを活用してきた。実体験として、この「35歳の壁」が少しずつ迫ってきているのをひしひしと感じている。35歳の壁ではなく、30歳の壁では? と思ってしまう節もある。

「35歳っていう数字だけで急に結婚相手が見つからないなんて、おかしいでしょ」とすみれは言う。それに対し、元結婚詐欺師であり、すみれの師匠的存在でもあるスナックのママ・馬淵弥生(筒井真理子)は「男の場合さ、35歳は男盛りって言われてるのにね」と応える。

女性が年齢の壁を感じるのは、何も恋愛や婚活市場に限った話ではない。それでも、とくにまざまざと「何かの価値が目減りしていく」ように感じられるのは、マッチングアプリを中心とした婚活市場だ。30代以降とはマッチングしないように設定している男性なんて、山ほどいるだろう。

35歳以上の婚活における選択肢は「結婚相談所」しかない?

35歳の壁なんて意識せず、ひたすら「自分が良いと思う相手」を探し続けるしか、婚活の道は拓けないのかもしれない。頭ではわかっていても、もはやマッチングすることさえ奇跡に近い頻度になっている。

運良くメッセージのやり取りを始められたとしても、AIと会話をしているような、無機質で定型文な会話が続く。マッチングアプリで知り合っている以上、お互いの恋愛や結婚観にまつわる話題になだれ込むのは仕方のないことだ。

しかし、仕事の話、出身地の話、家族構成の話、結婚願望はどれくらいあるか、子どもの有無についてはどう思うか……などを話し込んでいると、自分は結婚をするために目の前の相手と話しているのか、それとも目の前の相手と結婚したいと思うからこんな話をしているのか、わからなくなってくる。

『ミス・ターゲット』のすみれも、やがてマッチングアプリでの婚活に限界を感じ、結婚相談所に矛先を変える描写がある。たとえ35歳だとしても、こんなに綺麗な人が相手を見つけられずに苦労するなんて……と気が遠くなる一方だ。

やはり、35歳の壁なんてものに惑わされず、本当に結婚したいと思うなら、選択肢は結婚相談所しかないのだろうか。

たまたま行ったバーのカウンターで、たまたま知り合った男性と意気投合し、運命的な結婚まで雪崩れ込みたい……と思うのは、拗らせた30代女性の叶わない夢なのかもしれない。


番組概要:ABCテレビ・テレビ朝日系『ミス・ターゲット』 毎週日曜よる10時

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_