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榎本美沙さん「無心になれる季節の手仕事に救われる日々です」/新刊インタビュー

  • 2024.3.27
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リンネルでもおなじみの料理家・榎本美沙さん。自然や季節の移ろいを身近に感じる1年を24の季節に区切った初の実用エッセイ集『二十四節気の心地よい料理と暮らし』が発売。昔ながらの暦を意識しながら今の時代に寄り添い、季節の声に耳を傾けた、暮らしのかたちを感じる一冊に。

バタバタでも季節の仕込みをすると、なぜか心は落ち着くんです

あなたが本を買いたくなる理由はなんですか? リンネルでもおなじみの料理家・榎本美沙さんの新刊『二十四節気の心地よい料理と暮らし』は、〝本〞という形でしか味わえない体験の宝庫でした。

「パラパラッとめくって、写真やデザインから心地よくなって。そこからおいしそう! と思えたら実際の作り方があって、買いたいと思ったら、お店の情報がある。そんなふうに、行動に移せるような暮らしの本にしたいと思ったんです」

そのきっかけとして、榎本さんが差し出したテーマが、二十四節気。
「季節を細かく分けた二十四節気を頭に入れていると、うぐいすが鳴いていたり、スーパーに梅が出てきたりという、日々の気付きにつながる。そこから料理を考えると、新しい発見があるなと思っていたんですよね」

自身も発酵マイスターであり、季節の仕込みものを得意とする榎本さんゆえ、なお敏感になるのでしょう。
「旬の食材はおいしいですし、その時季に必要な栄養素が含まれてるというのも、間接的には関わってると思います。ただやっぱり『この時季にこれが食べたい!』と、自然に体がなる。強い気持ちが出てくるんです」

とはいえ、あまたの人がくるくると、日々せわしなく生きています。もちろん、榎本さんもしかり。
「あれもやんなきゃ、これもやんなきゃと、忙しくてバタバタしているはずなのに、仕込みものをすると、なぜか心が落ち着く。それはきっと、季節の食材に助けられてるんでしょうね」

助けられているとは?
「作業自体が心地いいというのもあると思うんですけど、たとえば山椒だと、仕込んでる間にすっきりとした香りが部屋じゅうに広がってきたり、梅も完熟になると、特に甘い香りが行き渡ったりするのが、心の豊かさに繋がってる気がしています」

しかもありがたいのは、本書で紹介されているレシピはいずれも少量で手軽なところ。
「仕込む楽しさは味わいたいけれど、食べ切らなきゃというプレッシャーが苦手で、小さい瓶で仕込むんです。すると、無理のないうちに食べ切ってしまえる。もしかしたら、庭で大量に梅を干したり、樽で味噌を仕込むという昔のイメージとは、少し違うかもしれません」

二十四節気という昔ながらの暦を意識しながら今の時代に寄り添い、季節の声に耳を傾ける。そんな暮らしのかたちがこの本にありました。

新著『二十四節気の心地よい料理と暮らし』

榎本美沙/¥1,870/グラフィック社

1年を24の季節に区切った二十四節気をもとに、料理や花、暮らし方を紹介する、著者初の実用エッセイ集。レシピからお取り寄せ情報まで、情報がぎっしりと詰まっているのにどこか風通しよく、時季ごとに撮影されたからこその醸されたムードが、誌面からも立ち上る。帯にも二十四節気の解説があるので、見えるところに飾っておきたくなる。

お話を伺ったのは……榎本美沙さん

料理家・発酵マイスター。雑誌や書籍、TVなどで活躍中。主宰のオンライン料理教室「榎本美沙の料理教室」も大好評。YouTube「榎本美沙の季節料理」はチャンネル登録者数30万人を超える。3月に新刊『榎本美沙のひと晩発酵調味料』(主婦と生活社)が発売。   Instagram:@misa_enomoto

photograph:Yumiko Miyahara text:BOOKLUCK

リンネル2024年5月号より
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください

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