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【触らない痴漢】は犯罪になる?どんな場合に「痴漢」認定?弁護士に聞きました

  • 2024.3.26
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「触らない痴漢」は罪に問える?

「触らない痴漢」は罪に問える?
「触らない痴漢」は罪に問える?

SNSで話題になっている「触らない痴漢」。日々情報や意見の交換が行われているX(旧ツイッター)でも話題になっています。2024年3月に投稿された「(触らない痴漢が話題だけど)何でもかんでも痴漢にするのはいかがなものか?」という内容のポスト対し、「実際の事例を知ると、これは痴漢だと言えるよ」、「想像力があれば、罪の重大さがわかる」といった意見が寄せられていました。

実際に「触らない痴漢」は犯罪に当たるのでしょうか?どのような罰則があるのでしょうか?「弁護士法人C-ens法律事務所」代表弁護士・森崎 秀昭先生にお話を聞いてみました。

触らない痴漢とは

Q.「触らない痴漢」とはどのような行為が該当するのでしょうか?痴漢行為と同じと考えて良いのでしょうか?

森崎先生「触らない痴漢というのはイメージしづらいかもしれないですが、典型例は次のようになります。

・混んでいないにも関わらず必要以上に近づく・混んでいないにも関わらず背後や横に密着するくらい接近する・背後や横など近くに立ってあからさまに髪や首筋などの匂いを嗅ぐ・首筋や耳などにむけて息を吹きかける・聞こえるように卑わいな言葉を何度も発する・自分の持ち物を相手の身体に押し当てる・AirDropで卑猥な画像を複数回転送・携帯で卑猥な画像や動画を表示し見せてくるなどになります。

みなさんの中でも多くの方は、大なり小なりこのようなことをされた経験があるのではないでしょうか?」

Q.「触らない痴漢」は、実際に罪になるのでしょうか?罪に問われる場合、何を根拠に罪にするのでしょう。

森崎先生「犯罪行為になりえます。具体的には、触る痴漢は、迷惑防止条例違反や不同意わいせつ罪、強制わいせつ罪になり、触らない痴漢は迷惑防止条例違反になりえます。下記に迷惑防止条例をご紹介しますね。

+++第5条何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であって、次に掲げるものをしてはならない。(1)公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること。 (3) 前2号に掲げるもののほか、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、卑わいな言動をすること。+++

この条文を見ると、触ることが前提になっているようにも見えますが、「(3)・・・卑わいな言動をすること」が触らぬ痴漢に該当する部分になります。

従いまして、まずそもそも触らぬ痴漢は立派な犯罪行為であることはみなさんにご理解いただけたらうれしいです。

ですから、みなさんは『これって触られていないから痴漢(犯罪)じゃないよね』などと思う必要はないんですよ」

Q.「触らない痴漢」が罪になった場合、どのような罰則があるのでしょうか。

森崎先生「触らない痴漢をした人は、『6カ月以下の懲役又は50万円以下の罰金』(迷惑防止条例第8条第1項第1号)となり、『常習として…(触らない痴漢をした)者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する』とされています。」(迷惑防止条例第8条第8項)とされています。

これだけ見ると軽くも見えますが、もし裁判の後に、すぐに刑務所に入らないとすると、急に6カ月~1年も社会にいられないというのは、仕事を失ったり、家族に見限られたりする可能性もあります。

一般のサラリーマンからしたら、50万や100万の罰金というのは、2カ月~3カ月の給与に相当する金額かもしれません」

Q.実際の被害報告があれば教えてください。

森崎先生「実際に仕事としてご相談を受けた事例はないですが、妻やママ友のお話の中では、気持ち悪い体験は聞いたことがあります。

・カバンを股に押し付けられた・車内で移動しても後ろにぴったりくっついてくる・携帯で卑猥な画像を見せてくる・スポーツ新聞の卑猥なページをこれみよがしに見せつけてくるなどは聞いたことがあります。

形式的に判断するとこれらは触らない痴漢にも概要するものですが、妻やママ友は、『勘違いだったらどうしよう』『気のせいかな?』『気持ち悪いけど、警察とか駅員さんに相談する時間がもったいない』などの理由から、被害申告をすることはなかったようです」

もし、被害に遭ってしまったら…

もし、被害に遭ってしまったら…
もし、被害に遭ってしまったら…

Q.もし「触らない痴漢」の被害に遭ってしまった場合、被害者は加害者に対してどのように対処、振る舞うべきでしょうか。

森崎先生「被害に遭ったら、駅員さん警察への相談と証拠の確保の問題になってはしまいます。なんで被害にあったのに時間も労力もかけなきゃいけないのかと思いますが、現状ではしょうがないので、ご理解をいただけたらうれしいです。

そして、実際電車内のカメラがある場合には、その映像などが利用できるので、乗車下車の日時時間、乗車車両、乗車位置などは把握しておいてもらいたいです。

また、大変なことなのですが、最終的に訴えることを想定すると、本当に触らない痴漢をしているのは誰なのかというのが非常に重要になります。具体的にどのような被害を受けていて、それは誰がしているのか、気持ち悪い中で本当に心苦しいですが、まずはこれらを確認して確定してもらいたいです。

そして、大変難しく勇気もいることですが、被害に遭った際に、勇気を出して声を出したり、相手が逃げないように服などを掴んでおいたり、周りの人に助けを求めたりということは一般的に対策として言われているものになります。

もし、隣などに助けてくれそうな人がいたら、携帯のメモアプリなどで、『痴漢被害に遭っています。助けてください』ですとか、『痴漢に遭っているかもしれないので、確認してもらえないですか?』などと表示して、近くの人に見せて助けを求めるのも良い方法かもしれません。

そして、往々にして、痴漢被害は、女性が男性から受けることが多く、力強さが違うことから相手を捕まえるなどが難しいかと思います。そのためにも、周りの人と協力していただけたら幸いです。また、読者の方も、周りで被害に遭っている方に出会われた場合には、積極的に協力をしてあげてもらえたらと思います。

怖い経験に関することなので、このような対応をしてもらうのも心苦しいですが、現実的な問題として、ご自身の辛さをなんとかするには、まず一歩勇気を持って踏み出してもらえたら幸いです」

Q.被害者は加害者を訴えることはできるのでしょうか?訴えることができる場合、まず、どこに相談するのでしょうか。

■訴えることはできます。

森崎先生「相手に罰を与えることを考えると、迷惑防止条例違反になるので、警察に訴えることが可能です。 また、犯罪の被害に遭った人は、加害者に慰謝料を請求できるので、相手に直接請求したり、裁判所を通じて相手に請求することもできます」

■訴える場合

森崎先生「相手に懲役や罰金などの罰を受けてほしいときは、警察への相談(被害届の提出や告訴など)になります。証拠の確保などの関係から、スピード感は非常に重要になります。そのため、警察への相談もできれば被害に遭った直後に、駅員さんに相談してもらえたらと思います。

心に傷を追ったことから、慰謝料が欲しいという場合には、裁判所に、相手から慰謝料がもらえるように裁判を起こすということになります。

警察などの相談をした場合には、相手から示談をしたいという連絡が来て、慰謝料をもらえるケースもあります。ただ、そのような場合を含め、示談や慰謝料の請求をする際には、ご自身の名前や住所をそれぞれの書類に記載する必要があります。もちろんこれが公開されないようにする手続きもあるのですが、内容が難しいので、弁護士にお願いするのが良いかと思います。

また、示談書への氏名などの記載はご本人で対応する場合には、必要になります。加害者側の弁護士が配慮してくれることもありますが、住所氏名がバレることを避けるためには、示談についても弁護士にお願いした方がより安心かとは思います。

このようにして見た場合、勇気を出して一歩踏み出してもらいたい一方で、費用対効果や労力対効果が乏しくもあるかと思います。

そのため、まずは被害に遭わないようにするにはどうしたら良いかという点を意識してもらえたら幸いです。

本当は、加害者が触らない痴漢行為をしないようにすることが一番なのですが……」

被害に遭わないためのアドバイス

被害に遭わないためのアドバイス
被害に遭わないためのアドバイス

Q.できれば被害に遭いたくないと多くの人が思っています。被害にあわないためのアドバイスがありましたら教えてください。

森崎先生「一般的には、下記のようなことが言われています。

・女性専用車両に乗車する・乗車位置を狙われにくい場所にする・一人で乗車しない・相手との間にカバンなどの遮蔽物を設ける・同じ時間同じ車両に乗車しない・防犯ブザーを目立つところに取り付ける・気が強そうな格好をするなどの方法があると言われています。

しかし、本当は、男性がこのような暴挙に出ないようにして、女性も安心して社会生活を送れるようにしないといけないですよね。ただ、一定数は怪しい男性がいるのも事実なので、身を守るには、女性専用車両の利用とかも大切ですね。

ファッションやメイクを変えたりして気の強い女性を演出するのも効果はあると思いますが、ご自身の趣味と違う格好をするというのも抵抗がありまし、そこまで我慢をしなければダメというのも本当に酷な話しですよね。

抜本的な解決策というのが、女性にとってハードルが高いことがすごく悔やまれます。

実際に上記のような一般的に言われていることは効果があると思います。もし、みなさんの価値観の中で、ご対応可能なことがあれば、まずはそこから初めてみてもらえたら幸いです」

————————- 多くの女性が人知れず悩んできた「触らない痴漢」被害。SNSで話題になることで、犯罪行為である、と認識した女性も多いのではないでしょうか。また、被害に遭っていること自体を、自身ではなかなか気がつきにくいことケースも多いということなので、見て見ぬふりをせず、周囲の人が助けることも必要なのかもしれません。

(LASISA編集部)

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