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食のプロが太鼓判を押す、肉名人のいるレストラン4選。

  • 2024.3.26

一口に肉料理といっても、ステーキ、ハムやパテなどのシャルキュトリ、フライ、とフレンチ&イタリアンだけでも幅広い。どのレストランでどんな肉料理を食べるべき?肉を語らせたら止まらない二人が考えた。

こいしはら・はるか/うどん、焼きそば、肉と、好きなものにはとことんハマる“偏愛系”ライター。『東京最高のレストラン』(ぴあ)には毎年寄稿。最新刊は『自分史上最多ごはん』(マガジンハウス)。

まつうら・たつや/「食べる」「つくる」に加え、科学的な研究や徹底的な調査による「ひもとく」アプローチが得意なフードアクティビスト。著作に『教養としての「焼肉」大全』(扶桑社)など。

一食たりとも無駄にしたくない」と、どこで何を食べるか吟味を欠かさないライターの小石原はるかさんがゲストを招いて対談。今回は日本バーベキュー協会公認の上級インストラクターの資格も持つ松浦達也さんと一緒に、肉料理の匠がいる店を考察した。

小石原はるか(以下、小石原) 松浦さんは近著に焼肉の本もあり、〝焼肉の人〟になりつつありますね。それに限らず肉にお詳しい松浦さんから見て、東京に数多あるお店の中から注目すべきスポットや料理人を教えていただきたいなと思います。

松浦達也(以下、松浦) 普段から我々が話している内容ですが(笑)。肉料理で評判がいいフレンチの最たる例が〈マルディ・グラ〉。早くから短角牛を扱っていたパイオニアです。

小石原 肉シェフという感じで認知されたのが、同店の和知徹シェフでしたね。牛がメインだけど、フライドチキンやラムチョップなど肉の種類はさまざま。

松浦 和知さんは始祖ですね。

小石原 肉の名店といえば、〈イバイア〉のヒレカツがすごいと思います。寡黙なシェフですが、おいしいものを作ってくれそうという雰囲気もあり。

松浦 気がついたらヒレカツがシグネチャーになっていました。

小石原 既製品のソースが添えられる店もあると思いますが、手をかけたソースを敷いている点にフレンチの矜持を感じます。

松浦 イタリアンなら塩と胡椒。魯山人ならわさび醤油(笑)。

小石原 マダムのご実家が農園をやっていて、野菜も大変おいしいんですよね。

〈マルディ・グラ〉

銀座に20年以上根を下ろし、多くの肉好きを唸らせてきたフレンチレストラン。ちなみに松浦さん、小石原さんがかつて最も度肝を抜かれたのが、チーズハンバーグやラムチョップ、メンチカツなどがタワーに盛られた「肉の変態盛り」だったという。
住所:東京都中央区銀座8-6-19 B1

東銀座 〈IBAIA〉 (フレンチ)

お客のオーダー率100%!鮮やかなロゼ色の牛ヒレカツ。

住民も多い東銀座の街になじむよう試行錯誤して作った気取らないメニューのなかで、分厚い肉を使ったほかにはない牛ヒレカツが大ヒット。ミラノ風カツレツに着想を得て、パセリやニンニク入りの衣を纏わせ、柔らかい肉質を損なわないようミディアムレアに。

美しさを追求して選んだニュージーランドの赤身肉。 中まで火が入っても綺麗なロゼになるニュージーランド産やオーストラリア産の牛肉を選ぶ。高温短時間で揚げ、瑞々しさをキープ。
中まで火が入っても綺麗なロゼになるニュージーランド産やオーストラリア産の牛肉を選ぶ。高温短時間で揚げ、瑞々しさをキープ。
オブラートのように包む香り豊かなパン粉。 ニンニクや自家栽培のパセリと一緒にパン粉をミキサーにかけた、細かい衣。肉に薄くつけ、肉の食感や味を邪魔せず引き立てる役に。
ニンニクや自家栽培のパセリと一緒にパン粉をミキサーにかけた、細かい衣。肉に薄くつけ、肉の食感や味を邪魔せず引き立てる役に。
肉の名店で腕を磨いた料理人。 シェフの深味雄二さんは〈マルディ・グラ〉出身。毎日厨房に届く多様な肉を千本ノックのように調理するうち、肉料理の達人に。
シェフの深味雄二さんは〈マルディ・グラ〉出身。毎日厨房に届く多様な肉を千本ノックのように調理するうち、肉料理の達人に。

そのまま食べても、ソースにつけても。
衣の下味だけでも味わい深いが、赤ワイン、ポルト酒、マディラ酒、フォン・ド・ボーと野菜を煮込んだソースもさっぱりと美味。

〈IBAIA〉

「名物“牛のヒレカツ”」は200gほどで4,800円。あまりのジューシーさに「駆けつけ一杯」の要領で注文する常連も。席は予約推奨で、翌月末分まで受け付け。

住所:東京都中央区銀座3-12-5 ファーストビル1F
TEL:03-6264-2380
営業時間:17:00~22:00(土日~21:00)
定休日:月休
席数:17席

“パテアンクルートにはフレンチの技術が詰まっています”(小石原はるか)

小石原 〈イバイア〉のように、長くやっていらっしゃって定着しているお店では、〈レストラン ユニック〉のシェフも肉名人ではないでしょうか。

松浦 ジビエ系が多く、クラシカルな料理が得意ですね。

小石原 パリの二ツ星レストランで肉のセクションも担当されたとか。中井シェフのパテアンクルートは素晴らしいですよ。焼きだけでなく、加工もお上手。

松浦 料理の練度と精度が如実に反映されるメニューですよね。

小石原 コンソメをひいて、パイを作って、中身の肉だねを作って、とフランス料理のいろんな技術が詰まっていますから。「焼き」にフォーカスすると、今はやはり塊肉でしょうか?

松浦 そうですね。少し前までのNY式のTボーンステーキの流行は落ち着いて、質のいい肉を塊で焼く店が増えました。

小石原 素人目では難しそうですが、塊で焼くほうがおいしいんですかね。

目黒 〈restaurantunique〉 (フレンチ)

旬の肉を詰め合わせたパイ包み。
春には乳飲み仔羊、秋冬にはジビエなど、肉の種類でも季節を感じられるここでは、パテアンクルートのレシピも旬の食材で作り替える。今の時季はイノシシや鴨胸肉にフランス産のトランペットキノコやピスタチオを合わせて。粗くカットした肉が食感と風味を増強。

パイ生地はこんがり、ファルス(詰め物)はしっとり。 パテアンクルートはトータルバランスが大事。外側にはしっかりと火が通り、中身がパサつかないように仕上げるには火加減が大事。
パテアンクルートはトータルバランスが大事。外側にはしっかりと火が通り、中身がパサつかないように仕上げるには火加減が大事。
フランスで学んだ技術で季節の肉をおいしく。 中井シェフが渡仏して一番学びたかったというのが、日本ではお目にかかれない肉の調理。志願して担当を続けて名人になった。
中井シェフが渡仏して一番学びたかったというのが、日本ではお目にかかれない肉の調理。志願して担当を続けて名人になった。
たった一人で飄々と、軽やかに調理する。 手間のかかる料理だが「パテアンクルートを作ればみんなが喜ぶから」と、あっさり答えた中井雅明シェフは、ワンオペで営業。
手間のかかる料理だが「パテアンクルートを作ればみんなが喜ぶから」と、あっさり答えた中井雅明シェフは、ワンオペで営業。

フレンチの基本的な技術の高さを見せる一皿。
パイ生地を作り、コンソメをひき、肉をマリネするなど、一台完成させるのに4日以上かかるパテアンクルートは、技術力の賜物。

〈restaurantunique〉

メニューはアラカルトが基本。「島根県産猪と鴨肉、白レバーのパテ アンクルート」3,850円は最後にオリーブオイルをかけていただく。

住所:東京都目黒区目黒3-12-3 松田ビル1F
TEL:03-6451-0570
営業時間:12:00~14:00LO(金土のみ)、18:00~21:30LO
定休日:月休
席数:21席

“塊で肉を焼くのは見た目にも味にもいい作用”(松浦達也)

松浦 肉焼きに精通したシェフは、むしろ塊のほうが焼きやすいと言います。炭火なら〈イルジョット〉も素晴らしいですよ。魚やパスタもお上手ですが、肉の火入れが抜群なんです。いつもビタッと完璧な具合で。繊細な作業には見えないのですが、仕上がりがいつもバッチリで「この人は見えないはずの肉の内側が見えているのだろうか」と思うくらいに内部まで精妙な加減で焼かれています。

小石原 外は香ばしく、中はしっとりとしている感じですね。

松浦 断面を一面綺麗にロゼにしたり、グラデーションをつけたり、その時々の肉や調理法に合わせて見事に仕上げてきます。

小石原 実は私は一回しか行ったことがなくて。

駒沢大学〈ILGiOTTO〉(イタリアン)

炭焼きの肉を塩でいただく、プリミティブで豊かな体験。

肉に添えた野菜も美味。現在はお任せコース15,120円のみ(コペルト500円別)。
余分な水分を抜き、うまみが凝縮した肉。 「調理とは水分を抜くこと」と話す高橋シェフ。〈サカエヤ〉から届いた肉は冷蔵庫でさらに乾燥させる。熟成度の異なる肉の食べ比べも。
「調理とは水分を抜くこと」と話す高橋シェフ。〈サカエヤ〉から届いた肉は冷蔵庫でさらに乾燥させる。熟成度の異なる肉の食べ比べも。
精肉店と二人三脚でうまい肉を届ける。 魚料理を得意とした高橋直史シェフだが、肉卸の〈サカエヤ〉が仕上げる熟成肉と出会って以来、肉焼きに開眼。肉好きが集まる店に。
魚料理を得意とした高橋直史シェフだが、肉卸の〈サカエヤ〉が仕上げる熟成肉と出会って以来、肉焼きに開眼。肉好きが集まる店に。

〈ILGiOTTO〉

塊肉の炭焼きと同じくスペシャリテである前菜のハムのブルスケッタも松浦さんのおすすめ。

住所:東京都世田谷区駒沢5-21-9
TEL:03-6805-9229
営業時間:18:00~22:00
定休日:不定休
席数:12席

松浦 それはもったいない! ほかには〈メログラーノ〉の後藤シェフも同じようにお上手で、焼きをすごく研究していますね。ほかのレストランの焼き方もすごくよく見ていて、熱心な姿勢が素晴らしいなと思います。

小石原 いろんな匠がいますね。

松浦 ここまでの流れと少し違ったルーツを持つ〈クラフトミートラボ〉もおすすめです。牛肉好きが高じてIT業から精肉業に転身した店主なのですが、肉を酸化させずに熟成を進めるため、窒素を充填できるように冷蔵庫を改造するほど熟成を追求しています。

小石原 アカデミック!

松浦 鮮度命のホルモンも10日ほど寝かせて、柔らかい食感なのに臭みゼロ!

小石原 極まってますね。東京の肉シーン、まだまだ盛り上がりそうです!

〈メログラーノ〉

スパゲティ店を営んでいた父のもとに育ち、都内のイタリア料理店を経て渡伊。二ツ星レストランでも活躍したのち帰国。〈サカエヤ〉から炭火焼きに使う塊肉のほかトリッパも仕入れ、煮込みに使うなどさまざまな部位を取り扱う。メニューはアラカルト。
住所:東京都渋谷区広尾5-1-30

赤羽〈CRAFTMEAT&LAB.〉(肉料理)

牛肉をいかにおいしく食べるか、お客と一緒に追求するラボ。

コースの中盤に出る、シマチョウやシビレなどをしゃぶしゃぶしていただく鍋。ドリンク飲み放題込みで15,000円。
マッシュルーム2パック半でとるシンプルなだしは、それだけでうまみが大爆発。
窒素充填や超音波まで!研究を止めない職人。 代表の平田創士さんは卸業を中心に活動。12台の冷蔵・冷凍庫で仕上げた肉のセットは、オンラインショップでも購入可能だ。
代表の平田創士さんは卸業を中心に活動。12台の冷蔵・冷凍庫で仕上げた肉のセットは、オンラインショップでも購入可能だ。

〈CRAFTMEAT&LAB.〉

住所:東京都北区志茂2-40-9 PICCOLA-1 1F
TEL:なし
営業時間:12:00~16:00、17:00~23:00(1組8名の完全予約制)
定休日:不定休
席数:8席

次号のゲストは小宮山悠飛さんで、テーマは「ソロ飯の極意」です。

photo_Kaori Ouchi illustration_Chihiro Yoshii text_Kahoko Nishimura

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