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16年に渡る女のコ同士の友情を淡いタッチで描いた『ソウルメイト』【ものかきSYOがスウィートガールに捧ぐ今月の推し映画】

  • 2024.3.25

sweet誌面で映画や小説・漫画を毎号紹介している物書き・SYOさんが今月の推し映画を紹介する連載【ものかきSYOがスウィートガールに捧ぐ今月の推し映画】

vol.17の今回紹介する映画は、16年にも渡る女のコ同士の友情を淡く描いた、現在公開中の映画『ソウルメイト』。

昔から人見知りだし、人前に出るときはなるべく無害でありたいと思いつつ、これは作り手の性なのか――自分の中にこだわりだったり厳しさだったり、ドロドロした激情が渦巻いているのを日々感じている。そのひとつが「ダサいのが嫌」で、映像を観ているときに「カッコ悪いなぁ」と思うシーンがあると(それを狙っている場合は置いておいて)一気に冷めてしまう。もちろん画がカッコよくても芝居がズレていたり話に違和感があったりしたら「ううむ……」となってしまうのだが、“ダサさ”は肌感的なものであり、僕自身のエグさが強く出ている部分であろう。

そうした尺度で「え……これすごいお洒落じゃん」と感じてルックにまず魅了されたのが、2月23日公開の『ソウルメイト』。中国・香港合作の『ソウルメイト/七月と安生』(2016)の韓国版リメイク作だ。まず本国のポスターを見て「良……」と思い、予告を観て「良……」と思い、本編を観て「良……」と思った本作、ビジュアルと物語と演技の親和性が高く、ノイズを感じることなく観賞できた。

物語は、2人の親友=ソウルメイトの劇的な半生を描くもの。謎めいた画家ハウン(チョン・ソニ)による肖像画が、公募展で大賞に選ばれた。主催者から「作者と連絡を取りたい」と言われたミソ(キム・ダミ)は、「小さいときに遊んでいただけの仲」と言い張る。しかし2人には、特別な絆と周囲に隠している秘密があって……。というのが大まかなあらすじ。『ソウルメイト』は、現在と過去を行き来する形でミソとハウンの出会いから無二の親友になり、すれ違いが生じて疎遠になり、その後に再会し――といった過程を追っていく。その果てに、観客はミソとハウンの真実を知るのだ。

キム・ダミとチョン・ソニの演技×細やかな人物&心情描写が素晴らしく、ミソとハウンが嫌いなものを食べ合ったり誕生日を祝うシーンなどは微笑ましく見守ることができ、衝突してしまうシーンはこちらも心を痛めたりと共感・並走しているような感覚になる『ソウルメイト』。個人的に青春映画は同時代性だったり登場人物と年齢が近いほうが“ノレる”印象があるが、本作は僕自身とあまり共通項がないにもかかわらず、入り込んで観ることができた。

それはやはり、ミステリー要素を盛り込んだ興味を引く物語もさることながら、そこに丁寧に“エモ”を盛り込んでいるからだろう。たとえ実体験と照らし合わせて合致する部分がなくても(つまりわからなくても)、「画面の中にいる人物が好き」と感じれば「わかりたい」となるものだし、描写が細やかであるほど「自分は経験したことがないけどこの気持ちはわかる」な状態になっていく。そうした意味で『ソウルメイト』は、とても上手い。かといって懇切丁寧にセリフや描写で説明するのではなく、観客が感じ取るような“余白”を大切にしている印象を受ける。

そこで力を発揮するのが、冒頭に述べたお洒落さ。ピュアだった青春時代はセピア調で、衝突してしまうシリアスなシーンは陰影を強めてダークに、現在のシーンは青みがかったクールなトーンで……と様式を変化させ(しかもさりげなく)、画面全体で空気感を作り出している。構図や編集の仕方もセンスが良く、心情と映像が見事にリンクしている。観続けたくなるビジュアルが、冒頭から末尾まで続く快感。曖昧な表現で恐縮だが「あぁ、これはきちんと“いまの映画”だ」と思えたことが、自分の中ではとても大きかった(いきなり毒を吐いてしまうが、国内の映画・ドラマは映像・物語・演技等何かしらがダサいものもまだまだある……)。

そうした意味で、ノンストレスで観られる作品ともいえる『ソウルメイト』。仕事で疲れた平日の夜にふらりと映画館に寄って、満たされて帰る――というような効果も期待できる。もし興味があれば、まずはちらりと予告編を観て検討してみてほしい。

ソウルメイト

story:ミソとハウンは小学生からの大親友。性格も価値観も育ってきた環境も正反対だが、唯一の共通点は絵を描くのが好きなことだった。ずっと一緒に生きていくと約束する2人だったが、17歳の夏、ハウンに恋人ジヌができたことで少しずつ気持ちがすれ違っていく。そんな中、ミソは済州島を離れてソウルで暮らすことを決意。しかし、ソウルでの暮らしは精神的にも肉体的にも過酷だった。生きていくだけで必死な日々を過ごしていたミソだが、ハウンには絵の勉強をしながら旅をしていると嘘の手紙を送っていた。それから5年が経ち、再会を果たした2人は、釜山旅行に出掛ける。久しぶりに2人で過ごす時間に気持ちが昂るも、価値観の違いによって大喧嘩に。それを機に、疎遠になっていた16年目のある日、ハウンは忽然と姿を消した。2人だけの“秘密”を残して…。

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text : SYO

web edit : KAREN MIYAZAKI[sweet web]

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