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外食は週に何回までならいいか…親の悩みに管理栄養士が出した「外食」と「コンビニ食」の最終結論

  • 2024.3.24

夕飯を外食やコンビニ食にする場合、頻度やその内容についてどのような注意が必要か。子どもが喜ぶのでよく利用するというライターの武藤弘樹さんが、管理栄養士の成田崇信さんに聞いた――。

レストランでハンバーガーとフライドポテトを食べる小さな男の子の手元
※写真はイメージです
外食の日は「諦め」が肝心

子どもたちの食事担当たるわれわれ親・保護者は、おおむね「極力ちゃんとしたい」という思いのもと、日々の献立と向き合っている。とはいえたまには手抜きを許してほしい気持ちもある。

そうした親・保護者の、普段は聞きにくい疑問に真摯しんしに答えてくれるのは、管理栄養士の成田崇信さんである。前回の記事に詳しいが、すでに私筆者と担当編集者はこの人に、長く持ち続けてきた常識を気持ちのいい方向に覆してもらっている。

今回は、主に外食について聞いていきたい。

――前回、もしファミチキなどのジャンクフードをその日の夕食とする際、程度・頻度の問題や、「ひと手間を加える“誠意”を子どもに示す」など、いくつか気をつける点をうかがうことができました。

では外食に関して、我々親はどのような姿勢でいるのがいいのでしょうか? 回転寿司、ファストフード、ラーメン、ファミレス等、子どもが喜ぶので私もよく行くのですが、栄養面でいうと、そういった日は「野菜を食べられていないなあ……」というのを親として常々感じます。

【成田さん】諦めていいですよ(笑)

――えっ、諦めていい? ありがとうございます……!

「毎日規則正しい食生活をしなければいけない」なんてことはない

【成田さん】諦めていいんだけど、やはり子どもに対するポーズですね。「外食だから野菜ゼロでいいよ」ではなく、子ども用にたとえばコールスローサラダでもいいし、付け合わせになるものでもいいし、1品だけポンと(栄養に配慮したものを)注文してあげると。

あともうひとつは、外食が多くなる週は、「外食に行くと根菜類を食べないな」「緑の葉っぱがないな」という具合に不足しがちなものを覚えておいて、外食以外の日に食べてバランスを取る……要は、「毎日規則正しい食生活をしなくちゃいけない」なんてことは全然なくて、大人なら1週間、子どもだとバランスが崩れやすいので3日か4日の中で、平均的に栄養バランスを整えてあげられればいいかと思います。

子どもは蓄えられる栄養の量が少ない

――大人と子どもで、目安にするべき期間が違うのはなぜでしょうか? 子どもの期間の方が短いのにはどのような理由がありますか?

【成田さん】栄養を蓄えられる量が大人と子どもで違うからです。ちょっと食事からは話がずれるんですが、脱水状態が起こりやすいのって、高齢者と子どもなんですね。これはなぜかというと、筋肉量が少ないからです。筋肉の80%は水でできていて、体に水を蓄える貯水池のような役割を果たしています。

栄養を蓄えるのは肝臓で、子どもは大人に比べれば肝臓は小さく体重も軽い(筋肉が少ない)ので、相対的に栄養を蓄える量が少ない。しかも一回にたくさん食べられない。……なんですけど、子どもは成長期なので、成長のために多くの栄養を必要とします。ですので、子どもの場合は目安として、大人より短いスパンの3~4日で栄養バランスを考えてあげるのがいいです。たとえば揚げ物を食べる日があったら、3、4日間は揚げ物にはしないとか。

「肉・肉・魚……」といったメインの組み合わせや順番も、だいたいでいいんですよ。「メインになる、タンパク質を多く取れるものが1品あって――」というのが理想なんですけど、ない時があってもいいんですよ。じゃあその1品がなかった次の日の朝は「普段、朝はいい加減だけどしっかり食べさせてあげよう」とか。

栄養の偏った食事や不十分な食事が連続しないように配慮したい、というのは注意すべきポイントとしてあると思いますね。

給食を食べる小学生
※写真はイメージです

――なるほど。献立に変化をつけることで子どもも飽きずに食べてくれそうですね。

「おにぎりのもと」の意外な使い方

【成田さん】それでいうと、おにぎりのもとはオススメです。ご飯に混ぜて握るとおにぎりが完成するタイプのものですが、これをご飯に混ぜて、「混ぜご飯」と言って出せばいいんですよ。面倒くさいからおにぎりにしない(笑)。

――賢い(笑)。味もついているから子どもは嬉しいですね。栄養的には、たとえば「のりたま」は玉子として考えていいんですか?

【成田さん】いや、考えなくていいですよ。「ひと手間かけているフリ」ということですね。でも子どもとしては、いい加減なものを出された感は少なくて済む。「忙しい中で用意してくれた」って思ってもらえるかもしれないけど、実際は大したことはしていない。この場合は、栄養としてカウントするのではなく、子どもに対していかに“誠意”を示すか……ということですね。

外食で気を付けたいのは「油」

――成田さんが他のところで、「ファストフードは週に2回までなら」とおっしゃっていたのを拝見し、印象に残っています。これも「全体の兼ね合いを見ながら」ということになるのですね。

【成田さん】ファストフードやレストランでは、揚げ物をカリッとさせるために油に特徴があります。おいしいとんかつのお店ではラードの割合が高い油が使われています。ラードで揚げると冷めたあともカリッと感が残ります。なので、外食の揚げ物って、そういった飽和脂肪酸が多い油が使われることが多いです。植物油が使われていなくて、使われていたとしてもせいぜいパーム油とか。これもラード同様、常温では固体なので飽和脂肪酸が多い油です。

とんかつ定食
※写真はイメージです

飽和脂肪酸を摂取しすぎると大人ならコレステロールが高くなるリスクがあります。また必須な栄養素ではないので、そっちの割合ばかり多くなると、体に必要な不飽和脂肪酸が十分に取れなくなってしまう心配があります。子どものうちからその味に慣れて、大人になってもそればかり食べ続けると、早い年齢で循環器系の病気にかかってしまうこともあると。

行く外食のバリエーションを考える

【成田さん】それと、頻度を気にするだけでなく、種類を分けたほうがいいかなと思います。今、ファストフードや外食っていろんな種類が増えたと思うんですよ。だから回転寿司に行ったら、次は回転寿司ではなくフライドチキンでもいいですしハンバーガーでもいいですし、カレーチェーンでもいい。種類を分けるというのも、外食をうまく使うコツじゃないかなと最近考えています。

種類を変えるといっても、「バーガーの次に牛丼」ではなく、肉の次に魚にしたり、揚げ物の次は揚げ物を避けたり……というような組み合わせです。

これを週に2回やるのが、望ましいわけではないけど、もしやるとしたら、そういう気配りをする余地はあるんじゃないかなと思っています。

「コンビニ食」も食育のいい機会になる

――外食に近くなりますが、コンビニで家族の食事を賄う場合のアドバイスがもしあればお教えください。

【成田さん】日頃からあまり栄養バランスを考えない人や、考えたくない人は弁当を買ってあげるといいと思います。

焼き鮭弁当
※写真はイメージです

――なるほど。栄養バランスにも配慮されていますし、おかずが数種類入っていることが、子どもへの「偏食しないように」といったメッセージにもなりますね。

【成田さん】はい。それか、子どもと一緒にコンビニに行くのもいいですね。「どれか好きなものを選んで」と言って。それで、子どもが選んだのが弁当じゃなかったら、栄養バランスに配慮した1品を「これも栄養を考えて食べるんだよ」と渡す。食育のいい機会にできます。

「考える」のが面倒な人は子どもに選ばせる

【成田さん】もう数年前の懐かしい話ですけど、食事の用意が面倒な日曜の朝、子ども2人にお金だけ渡して「コンビニで何か買ってきな」とやると、「おにぎりだけ」や「麺」などそれぞれ買い物の仕方に個性が出ました。それを通じて、子どもが栄養についてどれくらい配慮しているか知れるので、もしそれが不十分に感じたら、「この子にはもうちょっとちゃんと教えなきゃな」と、こちらも適切に対応する準備が整います。

――子どもの意識を育てるべく、子どもを巻き込んでいくというアプローチも大切ですね。お金を渡してもらってコンビニで買い物するのも、子どもとしてはワクワクしますよね。

【成田さん】考えるのが面倒な親にとっては、子どもに好きなものを取らせるっていうのが楽かもしれません(笑)。

――そう! 日々考えるのが大変なんですよね。

【成田さん】いや、考えるのって大変ですよね。栄養価だけではなく、「これ、子ども食べるかな?」というところも大きいですからね。

「手抜き」をポジティブな食育の一環に昇華させる

今回は外食やコンビニ食を利用する際に工夫できることがいくつか見つかった。栄養バランスに配慮すると同時に、“子どもへの誠意のポーズ”や「連続性を極力なくす」といったことを念頭に置くのが肝要である。これらが実践できれば、必要以上に罪の意識をもつことなく外食・コンビニ食を利用できそうだ。

また、子どもに主体的にメニューを選ばせることで、子どもの理解度を測り、食育を直接施す有益な機会とすることもできる。

「親・保護者の手抜きのため」とだけ考えると外食・ファストフードの利用は後ろ暗く感じられがちだが、日々奮闘する親・保護者にとっては手抜きするシーンも子育てにおいて必要な一幕である。

適切な考え方と距離感で外食・ファストフードと向き合うことで、それまでネガティブに捉えられていたものをポジティブに活用することができるかもしれない。親としてはぜひ全てをいい方向に調整して、「この手抜きもポジティブな食育の一環」と胸を張れるようにしたい次第である。

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