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「ここから出してきれいにしてあげたい」地震の土砂崩れ現場で捜索 男性と同じ活躍と、女性だからできた「気づき」女性警察官が刻んだ覚悟

  • 2024.3.22

能登半島地震で甚大な被害を受けた石川県珠洲市で、2月、北海道警察の女性警察官が、安否不明者の捜索にあたりました。

「女性も災害現場で活躍できると証明したい」。

強い気持ちで臨んだ捜索活動を通し、27歳の女性は新たな覚悟を胸に刻みました。

北海道警察の広域緊急援助隊で特別救助班に所属する、山崎公子隊員(27)。

能登半島地震の現場を振り返り、「衝撃的だった」と話します。

土砂崩れの現場を見ること自体が初めて。

「家や車が簡単に押し流されてつぶされていて…」とそのときの光景を教えてくれました。

1月31日、北海道小樽港を出発した道警の広域緊急援助隊。

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石川県へ出発する道警車両(北海道小樽市 1月31日)

被災地に入ってすぐに、想像を超える現実を突きつけられました。

家屋の倒壊や道路の陥没…。

石川県の中心部の状況は、事前にもっていた情報やイメージしていたものよりも「ずっと悲惨だった」のだといいます。

土砂を連日かき分け、見つけた不明者

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岩や木で捜索は難航(石川県珠洲市仁江町 2月)(道警提供)

入った現場は珠洲市仁江町(にえまち)。

土砂の量や範囲、規模も、想像より大きくて、「これは非常に厳しい捜索活動になる」というのが第一印象でした。

派遣された道警の隊員85人のうち、女性は山崎さんただ1人。

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道警が女性隊員を道外の被災地に派遣したのは、2019年の「東日本台風」のときが初めてで、今回が2度目です。

「ずっと災害現場に行きたいと思っていた」という山崎さん。

「同じ想いを持っている女性はまだいると思う。ただ自分ができなくて『女性は連れて行かないほうがいいのかな』と思われてしまうと自分の責任かなというのもあった」

だからこそ、能登の現場では、「『女性でも活躍できるんだ』というのを証明出来たらいいなと思って」という強い決意も持っていたといいます。

現場は、石川県珠洲市仁江町の、崩落した山から流れて来た土砂に巻き込まれた住宅。

男女2人が安否不明のまま、見つかっていませんでした。

土砂を取り除こうにも、大きな岩や木の幹が阻み、土が固まってスコップも入らず、捜索は困難を極めました。

それでも隊員どうし、声を掛け合い、士気を高めながら、朝から日没まで、連日捜索を続けました。

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木の幹をチェーンソーで取り除き車両を掘り出す(石川県珠洲市仁江町 2月)(道警提供)

重機を使いながら土砂をよけていくと、1台の軽トラックが見つかりました。

地震の発生時、住宅のそばにあった軽トラックです。

「安否不明者が近くにいるのではないか」

軽トラックにかぶさっていた木の幹をチェーンソーで取り除き、さらに掘り進めます。

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バケツリレーで土砂を運び出す(石川県珠洲市仁江町 2月)(道警提供)

山崎さんは、「『必ず安否不明者を発見する』という気持ちを持って現場に向かって、掘っているあいだも『絶対、ここにいるかもしれないんだ』と思いながら、もうひたすらに掘っていましたね」とこのときを振り返ります。

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現場で活動する山崎隊員(中央)(石川県珠洲市仁江町 2月)(道警提供)

北海道警が捜索を始めて5日目。

3メートルもの土砂の下から、男性が見つかりました。

探していた安否不明者のうちの1人でした。

地震発生から1か月あまりが経っていました。

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発見された安否不明者は、その後親族のもとに帰された(石川県珠洲市仁江町 2月6日)(道警提供)

「すぐにここから出してきれいにしてあげたい」

山崎さんは真っ先にそう思ったといいます。

「私たちの活動が少しでも被災者のためになれたのかな」

男性と同じように活躍…一方で女性だからできたこと

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「体を動かす仕事がしたい」と警察官を志した山崎さん。

警察学校時代の女性隊員との出会いが、進む道を決めました。

それは機動隊での救助訓練の見学をしていたときのこと。

機動隊には「特務中隊」という、水の事故や山岳遭難の現場で活躍する人命救助のスペシャリストたちがいます。

その特務中隊に女性隊員が一人在籍していました。

訓練では、その女性隊員が中心となって活動する様子がとても印象的だったのだそうです。

「すごくかっこいいな、自分もそういった活動がしたいと憧れて特務中隊を目指しました」

山崎さんはその後、2021年に特務中隊に配属。

男性隊員と同じ厳しい訓練を積み重ねてきました。

山崎さんの今回の活動について、上司の小山内さんは「男性と同じように活躍していただいた」と評価します。

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「山崎さんは、本当に精神的にも強いですし、体力もあります。男性隊員と比べると体格面は少し劣る部分もあるかもしれませんが、本人が努力していますし、実際に訓練や現場でも差がありません」と太鼓判をおします。

「むしろ知識や技術は、男性隊員より勝る部分もあり、頼もしい存在です」と教えてくれました。

一方で、女性隊員としての「気づき」もありました。

石川県で活動した8日間、山崎さんは男性隊員と同じ宿舎で寝泊まりし、着替えはテントを利用していました。

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宿舎の一角に設置した縦型テントが女性更衣室に(珠洲市産業センター 2月)(道警提供)

こうした、救助の活動拠点もそうですが、被災地は、男性用・女性用というプライバシーの区別をつけることが改めて難しいと感じたのだといいます。

例えば、断水でトイレが使えなかったり、更衣室が崩れてしまっていて使えなかったり…。

山崎さん自身は更衣室として使えるようにテントを個別に持っていって対応しましたが、「避難所生活を送る上で、防犯対策も含め、プライベートな空間を作れるような災害資器材を用意しておくのも大切」と再確認できたといいます。

女性隊員もいるから一緒にがんばろう

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宿舎で指示を受ける道警の隊員たち(珠洲市産業センター 2月)(道警提供)

2024年3月11日で東日本大震災から13年。

その後も2016年熊本地震、2018年北海道胆振東部地震、今年の能登半島地震と、大きな地震が繰り返し発生してきました。

山崎さんは、女性隊員だからこそ災害現場で果たせる役割もあると考えています。

人命救助活動の中で「一番つらい思いをする」と山崎さんが感じるのが災害の現場。

そういった場面だからこそ、女性隊員がいることでの安心感があるのではないか。

「男性だけじゃなく、女性隊員も来ているので一緒に頑張りましょう」と声がけする気持ちを大事にしています。

女性が声がけすることで元気をもらえる人もいると信じて…。

「しっかり活動ができる隊員に自分もならなければいけないですし、『やりたい』と思う人がいればぜひ目指してもらいたい」

力強く、そう話してくれました。

文:HBC報道部道警担当キャップ 大佐賀南
編集:Sitakke編集部あい

※掲載の内容は2024年3月8日時点の情報に基づきます。

◇取材 HBC道警担当キャップ 大佐賀南

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