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【完璧な肉じゃが】これなら「得意料理は肉じゃがです」ってガチで言える!

  • 2024.3.22

「メシマズ」とは?

「作るメシがマズイ」の意。ネットの世界では「味が極端にマズイ」「見た目も味もひどい」など、激しいものを指すことが多いですが、この連載では「料理歴はそこそこあるのに味が微妙・たまに成功するけれど、だいたいおいしくない」といった意味で使用しています。

【登場人物】

教えてくれるのは…

料理研究家

小田真規子さん

著書やテレビ出演多数! 長年第一線で活躍しているプロ中のプロ。料理初心者にも寄り添ってくれる、手取り足取りなレシピに定評あり。

教わるのは…
エディター オギ

料理歴は大学時代から一応10年以上の独身アラサーエディター。健康や美容に興味はあるが、基本ズボラ。

マンガでわかる「肉じゃが」の作り方

【完璧な肉じゃが】これなら「得意料理は肉じゃがです」ってガチで言える!
【完璧な肉じゃが】これなら「得意料理は肉じゃがです」ってガチで言える!

煮物って、どこまで煮込んでいいの?

オギ

煮物料理って、実はわからないことだらけなんです。どこまで煮込むのか、調味料をいつ入れたらいいのか、無限に出るアクをいつまで取り続ければいいのか……。


小田先生

煮物料理は、意外に難しいんです。素材や量によって味が決まりにくいところがありますからね。


オギ

いちおう煮ればそれらしきものはできるのですが、「ジャガイモやカボチャは煮崩れるのに、ニンジンは硬い」「味がしみてない」みたいなことも日常茶飯事です。


小田先生

では、煮物料理克服を目指して、王道の「肉じゃが」を作ってみましょう。


オギ

「得意料理は肉じゃがです」って言ってみたい!


小田先生

煮物料理のお悩みを解決し、定番・肉じゃがをおいしく美しく仕上げるポイントは、次の5つです。

1 具材の大きさを揃える→火通りを均一にするため
2 具材を大きめに切る、余熱を利用する→煮崩れを防ぐため
3 肉より先にジャガイモを炒める→旨味を引き出すため
4 肉は後から炒める→柔らかく煮上げるため
5 肉に下味をつける→味にパンチを出して肉も主役級にするため


オギ

肉から先に炒めるのかと思ってましたが、違うんですか!?


小田先生

そのあたりも作りながら解説していきましょう! 今回のレシピはこちらです。


*肉じゃが*

【完璧な肉じゃが】これなら「得意料理は肉じゃがです」ってガチで言える!

■材料(2〜3人分)
ジャガイモ:3~4個(正味350~400g)
豚肩ロース肉:200g
<A>
醤油:大さじ1
砂糖:大さじ1
玉ねぎ:1個(200g)
サラダ油:大さじ1
水:1カップ
<B>
みりん:大さじ3
しょうゆ:大さじ3
砂糖:大さじ1

■作り方
肉は2等分に切って、Aの下味を絡める。
玉ねぎは縦半分に切り、1個を8等分に切る。
ジャガイモはよく洗って皮をむき、1個を2~3等分に切って水にさらす。
直径20cmの鍋に油を入れて中火で熱し、水気を拭いたジャガイモ、玉ねぎを加え、2分炒める。全体に油が回ったら、肉をざっと広げて加える。
水を注ぎ、煮立ったらアクを取る。
Bを加えて強火にする。再び煮立ったら弱火にして濡らしたキッチンペーパーをかぶせ、フタをずらして13~15分煮る。火からおろして10分蒸らす。

煮物攻略の鍵は「具材の切り方」

小田先生

まず、ジャガイモの皮をむいていきましょう。


【完璧な肉じゃが】これなら「得意料理は肉じゃがです」ってガチで言える!
オギ

あれ? ピーラーを使わないんですか?


小田先生

ピーラーでもいいのですが、できれば包丁がおすすめです。ピーラーで表面を削ると表面がザラザラになって、でんぷんがたくさん出て煮汁にとろみがつきやすいんです。包丁のほうが、表面がつるっとむけるので、仕上がりもきれいです。そして、芽もきちんと取り除きましょう。苦みやえぐみが出てしまうので。


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オギ

「芽はちゃんと取らないと死ぬ」って家庭科の先生に言われた記憶があるので、これだけはしっかり取っています!


小田先生

死ぬことはないと思いますが(笑)、ソラニンなど毒性がある成分を含んでいるのは確かなので、きちんと取り除きましょう。皮をむいたら、水を張ったボウルに入れてさらします。


【完璧な肉じゃが】これなら「得意料理は肉じゃがです」ってガチで言える!
オギ

水にさらすのは、どうしてですか?


小田先生

ジャガイモのでんぷん質を取り除くためです。でんぷんが残っていると、煮汁にとろみがついて、調味料が具材の中に入っていきにくくなるんです。


オギ

あと、先に全部皮をむくのにも理由があるんでしょうか。私はいつも、皮をむいたらすぐにひと口大に切っているのですが。


小田先生

そのやり方だと、形や大きさを揃えることができません。だから、先に皮をむいて、すべてのジャガイモの形や大きさをちゃんと確認してから切ってほしいんです。


オギ

すべてのジャガイモの形や大きさを確認する?


小田先生

ジャガイモは、1つ1つの形や大きさにバラつきがありますよね。何となく1つずつひと口大に切っていくと、形や大きさが不揃いになって、火が通る時間にもバラつきが出てしまいます。だから、全部のジャガイモを見て、「このくらいの形や大きさに揃えよう」と考えながら切っていく必要があるんです。


オギ

「煮崩れている部分があるのに、なぜか硬い部分もある」っていう失敗パターンを回避できるかどうか、この段階で決まるんですね。


小田先生

今回は、3~4等分くらいの大きめサイズに切っていきましょう。


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オギ

こんなに形と大きさがキレイに揃ってるジャガイモ、初めて見ました! むく・切るという手間は同じなのに、ちょっと順番を変えて一瞬「考える」時間を設けるだけで、ここまで差が出るんですね。


小田先生

面倒に感じるかもしれませんが、実は手間自体が増えているわけではないんです。少し「考えながら」作業していくだけで、メシウマになれるんですよ。
玉ねぎも、火が通る時間をジャガイモと揃えるために、主役級の大きさに切っていきます。8等分くらいの大きめサイズですね。それに、煮上がったときにちゃんと形が残っていると、玉ねぎの甘みが楽しめるんです。


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小田先生

肉については、牛肉か豚肉か好みが分かれるところですが、今回は豚肉で。味つけは、豚肉を使うならあっさりめ、牛肉を使うなら比較的しっかりめがおすすめです。
豚の肩ロースを半分に切ったら、下味をつけましょう。しょうゆ→砂糖の順に投入して、ボウルの底に汁気がなくなるくらいまで、しっかり揉み込みます。


【完璧な肉じゃが】これなら「得意料理は肉じゃがです」ってガチで言える!
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オギ

肉は、煮汁で味がつくからと、いつもそのまま鍋に投入していました。


小田先生

それでも間違いではないんです。一般的なレシピだと、「ジャガイモ、玉ねぎ、肉を炒めてから調味料を投入」という順番なので。でも、それだと味にパンチがなく、肉自体も硬くパサパサになりがちなんです。


オギ

確かに肉はオマケ的なイメージです。


小田先生

それだと「肉じゃが」ではなく、「じゃが肉」になってしまい、せっかく肉を使うのにもったいないですよね。主役はもちろんジャガイモですが、肉も主役級になれるよう下味をつけましょう。そのほうがジャガイモと肉の味にメリハリが出て、おいしさが増すんです。


オギ

肉じゃがといえば、あとはニンジンですよね?


小田先生

今回はニンジンなしのレシピです。私は、肉じゃがの必須食材はジャガイモ・玉ねぎ・肉の3つだと思うんです。もちろんニンジンを入れてもいいのですが、火通りが悪い。メシマズさんは面倒を見る食材をなるべく減らすのが成功のコツです。


オギ

まさにメシマズ仕様のレシピなんですね! でも、自分で作るときは「とにかく煮ればすべて火が通る」と考えていたので、「食材1つ1つの面倒を見る」なんて細やかに考えたことがなかったです。結果、ニンジンに火を通すため、ジャガイモの煮崩れは見て見ぬフリをしていました。


小田先生

だから最初のうちは、加熱時間を気にしないといけないものを増やさないほうがいいんです。


王道の煮物・肉じゃがは「炒める順番」でおいしさが決まる!

小田先生

では、ジャガイモを炒めましょう。その前に、キッチンペーパーできちんと水分を拭き取ります。


【完璧な肉じゃが】これなら「得意料理は肉じゃがです」ってガチで言える!
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オギ

自分で作るときは、水気を拭き取るなんてやったことがなかった……メシマズがスルーしがちな手順ですね(笑)。


小田先生

水気が残ったままだと油がハネるし、鍋の温度も下がってしまうので、スルー厳禁ですよ。水気を拭いたら、ジャガイモを中火で熱した鍋に投入します。ジャガイモを入れたとき、ジュッと音がするくらい、しっかり油を熱しておきましょう。


【完璧な肉じゃが】これなら「得意料理は肉じゃがです」ってガチで言える!
オギ

先に肉から炒めるイメージがあったのですが、まずジャガイモから炒めるんですね。


小田先生

実はここが、おいしい肉じゃがを作るポイント。先にジャガイモだけ転がしながらしっかり炒めることで、ジャガイモの持っている旨味と甘みが引き出されて、味わい深い肉じゃがになります。


オギ

ジャガイモってどちらかというと淡泊なイメージだったので、旨味って意外です。


小田先生

それは、調理で旨味を引き出せていないのかもしれませんね。ジャガイモにはグルタミン酸が豊富に含まれているので、旨味が濃いんです。

では、玉ねぎも加えてさらに2分炒めます。


【完璧な肉じゃが】これなら「得意料理は肉じゃがです」ってガチで言える!
オギ

2分って思ったより長いですね。


小田先生

ジャガイモや玉ねぎを触って「温かい」と感じるくらいまでしっかり炒めましょう。どうせ煮込むからと短時間しか炒めない人も多いのですが、しっかり炒めるとジャガイモは表面に焼き色がついて香ばしくなりますし、玉ねぎは甘みが出てきます。この旨味や甘みが肉じゃがの味のベースになるんです。


オギ

いい匂いがしてきました!


小田先生

具材がしっかり温まって、香りも立ってきたところで、肉を加えます。


【完璧な肉じゃが】これなら「得意料理は肉じゃがです」ってガチで言える!
小田先生

肉の色がうっすら変わるくらいまで炒めたら……


【完璧な肉じゃが】これなら「得意料理は肉じゃがです」ってガチで言える!
小田先生

水を投入します。


【完璧な肉じゃが】これなら「得意料理は肉じゃがです」ってガチで言える!
オギ

自分で作るときは、もっと肉の色がしっかり変わるまで炒めていました。


小田先生

炒めすぎると肉が硬くなってしまうので、うっすら色が変わる程度の炒め具合でOKです。温まったジャガイモと玉ねぎの熱を利用してじんわり火を通すことで、肉が柔らかく仕上がります。


オギ

肉がいつもパサついていた理由がわかりました……。


小田先生

水を入れたら、1回沸騰させましょう。これも勘違いしている方がいますが、沸騰って「泡が出てくればOK」というわけではないので注意してくださいね。鍋の端も真ん中も、まんべんなくグツグツしているこの状態が「沸騰」です。


【完璧な肉じゃが】これなら「得意料理は肉じゃがです」ってガチで言える!
小田先生

アクは沸騰させないと出てきません。中途半端に火を通した状態だと、アクなのか何なのかよくわからないものを取り除くことになってしまいます。


オギ

わかります。たぶんアクだよね?とよくわからないものを必死ですくっていました。それに、アクって永遠に出続ける気がするのですが、どこまで取ればいいんでしょうか?


小田先生

絶対取らなくてはいけないものではないので、目立つものを取り除くだけでじゅうぶんです。取ったほうが、味がスッキリしますよ。


【完璧な肉じゃが】これなら「得意料理は肉じゃがです」ってガチで言える!
小田先生

アクを取ったら、調味料を投入します。まず、溶けにくい砂糖から。次にみりん、しょうゆを加えます。液体を加えると温度が下がるので、再度沸騰させましょう。


【完璧な肉じゃが】これなら「得意料理は肉じゃがです」ってガチで言える!
小田先生

グツグツと沸騰してきたら、濡らしたキッチンペーパーを軽く絞ったもので落とし蓋をします。


【完璧な肉じゃが】これなら「得意料理は肉じゃがです」ってガチで言える!
オギ

落とし蓋はアルミ箔でもいいんでしょうか?


小田先生

アルミ箔だと、クシャっとしたときに角ができますよね。ジャガイモのように煮込むとだんだん柔らかくなる食材は、その角が当たると煮崩れの原因になります。だから、柔らかいキッチンペーパーのほうがいいんです。肉や大根など、煮崩れが気にならない食材なら、アルミ箔でも構いません。


オギ

落とし蓋の素材でそんな違いがあったとは! でも、実は肉じゃがで落とし蓋を使ったことがなかったです……。


小田先生

落とし蓋をすることで煮汁が対流して食材にムラなくいきわたるので表面も乾きません。また、味が均一に染み込みやすくなるんですよ。


オギ

自分で作ると、煮汁に触れているジャガイモの下のほうは茶色いのに、上のほうは白くてまだらになっていることが多いんです。落とし蓋をしていなかったせいなんですね。


小田先生

長年の失敗の原因がわかったところで(笑)、さらに蓋をして煮込んでいきます。完全に蓋をしてしまうと温度が高くなり過ぎるので、菜箸などを挟んで少し隙間を作り、弱火にしてください。


【完璧な肉じゃが】これなら「得意料理は肉じゃがです」ってガチで言える!
小田先生

この状態で13〜15分煮込んで火から下ろし、蓋を外して(落とし蓋はしたまま)10分蒸らします。


オギ

蒸らすことにはどんな意味が?


小田先生

煮崩れ防止です。長く煮るほど煮崩れしやすくなるので、煮込む時間は最小限に抑え、蒸らしながら余熱で仕上げます。冷めるときに味が染み込んでいくので、味をなじませる意味合いもあります。では、落とし蓋を外して火通りを確かめてみましょう。


【完璧な肉じゃが】これなら「得意料理は肉じゃがです」ってガチで言える!
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オギ

どれもキレイな形を保ってるし、まったく煮崩れてません! そしてちゃんと火も通っています。正直、自分で作るときより、かなりジャガイモが大きめサイズだったので「火がちゃんと通るの?」と思っていたのですが、まったくの杞憂でした。


小田先生

余熱を利用すれば、大きめサイズでもちゃんと火が通ります。大きめに切ったほうが、多少煮崩れて煮汁に溶け出しても、形がちゃんとキープできるんです。


オギ

私が作ると、煮汁にジャガイモのかけらがたくさん浮いているのですが、煮汁も澄んでいてキレイです。それに、見ただけでムラなく全体が「しみしみ~」になっているのが伝わってきます。落とし蓋効果ってすごい! 盛り付けると、肉や玉ねぎもちゃんと存在感がありますね。


完成!

【完璧な肉じゃが】これなら「得意料理は肉じゃがです」ってガチで言える!
オギ

ジャガイモはホクホク、玉ねぎも噛むと甘みがジュワッと出てきて、肉も柔らか。これが本当の肉じゃがなんですね! ごちそう感がスゴイです。


小田先生

最初にお話しした5つのポイントを押さえれば、簡単においしい肉じゃがができるので、ぜひ家でも作ってみてください!


【今回の学び】煮込み料理は「歯ごたえ」も超重要!

今回は、改めて歯ごたえの大切さを知りました! 自分の肉じゃがは、火通りをよくしようと小さめに切っていたんですが、そのぶん歯ごたえが犠牲になっていたんですね。プロの肉じゃがは、大きめサイズなのにちゃんとお箸で割ることができて歯ごたえがちゃんとしているから、食べるのが楽しいんです。小田先生も「歯ごたえが硬すぎたり柔らかすぎたりすると『早く食べてなかったことにしたい』と食べることがノルマのようになり、食事が楽しくなくなる」とおっしゃっていました。煮込み料理はただ長く煮ればいいってものじゃない、ということがよくわかった回でした。

次回予告:カボチャの甘煮

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撮影/国井美奈子 監修/小田真規子 イラスト/大窪史乃 取材・文/伊藤彩子

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