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【家庭内トラブル】「人の荷物を勝手に開ける」は法律違反?家族でもNG?弁護士が解説

  • 2024.3.22

人の荷物の開封アリ?ナシ?SNSでたびたび物議

人の荷物の開封アリ?ナシ?SNSでたびたび物議
人の荷物の開封アリ?ナシ?SNSでたびたび物議

日々SNSやネット上では情報や意見が交わされている現在。なかでも度々巻き起こっているのが、「他人宛ての荷物を勝手に開封するのは有りか無しか」という議論です。個人の価値観の違いと言えばそれまでですが、それぞれの意見や法的に問題はあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

話題を集めている理由は、家族に勝手に荷物を開封されたことに憤りを感じる人が多いからではないでしょうか。自分宛の荷物を同意なく夫や妻に開けられたケースや、ネットショップで買ったものを親が勝手に開封して確認されたというケースがあるようです。

世間の意見を見てみると、他人の荷物を勝手に開封するのは「ダメ」という声が多い模様。ネット上でも「個人名義で届いた荷物はさすがに開封しないな」「夫婦や兄弟、子どもの荷物であってもそれはダメ」という声があがっています。

一方で何らかの事情によりやむを得ず開封するのは仕方ないという意見も。例えば未成年の子ども宛に届いた荷物を、心配だからという理由で親が開封するのは理解できるという人もいるようです。

単なる興味や善意によって他人に開封されたくない場合に備え、さまざまな工夫がおこなわれています。例えば家族に開けられたくない荷物が届く場合、あらかじめ「開封を楽しみにしている荷物が届くから開けないでね」と伝えておくほか、コンビニ受け取りを指定して、そもそも家族が開けられないようにしているという人もいました。

さまざまな意見が飛び交う荷物の開封問題。「家族でもNG」という声が多くあがっていますが、「夫に渡しても見ないで放置される。対処しないといけないものだとまずいから開封してるよ」など、理由付きで開封する人も多くいます。

プライベートな荷物や手紙を、家族が開封することに問題はないのでしょうか?罪に問われる可能性はあるのでしょうか。弁護士の菅野正太先生にお話を伺いました。

信書については「信書開封罪」にあたることも

人の荷物の開封は法に触れる可能性もある?
人の荷物の開封は法に触れる可能性もある?

Q.他人宛の荷物の開封行為が罪に問われる場合はありますか?

菅野先生「送付物が『信書』の場合は罪になることがあります。

我が国の刑法では、他人の荷物等の開封について、特に『信書』に関して、133条で『正当な理由がないのに、封をしてある信書を開けた者は、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。』と信書開封罪を定めています。

そのため、他人宛ての信書を正当な理由なく開封すれば、それは罪に当たる行為となります。この信書開封罪は、文字どおり『信書』を対象としています。『信書』とは、特定人から特定人に対し、自己の意思を伝達する文書等を指しており、個人に宛てた手紙などはもちろん、契約書、請求書なども広く含みます。ただし、郵便小包や写真などは、送付物自体だけでは意思を伝達する文章に当たらないため、信書から除かれます。

また、本罪は、信書の秘密を保護し、受発信者のプライバシー確保に資するものであるため、カタログなど、特定の受信者に向けて送付されるようなものでない場合も、信書には該当しません。

加えて、本罪は、『封をしてある』信書である必要があるため、信書の内容が外部から明らかにならないよう何らかの措置がなされている必要があります。わかりやすいものでは糊付けされた封筒に手紙を入れることなどがあげられるでしょう。この観点から、普通ハガキなども信書から除外されるといえます。

そして、本罪に該当する場合は、1年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処される可能性があります。ただし、本罪は親告罪であるため、被害者(受発信者双方が該当します。)からの告訴がなければ処罰の対象とはなりません」

Q.信書開封罪は、開封するのが家族であっても罪になるのでしょうか?

菅野先生「例えば、窃盗罪などの場合は、刑法244条において、一定の親族間について刑を免除するなどの規定がありますが、信書開封罪にはそのような例外規定はありません。そのため、家族であっても信書開封罪に該当する可能性があります。

ただし、本罪が成立するのは、正当な理由なく封をしてある信書を開封した場合に限られます。正当な理由がある場合とは、法令上信書の開封が認められている場合や本人が承諾しているときなどがあげられます。本人の承諾があるか否かというのは、単に明示的に承諾している場合だけではなく、当事者の関係性やその時の個別具体的な状況に照らして、本人が拒否しないであろうという推定的な承諾も含みます。

そのため、夫婦などの場合で、どちらかが普段から家計を管理し、これに異議が述べられていない場合、夫婦の一方宛てに届いた請求書を、家計を管理している他方の側が開封しているとしても、そのことから直ちに本罪が成立することにはならないでしょう。

また、親子間で、子どもが未成年者の場合などは、その監督が行き過ぎることがない限りは、監護教育や財産管理に必要な親権の行使として許容されるといっていいと思います(民法820条、同824条)」

Q.改めて「信書」とは具体的にどのようなものでしょうか。使用シーンを教えてください。

菅野先生「『信書』は、特定人から特定人に対し、自己の意思を伝達する文書等を指しております。個人に宛てた手紙などはもちろん、契約書、請求書なども広く含んでおり、小包や写真などは、送付物自体だけで意思を伝達する文章に当たらないため、信書からは除かれます。そのため、このような場合だから信書という手段を使うというよりも、郵便物や送付物などの中に、信書と分類されるものがあるというイメージの方が正確かもしれません。

なお、信書の開封ではなく、信書をそのまま隠し持ったりする行為などは、信書隠匿罪(刑法263条)、文書の毀棄を伴う場合は、文書毀棄罪(刑法258条、同259条)がそれぞれ成立します」

Q.実際に信書の「開封」行為が罪になった事例はありますか?

菅野先生「信書開封罪そのものが問われている裁判例はあまり多くありません。これは本罪が親告罪であり、告訴がなければ処罰されないことに理由があると思われます。

また、本罪は故意犯であり、過失による信書の開封を処罰していません。そのため、誤配送があったような場合で、それに気づかず開封してしまったような場合は罪になりません。

信書を無断で開封してしまう場合の中には、このように誤って開封してしまったという事例も少なくないであろうことから、具体的な事例の集積が必ずしも十分ではないのだろうと思われます」

信書以外の荷物は?民事ではプライバシー侵害に当たる可能性

菅野先生は、「今回は、主に信書開封罪の観点から解説させていただきましたが、個人に宛てた郵便物や送付物を勝手に開けてしまうことは、本罪に限らず、民事でもプライバシー侵害に当たる可能性を否定できません。

また、法的責任は別としても、自分宛ての荷物を勝手にみられてしまうということに嫌な思いをする人は多いかと思います。こういったトラブルを避けるためには、荷物の開封について、事前にルールなどを決めておくというのが望ましいといえるでしょう」と、アドバイスしています。

「荷物の開封問題」はSNSでたびたび話題となることから、家族など親しい間柄であっても、勝手に届いた荷物を開封されることはネガティブなイメージを持っているユーザーが多いことがわかります。

もし、家族が勝手に荷物を開けることで困っている人は、家族間であっても、プライバシーを守って欲しいと伝えることが大事なのかもしれません。

(LASISA編集部)

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