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「狭い部屋」を、広く見せたい! はがせる壁紙の色・柄選びのコツ【脳科学者が解説】

  • 2024.3.20
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狭い部屋を実際よりも広く見せたいときにも、脳科学的な「錯視」の知識が役立ちます。部屋の印象を大きく変える「壁紙」の色とデザインを工夫して、部屋を広く見せるコツをご紹介します。
狭い部屋を実際よりも広く見せたいときにも、脳科学的な「錯視」の知識が役立ちます。部屋の印象を大きく変える「壁紙」の色とデザインを工夫して、部屋を広く見せるコツをご紹介します。

Q. 脳科学的に「部屋を広く見せる」コツはありますか?

Q. 「一人暮らしの部屋が狭いので、少しでも広く見えるように、家具の置き方などを工夫しています。今度、はがせるタイプの壁紙を使って模様替えをする予定なのですが、部屋が広く見える色や柄があれば、ぜひアドバイスをください」

A. 脳科学的には、明るめの色で横縞模様の壁紙がいいでしょう

日本国内、特に人口の多い都市部で、ゆったりとした住環境を手に入れるのは大変ですね。そのため、実際よりも室内を広く見せる家具の配置やデザインなど、「広々感」を演出するインテリアについて、さまざまな研究がされています。

たとえば、大きな窓が部屋の中央部にあると「開放感」が増して、部屋全体が広々と大きく見えることがわかっています。また、同じ色の系統でも明るさによって見え方は変わります。

一般的には、明るい色の壁紙にした方が部屋が広く感じられるようです。さらには、今回ご質問をいただいたように、壁の模様による広さの感じ方についても研究されています。

壁紙の模様はあまりにたくさんの種類があるので、一概には言いにくいのですが、今回はシンプルなラインが入ったデザインの壁紙のケースをご紹介しましょう。

「縦縞」の壁と「横縞」の壁で、部屋の広さの見え方が変わるかを調べた実験があります。

最初に行われたのは、実験の目的を知らないボランティアの方に、3つの部屋を見比べてもらう実験です。

この実験では実物よりも小さな部屋の模型が作られ、「薄いグレーの無地の壁の部屋」と「同じグレー地に黒の縦縞模様の部屋」「同じグレー地に黒の横縞模様の部屋」を見比べてもらいました。

無地の部屋の横幅と高さを100としたときに、縦縞または横縞模様の壁の部屋の横幅と高さはどれくらいに感じたかを、参加者に数値で申告してもらいました。

結果は、縦縞模様が入った部屋の横幅は平均101、高さは平均113、一方の横縞模様が入った部屋の横幅は平均112、高さは平均100となりました。つまり、縦縞の壁の部屋は実際よりも天井が高く見え、横縞の壁の部屋は実際よりも横幅があるように見えたのです。

一方で、リアルサイズの部屋を使って行われた同様の実験では、少し違う結果が報告されています。

同じように、壁紙が無地の部屋、縦縞の部屋、横縞の部屋の同じ場所に立ってもらい、部屋の横幅と天井高をcm単位で推測してもらったところ、天井高は実際の高さと大差なかったものの、横幅については差があり、縦縞よりも横縞の壁の方が横幅があるように感じるという結果になりました。

小さめの模型とリアルサイズの部屋で一部見え方が異なる理由は明らかになっていませんが、どちらの実験でも、横縞模様の部屋の方が横方向に幅広く感じるという点は同じでした。

したがって、部屋の壁紙を横縞にすれば、視覚的には部屋を少し広く見せることができそうです。

横縞の方が横幅があるように見える(横長に見える)のは、「ヘルムホルツの正方形」という有名な錯視図形で、説明ができます。

「ヘルムホルツの正方形」では一つの正方形の縦横比に着目するため、横縞が入っていると縦長に歪んで見えるのですが、部屋の壁に縞模様が加わった場合は、縞そのものの特徴に注意が向くため、横方向に長い線が入ることで、壁全体が横長に感じられるのではないかと思います。

壁紙の色や模様を工夫することで、実際よりも広く感じられるのは嬉しいことですね。ただインテリアの実例を見ると、部屋の壁紙に縞模様が使われるときには、横縞よりも縦縞の方が多く採用されているようです。

おそらく広さというよりも、家を支える柱のイメージに近い縦のラインがたくさん入っていることで、しっかりしているように見えて、安定感が生まれるからかもしれません。

どんなデザインにも好みに合う・合わないを含めてメリットがありそうですが、部屋をとにかく広く見せたいのなら、思い切って横縞を選んでみてもいいかもしれませんね。

■参考文献
・市原 茂、遠藤 美帆:「壁の縞柄の方位が室内空間の見えの大きさに与える影響について」、日本官能評価学会誌 6(2):121-126 (2002)

阿部 和穂プロフィール

薬学博士・大学薬学部教授。東京大学薬学部卒業後、同大学院薬学系研究科修士課程修了。東京大学薬学部助手、米国ソーク研究所博士研究員等を経て、現在は武蔵野大学薬学部教授として教鞭をとる。専門である脳科学・医薬分野に関し、新聞・雑誌への寄稿、生涯学習講座や市民大学での講演などを通じ、幅広く情報発信を行っている。

文:阿部 和穂(脳科学者・医薬研究者)

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