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大橋トリオ & THE CHARM PARK「音楽を通じて会話する様子を残したかった」/アルバム『Trio & Charm』インタビュー

  • 2024.3.20

アコースティックギターをメインにしたシンプルなサウンドで、温かみのあるサウンドを作りだしている、大橋トリオさんとTHE CHARM PARKさんが初のコラボ・アルバムをリリース。その制作秘話や、最近の暮らしのこだわりなどをおうかがいしました。

ライブで恒例のふたりのセッションを作品に

大橋トリオさん(以下大橋):CHARMくんとは、ライブでセッションをすることが多くて、それをいつか作品にすることができたらという話は以前からしていました。今回、ふたりのタイミングがあって実現したという感じですね。

THE CHARM PARKさん(以下CHARM):大橋さんの音楽はずっと好きで聴いていました。北米で一番耳にしていたといえるくらいに。やがて、日本で活動をするようになり、幸いにも大橋さんのサポートで一緒にツアーを廻らせていただくようになりました。そこで、ふたりでセッションするのが、恒例になっていったのです。それが積み重なっていくうちに、音楽を通じて会話をしている様子を作品として残しておきたいという思いが強くなり、今回のアルバムが完成しました。

━━アルバムを作るにあたり、テーマやルールを設けたりしましたか?

CHARM:このふたりでしか作れないような音楽を作らなきゃいけないなという気持ちはありましたね。

大橋:ライブでちゃんと演奏できるように、無茶なことはしないようにも心がけましたね。

━━確かに。おふたりの息のあった雰囲気が伝わってくるものでありながらも、丁寧に音楽を奏でている姿も感じるサウンドになっていますよね。

大橋:そうですね。一緒に演奏する機会が多いので、馴れ合いにならないように、ひとつひとつの音を吟味しながら制作していきましたね。

━━結果、陽だまりのような温かみのある楽曲ばかりが収録されていますね。書き下ろし曲はもちろん、お互いの楽曲のセルフカバー、さらにカバー曲などで構成されています。

大橋:まず、カバー曲を収録したいという話になり、そこからオリジナルも制作しましょうという流れになったという感じですね。CHARMくんが、2曲目に収録されている「The Yonder」を制作して、じゃあ自分はこういうものを作ったらいいのかなとか考えながら、自然とバランスをとりながら、アルバム全体が完成していったという感じですね。

━━「The Yonder」は、どういうきっかけで生まれたものなのでしょう?

CHARM:ふたりのアコースティック・ギターと声しか入っていない楽曲ですね。Yonderという言葉は、アメリカ南部でビヨンド(その先)という意味で使われている方言みたいなものです。いろんなとらえ方をしていただきたいのですが、新しい世界を感じていただけるような楽曲にしようと心がけて、制作しました。

大橋:アコースティック・ギターでセッションするにあたって、絶対に入れたいと思う要素を表現できた楽曲になったと思います。

━━おふたりの息のあった雰囲気が伝わってきますね。冒頭のインスト曲「16mm」も、セッションしている風景が見えてくるような仕上がりです。

大橋:あれは最後の最後に何か入れた方がいいと思って、無理やり作ったという感じでして(苦笑)。締め切りまで、1日か2日くらいしかないなかで楽曲を制作するのは、意外とアイデアの火がつくところがありまして。時間をかけてじっくり作るよさもあるのですが、締め切りが迫っていると、自分のインスピレーションを、一番反映できるところがあるのかもしれませんね。

オリジナルとは異なる雰囲気のカバー曲も収録

━━また本作では、大橋さんの「タイムマシーン」、CHARMさんの「Dear Sunshine,」をセルフカバー。これら曲のセレクトは、どのように決められたのですか?

大橋:「タイムマシーン」に関しては、CHARMくんからの提案で。

CHARM:そうそう。1曲はピアノが入ったものを収録しないともったいないなと思っていて、いろんな楽曲を考えていくなかで、これがふたりで歌うのにぴったりだなと思ったので。お互いの着地点がそこでしたね。

━━なるほど。

CHARM:「Dear Sunshine,」は、おそらく自分の楽曲のなかで、最初に大橋さんとセッションしたものだと思うんです。そこから生まれる空気が心地よくて、ツアーでもよく披露させていただきました。また、ライブやオリジナル音源とは、異なる雰囲気が作れるのではないかと思って。

━━確かに、オリジナルとは異なる温かさや物語が伝わってきます。ちなみに歌うパートって、どのように決められたのですか?

大橋:基本的にメインの旋律を歌う人が低いギターを演奏しているというか。簡単なリズムをとるギターにして、歌うことに力を注ぐみたいな。

CHARM:暗黙の了解みたいな感じで。自然とそういうバランスになっている気がしました。

━━やりとりのなかで、急にいいアイデアが浮かんだら、それを突然入れたりする、ジャム・セッションみたいなことも、レコーディングでは起こっていたのですか?

大橋:基本、それぞれ別にブースに入って一度、最初から最後までツルッとレコーディングします。だから、どちらか先に録音したものをベースに、次の人が別の音色を加えるということはありましたが、その場で即興で入れ込むみたいなことはなかったですね。割と、お互いちゃんと作り込んだものを持ち込んで完成させるということが多かったのかもしれません。

━━そのプロセスにおいて、高揚するような場面も多かったのではないですか?

CHARM:そうですね。9曲も一緒に制作できる機会が、これまでなかったですから。今回は、ソングライティング、もしくはカバー曲を決めた方が、楽曲制作の主導権を多めに持つような流れになっていたのですが、お互いこういうふうにしてほしいという要望を出したり、応じたりする作業は楽しかったですね。

大橋:僕は大変でしたけど(笑)。

CHARM:ああ、そうでしたか(笑)。確かに、同じギターを弾いていても、慣れている・好きなフレーズは、お互い違うので。
大橋:理解できないものは、どうやったって理解できないこともあるのです。

━━確かに、そうですよね。それぞれが、ギターにおけるこだわりやくせというものがありますから、それをどうすり寄せていくか?という作業って大変な気がします。でも、その違いをおふたりはすんなりと受け入れているというか。逆に、違いを楽しんでいるような雰囲気がしました。

CHARM:ライブで演奏する際にはどうなるか、楽しみですね。

大橋:ライブのときは我流でいいかなって(笑)。アルバムで楽曲を耳にしている人は、ライブでまた違う音色を楽しみたいと思うかもしれないので。

━━確かに、ライブならではの変化も楽しみたいですね。また、変化といえば、本作では松任谷由実(ユーミン)さん、サイモン&ガーファンクルの楽曲のカバーも収録。オリジナルとは異なる楽曲の魅力を引き出しています。

大橋:ユーミンは、TV番組の企画で彼女の楽曲をカバーするというお話をいただき、「青春のリグレット」をセレクトしたのですが、せっかくなので、ここにも収録させていただきました。 カバーをするにあたり、僕は原曲とはガラッと異なる雰囲気にしたいと思うタイプで。なぜなら、オリジナルを忠実に自分の声で再現しても、何も変化は起こらないので原曲に負けてしまいます。だから、思いっきり雰囲気を変えたものにしたかったんです。

━━確かに。おふたりの声やギターによって、オリジナルとは異なる物語が紡ぎ出されていますね。もう1曲のサイモン&ガーファンクルの「Bridge over Troubled Water(明日に架ける橋)」のカバーも、味わい深いセッションを披露されています。

CHARM:この楽曲を試しに演奏してみたところ、このふたりだからこそ心に響くカバーが生まれるのではいうイメージが膨らみ、カバーしました。いろんなことが起こっている世界で、それらを優しく包み込んでくれるようなハーモニーだなって。

暮らしのいろんなシーンで楽しんでほしい

━━また、今回のアルバム・ジャケットも印象的ですね。おふたりが背を向けているのは、何か思いがあるのですか?

大橋:これは金沢で撮影したものなんですけど。ツアーの途中で、そろそろジャケットを作っておかないと間に合わないという話になって、地元の老舗の写真館(初回生産限定盤)と、ライブでもよく使用させていただいているカフェ(CDのみ盤)の2か所で撮影させていただきました。背中を向けているのは、以前に僕がリリースしたアルバム『NEW WORLD』(2021年発表)を再現させたようなものなんですけど。写真館で撮影ができたことが楽しかったですね。写真館の方しか、そこで撮影できないルールがあるので、前日にライブを観ていただき、その後に撮影していただきました。

CHARM:当日の撮影では、大橋さんには<さん>付けするのに、僕は呼び捨てだったのが、ちょっと気になりました(笑)。

大橋:海外からのお客さんも多いようで、呼び捨てにしたほうがフレンドリーな雰囲気になると、察してだと思うのですが(笑)。

━━でも、おふたりの和やかな雰囲気が伝わるビジュアルですね。また、今回のアルバム制作を通じて、次のプロジェクトへのアイデアも膨らんだのではないでしょうか?

大橋:今回は、ギター2本という制限を設けて制作したものがほどんどだったので、そこから解放されてやりたいことがいっぱい浮かんできました。また、このふたりでやりきれなかったこともたくさんあるので、第2弾も実現させたいですね。とりあえずは、この作品がいろんな人に喜んでもらえたら。 きっと、こういう音楽を待っている人がいると思うので、そこにちゃんと届けば。

CHARM:これまでアコースティックの楽曲を耳にしていない人にも、その魅力が伝わるものになったら。個人的には、今回のプロジェクトはとても勉強になりましたし、何よりも楽しかった。ただ、今回でアコースティックギターを使用し過ぎたので、しばらくは弾かなくてもいいかなって(笑)。

━━いやいや、ライブで素敵なセッションを響かせてくれるのを待っている人がたくさんいます。

大橋:そうですね。ご要望をいただけたら、実現させたいですね。

━━また、このアルバムが、暮らしのどんなシーンに流れていてほしいと思いますか?

CHARM:アコースティック・ギターって、時代に色あせないイメージがあります。また、どんなシチュエーションにもぴったりあう。だから、暮らしのいろんなシーンで楽しんでいただきたいですね。

大橋:シンプルにギターを演奏して、完成したアルバムだとは思っていなくて。だから、これらのフレーズを聴いて、ぜひカバーしてほしいですね。これをきっかけにギターの魅力を知っていただけたら、僕たち的にはうれしいです。

━━おふたりの最近の暮らしのこだわりはいかがですか? 生活のクオリティを高めるために大切にしていることとか。

CHARM:僕は、コールドブリューのコーヒーが好きで、以前だとコンビニへ買いに行けたのですが、今はコンビニが遠い地域に暮らしているので、なかなかそうもいかず、自宅でいろんなブランドを試しながら、お気に入りの一杯を探すことが、何よりの息抜きになっています。

大橋:僕も以前は、いろんなコーヒーを試していたのですが、結局大型チェーン店のものが、一番バランスがいいということに気づきました。特に、ブレンドはとてもよく味を考えているって。僕の場合は、最初の10ccぐらいがちょっと刺激が強いのでそこを取り除き、30秒くらい経過したものに再びお湯を注ぐと、最高の味のバランスになる気がします。

NEW ALBUM『Trio & Charm』

大橋トリオ & THE CHARM PARK
¥3,300(CDのみ)/A.S.A.B
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書き下ろしの楽曲はもちろん、お互いの楽曲のセルフカバー、松任谷由実さん、サイモン&ガーファンクルのカバーも収録された全9曲。一枚を通して旅をした気分を味わえると同時に、時間の流れに思いをめぐらせる楽曲の数々。おふたりだからこそ表現できる甘美なアコースティック・サウンドは、暮らしに春のような光をもたらすはずです。

Profile

おおはし・とりお/2007年デビュー、昨年リリースしたEP『カラタチの夢』が好評。3月29日〜ファンクラブ限定ライブツアーがスタート。 https://ohashi-trio.com/   ざ・ちゃーむ・ぱーく/2015年に日本デビュー。2月11日に最新EP『Dreamers』を発表。3月17日には京都でワンマン公演を開催。 https://thecharmpark.bitfan.id/

photograph:LisA=kozai text:Takahisa Matsunaga Location:shirasagi
リンネル2024年5月号より
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