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【会食恐怖症】とは?なぜ他人と食事ができなくなるの?「嘔吐への恐怖多い」医師の見解

  • 2024.3.19
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「会食恐怖症」は甘えじゃない…当事者の声

「会食恐怖症」は甘えじゃない…当事者の声
「会食恐怖症」は甘えじゃない…当事者の声

2024年3月6日放送のフジテレビの情報番組「めざまし8」内で取り上げられた「会食恐怖症」。X(旧ツイッター)で「会食恐怖症」というワードがトレンド入りするなど、SNSでも注目を集めています。番組内では、「会食恐怖症」の当事者が出演し、給食の「完食指導」で無理やりに食べさせられたトラウマがきっかけになり発症したという当事者。外からは見えづらいその苦しみを番組で語っていました。

「会食恐怖症」とは、人との食事やその場面を想像すると不安や恐怖などを感じ、吐き気、食べ物が飲み込めない、動悸(どうき)やふるえなど、心身に不調を起こす症状が起こるものです。

放送後、X(旧ツイッター)では、「甘えているだけ」、「コミュ障(コミュニティ障害)だ」、「飲み会を避けたい若者の逃げ道では?」、「なんでも病気にするな、気にし過ぎだ」、「努力で治るだろう」など、辛辣(しんらつ)なコメントが相次ぎました。

これらのコメントを見た「会食恐怖症」の当事者たちは、Xに悲痛な胸の内を明かします。

「会食恐怖症って『飲み会行きたくないな』じゃなくて、人と食事をしてる姿を見られてると思うと不安と緊張で震えたりするしご飯が喉を通らないし精神的にキツいって事なんだけどな」「『飲み会イヤ』という最近の若者の傾向と同列に捉えている人が多いことに驚いた」「甘えとかコミュ障っていわれるけど違う。会食の場面を想像しただけでも恐怖を感じる」「『努力でどうにかなる』とか『乗り越えるべき』とか思う人がいるんやなぁ…」

さらに、当事者は胸のうちを明かします。

「会食を避けてるとどんどん孤独になるばかり。でも本人は本気で辛い」「イヤなら回避すればいいという人がいるけど、根本的な解決にはならない」

このように、当事者の多くが自身の力ではどうしようもない状況に陥っており、「克服したい」と感じているようです。実際に「会食恐怖症」の患者さんを診察している「出雲いいじまクリニック」(島根県出雲市)院長・飯島慶郎先生にお話をうかがいました。

「会食恐怖症」Q&A

「会食恐怖症」Q&A
「会食恐怖症」Q&A

Q.「会食恐怖症」には正式名称はありますか?

飯島先生「残念ながら、『会食恐怖症』そのものを指す正式な医学用語は有りません。しかしながら、臨床上はこうしたいわゆる『会食恐怖症』の人が確実に存在するのも事実です。DSM-5という診断基準上は、『社交不安症』もしくは『限局性恐怖症』のひとつとして診断することになります」

Q.原因は子どもの時の「完食指導」や「残さず食べなさい」という親のしつけが原因であることが多いようですが、他の原因はありますか?また、大人になってから発症するケースはあるのでしょうか

飯島先生「はい。確かに完食指導を受けてトラウマ化しているケースもあります。また、よくあるのが食事中に嘔吐してしまい、それ以降食事そのものや会食に怯えるようになるケースもよく経験します。また、その時食べていたメニューを極端に嫌うようになることもあります」

Q.先生は子どもの不登校も専門にされているということで、不登校児と「会食恐怖症」の関連があれば教えてください

飯島先生「さきほど述べましたように、食事中の嘔吐や完食指導により給食そのものを避けるようになるケースは存在します。その場合給食が怖くて登校そのものを渋るケースは存在すると思います。給食の時間だけ別室を利用したり、家で昼食をとれるように配慮をしたりすると安心して登校できるようになる場合もあります」

Q.「会食恐怖症」が疑われる場合、どこを受診したらいいのでしょうか。

飯島先生「精神科、心療内科の範ちゅうになります。またお子さんの場合は児童精神科(精神科系)や小児神経科(小児科系)が良いでしょう」

Q.「会食恐怖症」の治療について教えてください

飯島先生「行動療法という手段を使う場合が多いでしょう。最終的なゴール(多人数で会食ができる)に向かって小さな段階に区切って一つずつクリアして自信をつけてもらう手法です。

例:家で家族と食事をする→外出先で家族とお弁当を食べる→家で仲の良い友達とおやつを一口食べる→外出先で仲の良い友達とおやつを一口食べる→…

といった軽い負荷からすこしずつ少しずつ段階を踏んでいく手法です。個別の行動療法メニューを立て、場合により修正しながら少しずつ恐怖を克服していきます。

そうしたゆっくりとした段階を踏んだとしても本人は病的な強い恐怖を感じることになりますので、「SSRI」といった「抗うつ抗不安薬」を併用するケースが多いです」

Q.「会食恐怖症」になりやすいタイプはありますか?

飯島先生「会食恐怖症が正式名称では無いこともあり、学術的にはほとんど研究されていないようです(論文検索をしてもヒットしません)。ですからあくまで個人的な印象からの話になりますが、一言で言えば『怖がり』のひとが多いと思います。

もともとの性格が怖がりであるため、普通の人には『ちょっとした不快で恥ずかしい体験』で済んでしまうことに対しても、強く反応してしまうようです。例えば、人前で嘔吐するのではないかと想像することや、嘔吐時の身体的体験自体が強烈な恐怖として感じられてしまい、PTSD(心的外傷後ストレス障害)様の反応に発展してしまうケースが多いと感じています」

「会食恐怖症」を克服したケースも

「会食恐怖症」を克服したケースも
「会食恐怖症」を克服したケースも

実際に「会食恐怖症」の患者さんを診察している飯島先生に、症例や治療にかかった期間などをお伺いしてみました。

【ケース1】30代女性。友人と外食中に片頭痛により「公衆の前で嘔吐してしまう」と強く恐怖を感じてから外食ができず、自宅で食事をするときにもすぐに気分が悪くなり、数年間苦しんでいる、として来院。約3ヶ月かけてSSRIを導入し、心理療法を軽く行う程度で寛解した。

【ケース2】高校3年生の男性。小学生のとき、胃腸炎にかかりしばらく嘔吐に苦しみ食事ができない事があった。胃腸炎が治ってからも嘔吐に関する恐怖感が頭を離れず、食事するところを人に見られるのを極端に嫌がり、不登校傾向に。家でも一人で食事を取り、学校に行ったとしても給食・弁当は食べない生活を送っていた。大学進学にむけて会食恐怖を治したいと来院。SSRIの導入と約1年間の行動療法により、自由に友人と外食できるようになった。

「会食恐怖症」の症状は人それぞれ違い、症状の程度や治療期間も異なるそうです。「会食恐怖の病態の根底に『嘔吐恐怖』があるケースを当院では多く経験しています」と飯島先生は言います。

「会食恐怖症」は、単に「一人の食事が好き」「他人と食事をとるのが苦手」なのではありません。不安・恐怖などのストレス、引きこもりや不登校、孤独感、などに悩み、苦しんでいる状況があるのです。もし、自分自身や周囲に似たような症状で苦しんでいる人がいれば、専門家に相談してみることをおすすめします。

(LASISA編集部)

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